元町から時任町に移転新築の高橋病院開院

高橋病院の将来像

  日本全体にいえるのは歯止めのかからない高齢化と人手不足です。これが顕著となった今、どうしたらいいのか、政府としてもその対策が見当たらないため、結局は業務の効率化を進める。あるいは一人当たりの生産性の向上を達成する。特に後者はなかなか難しい話なので、ICT化に頼らざるを得なくなっています。

 昔はICT化の中でも電子カルテ導入というとやれセキュリティだ、個人情報が課題だと経営者や管理者は理屈をつけて反対しましたが、今導入に反対する人は誰もいない。これは医療系だけではなく介護系もそうです。特に介護員が不足していますから、ICT化によって解消する。むしろDXを進める大きなチャンスなのかなと思っています。

 本来は2025年までに達成する地包括ケアシステムですが、その人にとって適切な医療と介護、生活支援サービスが地域の中学校区範囲で受けられる筈でした。しかし、中学校の統廃合が進んで、歩いて30分圏域という枠組みが崩れてしまい、今後は交通機関も含め、モバイルサービスをどうするか、地域全体の問題となっていると思います。

 翻って、入院患者さん、通院患者さんのWell-being(ウェルビーイング)、生きがい、ACPなど、ご本人の思いを地域でどうやって共有していくのかが私たちに求められているのだと思います。

 これは一法人だけで達成できることではありませんから、自治体にもご理解、ご協力を頂いて、大学などアカデミーな組織や、在宅について理解が深い介護事業所などの連携を仰ぎながら、地方包括ケアシステムが達成できるようにすればいいと思っています。

 私の基本的な考えは以前から変わっていないのですが、人間の幸せは、身体の健康がすべてではないと思っています。病気や障害を抱えていても幸せな人はたくさんいます。逆に健康でも社会から孤立している人は大勢いる。

 もちろん健康であることに越したことはありませんが、健康だけを追求して幸せに生きることが後回しになってはいけないと考えています。医療者というのはどうしても患者さんの身体を良くする、治療によって改善することが患者さんにとっての幸せと考えてきました。治らない病気を抱えた人、障害を抱えた人が幸せになるには、どうすべきかというテーマについては、あまり顧みられてこなかったと思うのです。

 身体の治療が完結すれば幸せになるとは限らない。むしろ、何らかの希望をもって生活できる、今までの人生で培ったことを生かして人のために役割を担えることが生きがいにつながる、そうなるように私たちがきちんと目を向けて、支えになることがこれからは求められていると思っています。

 生きがいは千差万別ですから、その人の生活をよく知って、満足感や幸福感の源をしっかりヒヤリングするセンスや能力が必要だと思っています。

 そうした考えに共鳴する職員が増えてくれれば嬉しいし、そうなることで高橋病院の健全で明るい未来が見えてくるのではないかと思っています。

(取材日:2024年10月3日)

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