「治療用食品・介護用食品」─取材レポート/その2 新しい食文化を提案する食品総合商社(株)アキヤマ
治療用・介護用食品 利用者インタビュー(1)
株式会社アキヤマ 業務用食材・資材・機器専門商社
北斗市東前3-41 TEL 0138-77-7491
前号では、業務用食材の卸問屋として知られる(株)アキヤマが治療用食品・介護用食品の小売を行っていることについて社長や担当者から説明を聞いた。そこで今回は実際にアキヤマ営業本部の小売店舗から治療用食品・介護用食品を定期的に購入しているというふたりの方に、使ってみての感想などをお聞きした。 |
利用者インタビュー1 |
Kさんは函館生まれ函館育ち。現在は1ヶ月に3~5回程度、路線バスに乗って市立函館病院に通院している。アキヤマには1ヶ月に1,2回来店して腎臓病患者のための低タンパクレトルト食品と低タンパク米をまとめ買いしているという。
K.N.さん(61歳男性) 函館市末広町在住 (ご本人の希望により匿名にしております。) |
こういう食品があるということをお知りになったきっかけはなんですか?
私、市立函館病院の泌尿器科に入院していたんですよね。入院しているときは栄養士さんが作った腎臓病専用の低タンパクな献立が出てきますが、いざ退院してみると食事に困ってしまいました。一人暮らしなのでいろいろがんばってやってはみるんですが、検査するたびに数値が上がっているという状態。そこで、給食を担当している栄養士さんに相談したところ、腎臓病用の食品が市販されていることを教えてもらいました。
それまではご自分で食事を作られていたんですよね。
自分でも作りましたが、腎臓病患者用の1食ずつ宅配されるおかずというのも頼んでみたことがあります。ところがこれが高くて、ひと月で7~8万円くらいになってしまうんですね。これはさすがにとても続かなかったですね。今はアキヤマで大体1ヶ月で3万円くらい。お米を入れても4万円くらいしかかかっていません。
商品を実際に使ってみての感想はいかがですか?
レトルト食品の種類はたくさんあるし、お湯で温めるだけだからいいですよね。後はご飯を炊くだけで済むから。野菜のゴミなども出ないし、楽だね。今は自分でご飯を作ることはまったくなくなって、ご飯を炊くだけですね。
低タンパク食品を利用されて、体調に関してはいかがですか?
一ヶ月に一度病院で検査を受けますが、標準か普通の人より数値が良いかという数値が出ているので、いいのかなと思っています。自覚としても体調がいいような感じはしますよ。まんべんなく食べないとバランスが取れないからいろいろ食べているけど、レトルト食品はカロリー計算も楽だからいいですね。
定期的に購入されている中で、こうだったらいいのになという要望は何かありますか?
今でもたくさんの種類がありますけど、種類は多ければ多いに越したことはないかなとは思いますね。あとは、もう少し安ければというのは望んでいるんですけどね(笑)。
利用者インタビュー2 |
鋪 三枝子さんは腎臓疾患を抱えながら小学校の教員として勤務するご主人のために低タンパク米を食事に取り入れているという。
鋪(しき) 三枝子さん(58歳) 函館市北美原在住 |
低タンパク米を使用する以前には 食事づくりでご苦労されたそうですね。
夫は昨年ある病気にかかりまして中央病院で検査を受けたのですが、その時に直接病気と関係のない腎臓でも良くない数値が出たんですね。ただ、薬を使うような段階ではないとのことで、食事療法を行ってくださいということになりました。
中央病院の先生からの指示は、1日のカロリー1800kcal、タンパク質60g、塩分5gというものでした。この数値を何とか達成しようと病院のメニューをいただいたり市販の本を参考にしたりしつつ3食に分けて献立を立て、栄養士さんに見せてアドバイスを求めたりもしました。
ですが、夫は小学校の教員という仕事上、お昼には給食を食べなければならないんですね。給食は育ち盛りの子どものための食事なので、カロリーも塩分もやや高めです。弁当を持たせることも考えたのですが、給食も指導の一環なので先生が一番前で給食を食べないでお弁当を食べるというのも難しく・・・。そんな時に、栄養士さんから低タンパク米について教えてもらいました。
低タンパク米を使用することで献立を考えるのは楽になりましたか?
そうですね。最初は1日のタンパク60gと言われても何から手を付けて良いかわからず、朝食10g、昼食の給食で25g、そして夕食で20gと振り分けていましたが、普通のご飯は200gで5.2gもタンパクがあるんですね。ですが低タンパク米では同じ量でタンパクは0.5gしかないので、その分余裕がありますよね。
献立を作るときの工夫は何かありますか?
低塩のつゆはよく使いますね。それから、こしょうや唐辛子など塩分に関係ない調味料を使用したりという工夫もしています。
アキヤマで治療用食品を購入して助かっていることはありますか?
まとめて商品が欲しい時にあらかじめ注文しておくと取っておいてくれるので助かっています。インターネットでもこうした食品は販売されていますが、どうしても箱ごとになってしまうので、陳列しているものを直接見てバラで買えるのはありがたいですね。大体1ヶ月に1回は買いに来ています。
では、さらに望むことは何かありますか?
献立を考えるに当たって私もいろいろと調べて、インターネットの腎臓病のサイトで料理のレシピを見たり、同じ病気の方が書いている情報を集めたりしました。でもやはり不安が大きいので一番頼りにしたのは病院の栄養士さんなのですが、お忙しそうでなかなかお聞きするのが難しかったりします。
治療用食品は補助的に使用していくのがいいかなと思っているので、指導してくれる人がいるとうれしいですね。どうしても献立がワンパターンになっていくので、いろいろなものを作ってみたいです。たとえばキャベツと肉を使っても、いろいろな味付けを試してみたいと思っています。限られた塩分とタンパク質の中でいろいろなパターンのものを作っていくのはとても難しいので、そこを料理教室などで教えていただけたらなあと思います。
最後に、奥様が知恵と工夫を凝らして作った腎臓疾患用の献立を毎日食べておられるご主人さまの反応はいかがですか?
夫はお酒を飲まず、食べることが楽しみの人だったので、初めは制限されることが大変だったようですが、今は考え方を変えたようで「食べること以外に趣味を向けて長生きしないと」と言っています。
■(株)アキヤマ 根本課長~担当者より一言 当社で治療食を扱い始めて4年になりますが、最近感じるのは、病院、施設様の栄養士さんの指導を受けて当社に来店されるお客様が増えていることです。栄養士さんが、当社での治療食の扱いを案内していただいていることに大変感謝申し上げます。現在当社では、介護食・たんぱく調整食品・ミネラル補給食品などございますが、たんぱく調整食品は、主食・調味料・惣菜・デザートなど常時100種類は在庫を取り揃えておりますが、今後はお客様のご意見、ご要望にお答えしながら、さらに商品群を充実させていきたいと考えております。これから食事療法を始められる方でも当社では1品から販売しておりますので、ぜひご来店下さい。 |
取材中に同席して利用客の声を聞いていた小林久周社長は「まだまだ取り扱い品目を増やしていきたい」「お客さま本位で買いたいものを欲しいだけお届けするという宅配もやっていきます」と要望に回答していた。また、料理教室の開催についても今後検討するとのことだ。今回、ひとりは完全に治療用食品しか摂っていないという方、そしてもうひとりは低タンパク米を使用してなるべくおかず類は手づくりしようと努めている方と、対照的なおふたりにお話を聞くことができた。ここからわかるのは、その人のライフスタイルや状況によって必要な治療用食品・介護用食品を取捨選択することで様々な人に対応が可能であるということだ。退院後の食事に悩んでいる人などがおられたら、ぜひ一度アキヤマ営業本部の小売店舗で実際の商品を手にとって確かめていただきたい。 |