元町から時任町に移転新築の高橋病院開院
患者さんに快適な入院生活を提供するための新病院での取り組み
当院の強みのひとつはICT化です。今では当たり前になっている電子カルテですが、当院は20年前に道南地区で初めて導入しました。これは院内の職員間の情報共有です。超高齢化社会になって、患者さんも急性期から回復期を経て、慢性期、在宅、施設といろいろ移動される中では、その患者さんを追っていくシステムが必要なため、地域で情報を共有するシステムとしてのID-Linkを市立函館病院と私どもで2007年から稼働して現在全国一の連携ネットワークシステムになっています。
加えて今流行のDX、デジタルトランスフォーメーションですが、この代表的なものが全国医療情報プラットフォームとなります。この中には、オンライン資格確認ネットワークシステム、いわゆるマイナンバーカードによる情報共有と、電子処方箋や標準型電子カルテの構築が入りますが、担当部署である厚労省の医政局、保険局、老健局ならびにデジタル庁と綿密に連絡を取り合い相談しながら動いているところです。
当院がモデルケースとなって動いているものは結構あると思います。手前味噌ですが先頭に立っているものの一つだと思っています。
超高齢社会で今後問題になるのは患者さんの情報が正しく医療側・介護側に伝わっているかどうか。たとえば難聴の方とか認知症の方が増えて、アウェイの場所で質問を投げかけられると、ついイエスと首を縦に振らざるを得なくなってしまう。場所を替えて落ち着いて聞くと、急性期で取った情報とは、どうも違う。そこをどうやって検証するのか。ダブルチェック、トリプルチェックですが、職員側は楽なので急性期の情報をついついコピー&ペーストします。最初に聞き取り間違いをするとそれがどんどん連携側に流れていく。情報を間違いなく正確に追えるようなシステム、時系列で経時的な変化を追っていけるような仕組みが必要です。
ACPは人生会議とも称されますが、今後、何かあった時にどうされたいのか、今まではACPを聞き取った医療機関がその内容をUSBで渡したり、FAXで次につなげることが多いと思います。同じ患者さんに対し、いろいろな施設でACPを取った場合、どれが一番新しい情報なのか分からなくなる。新しい情報を見られればいいのですが、古い情報が回るとACPとして非常にまずいと思います。リアルタイムに時系列で見られるようなシステムがぜひ必要で、これはID-Linkで可能となっています。そういう仕組みはICTの得意とするところです。
病棟では、電子カルテをカートに乗せて動きながらということに加えて、バイタルモニターのデータをバーコードに紐づけして、データが自動的に電子カルテの温度板に送るスポットチェックモニターを導入しました。通常は紙に書いたバイタルデータをスタッフステーションに持ってきて打ち込む。そうすると転記ミスが起きる危険性があるし、あとでまとめて看護記録に入力すると正確な時系列とならない状況も生まれます。スポットチェック導入により、計測時のバイタル情報が正確にリアルタイムに記録されるようになりました。
職員間の業務改善としては、ホテルやレストランで使われているインカムを試験的に病棟の看護師同士で使わせていますが、メリットが大きいということであれば業務改善として取り入れていこうと考えています。コロナのような感染症の場合の病室移動の連絡に、また喫緊では新病院への患者移動の際も使いました。
よくICTが好きなんじゃないかといわれますが、そんなことはなくて、確かにICTは職員の働き方改革にはプラスになると思いますが、私たちの本当の強みは機器類などのハードではなく、患者さんの心を癒して、満足感と幸福感、生きがいを持っていただけるようなソフトづくりに力をいれていることです。そのためのプログラム開発、これは私たちの中で開発できるものなので今後も取り組みたいと思っています。主観的である満足感等を全国標準のスケールで数値化し、データサイエンティストと言われる方たちと一緒にデータ解析をして地域全体に役立てていければと思っています。
患者さんの満足度、幸福度向上だけではなくて、働く職員の生きがい、達成感を意識した高橋病院にしたい。高橋病院で働いてよかったと思える病院をつくることが自分の使命で、これはずっとそういう気持ちでやってきましたし、これからも続けていきたいと思っています。
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