古くて新しい“きびだんご” その魅力と将来展望
餅菓子として切り口を変えてバリエーションを増やす
きびだんごであれば、昔は國産製菓さん、谷田製菓さんもあり、それに古谷製菓さんもつくっていた時もあって、うちは一番後発でした。きびだんごなら谷田さんのもの、もしくは國産製菓さんのものがあればいいという時代がずっと続いて、うちは何か新しいものをつくっていかなければならなくて、ベースはきびだんごですが、餅菓子として切り口を変えて提案することで種類が増えました。
餅菓子は日本全国にいろいろなものがあります。うちにもくるみ餅がありますが、きびだんごに次ぐ売れ筋商品です。きびだんごなら一品でも、もち菓子としてバリエーションを増やして50種類以上になりました。結局、きびだんごも最初につくり始めた谷田製菓さん、最後に参入した天狗堂の2社だけが残りました。
七飯町の旧北海道昆布館を直営店「109“Ziel」をオープン
今まではBtoB (メーカーが卸業者に商品を卸すなど企業対企業の取引形態)で、末端のお客さまに接する機会もあまりなく、声が届きにくかった。商品を作り、問屋卸の段階でOKが出て末端のお店に配達される事になるがそのお店にも店頭に置くかどうかの選択権がある。売られている場所でうちの商品がお客さんにどう受け入れられているかという生の声が届くのは皆無に等しい状況でした。

バリエーション豊富な天狗堂宝船の商品
今度の直営店では、お客さまが実際にうちの商品をワシ掴みに買っていってくれる光景をみることができる。喜びを通り越して、びっくりするくらいのインパクトがあります。
きびだんごが売り切れていると、すいませんと平謝りです。でも工場から出来立てのものを持ってきましたと提供もできるわけです。お客様とキャッチボールができるというのは、自社売店ならではのだいご味だと思います。
直営店で1日や1週間で捌ける量だったら、賞味期限の短いものでテスト販売的にやってみることもできるかなと思っています。直営店で収集した情報を工場にフィードバックするようになると実感しました。
お客さまが誰かに教えるように“きびだんご屋さんがやっているお店”といらっしゃるのを耳にしました。“これこれ”と選ばれるのが昔からの5本入りのきびだんご。普通にスーパーさんでも売られている商品です。直営店だけのオリジナルのものを数品用意して、一番いい場所において販売しているんですが、それよりも断然昔ながらのきびだんごの方に皆さんいらっしゃる。
きびだんごにもオリジナルで、こういう新しいものがあるんですと知っていただきたい商品よりも、まずは昔からのきびだんごを選ばれる。きびだんごというずっと前からある商品を老若男女がまだ買ってくださる驚きが私の中にありました。
今、移動中の電車やオフィスの中でも食べられるというところが女性にものすごく人気なんです。またワンハンドで食べられるので、コンビニなどではトラックの運転手さんにも好まれて、重宝されているようです。きびだんごのヘビーユーザーの方はそれぞれのシーンでの食べ方を考えていらっしゃるようです。
直営店の向かいには道の駅、男爵ラウンジさんもあります。あのエリアで相乗効果を生んでくれればと思っています。そして、あの大きな建物を工場として使いたいというのが主目的です。以前の昆布館さんのように工場併設の売店という形をとれたら一石二鳥。まずは売店部分を先行して4月12日にオープンしました。売店が順調に軌道にのってきたら、無理のないところで工場、本社機能をすべて向こうに集約する計画です。
(取材日:2025年5月7日)
【天狗堂宝船 沿 革】 | |
昭和28年8月 |
函館市新川町にカネショウ千葉製菓創業 |
昭和30年8月 | 天狗堂製菓に社名変更 |
昭和35年8月 | 有限会社 天狗堂製菓設立 |
昭和43年1月 | きびだんご製造開始 |
昭和59年8月 | 函館市西桔梗町に有限会社 天狗堂宝船設立 |
平成18年9月 | 有限会社から株式会社に改組 |
平成19年8月 | 本社工場を七飯町中島に移転 |
令和7年4月 | 七飯町峠下に直営店「109“Ziel」オープン |