介護事業にデジタルDXを進める白ゆりグループ・メディカルシャトー

zoom社内研修にChatGPT活用。講師の負担軽減と共通理解を深める

㈱メディカルシャトー函館:函館市美原2丁目50-2 TEL.0138-34-3231 https://www.shirayuri.gr.jp/

介護事業にDX (デジタルトランスフォーメーション)の活用を進める白ゆりグループ(㈱メディカルシャトー・代表取締役佐藤文彦氏)。本来のサービス以外の業務を簡略化し、職員のワーク・ライフ・バランスの調和にDXを活用する。『ライフプレステージ白ゆり』ブランドの高齢者介護複合施設を展開する4施設では今春から生成AIサービスChatGPTを活用したzoomによる社内研修行っている。函館地域スタッフ約250名が在職する社内研修はどんな変化をみせたのか、担当する介護本部佐藤邦広部長に聞いた。


「メディカルページ函館・道南版 2025年冬号」(令和7年11月20日発行)の冊子に掲載された記事です。

■佐藤文彦 社長

 「コロナ禍以降、様々な業態で会議や研修をwebやオンラインで実施しているところは多々あるかと思います。弊社でも会議にオンラインを活用して進めるケースが増えてきました。現在、14事業所を運営しておりますが、昨年より全事業所の委員会活動を刷新し、zoomで行っていました。今年4月からは同じように社内研修をオンライン化しました」

 さらにそれまでの社内研修にあった課題について続ける――

 「今まで日々の業務の中、研修テーマを決め、参加者のシフト調整、そして資料作成まで非常に時間を要していました。せっかくの学ぶ機会が、「社内研修=大変」といったネガティブな印象であったと思います。こうした課題を解決するために年間スケジュールを精査し、全事業所合同で毎月決まった日時での開催としました。そのためにもオンライン化は必要不可欠となったわけです」

 集合研修とは違い、オンライン化は移動時間を短縮でき、今まで参加できなかったメンバーも参加できるようになったという。内容も事業所基準内のものだけではなく、白ゆり独自の研修も含めて毎月テーマごとに講師を決め、発表時間を30分と決定した。

 「30分と聞くと短いと思われるかもしれませんが、時間が問題ではなく、『忙しい中でも何をみんなに伝えたいのか』が重要です」

 さらに課題としてあったのは時間を要していた資料作成。そこに生成AIサービスのChatGPTを活用したのが、DXを進める白ゆりグループならではの発想だ。

ChatGPTの答えで広がる研修内容

■ChatGPTを活用したzoomによる社内研修

 「実はこの社内研修は『研修資料はChatGPTを利用して作成してみよう』を裏テーマとして同時に進めています。今までの研修資料の作成は、文献やインターネットを活用して作成していました。この作業はとても時間を要します。資料作成に1~2週間かかる職員もいました。今は講師役と一緒にテーマに沿った内容をChatGPTにて内容を検討しています。どんな構成が良いのか。重要項目はどこか。楽しく参加してもらうにはどうするとよいのか。そんなやり取りをしていくとAIが内容を資料や台本として作成してくれます。大体1時間くらいで資料内容ができますので、講師役の負担感は大きく減ったと思います。

 こうしたデジタルを利用した研修は『月並みな内容にしかならないのでは?』と思われるかもしれませんが、介護現場で働いている職員だからこその“思い”がしっかりと反映させています。

 例えば認知症ケアの研修を企画した際、講師役の職員が『認知症の研修は他にもたくさんある。今回は認知症の方と関わっている私達だからこそ感じる“大切なケアとは何か”について研修したい』と話していました。その思いをAIに伝えると効果的な言語や視認性のよいイラストを作成し、zoomでも参加者との対話を導いてくれます」

研修会のテーマをみんなが共有

 zoomでの研修は録画できるので後から観ることができることも利点である。

■佐藤邦広 部長

 「最初は研修に携わった職員の工数削減や参加者の増加を狙いとして上げたプロジェクトでした。しかし、ChatGPTのようなAIを導入することで、逆に弊社独自の手作り感に溢れた研修になっています。それは普段職員が体験して感じていることを文章化し、明視性を確立してくれることで研修を受けた人がわかりやすい内容になっているからだと思います」

 以前の研修から変わった点を聞くと――

 「今まではどうしても勤務時間外になりがちだった研修も勤務内で30分と時間が決まっていることから職員が集中して聞いてくれるようになりました。講師もより頑張るという相乗効果がでていると思います」とのこと。佐藤部長は、職員との会話からも研修内容の共通理解が深まったと実感している。

■ChatGPTのデータをパワーポイントに使ったスライド作成

 今年選んだ講師役は研修をきっかけに成長すると期待する職員も含めて選定した。また、『この研修を受けさせたい』という人をシフトで調整するようになったという。佐藤部長は最後に「DXを活用して、良い研修を企画しながら良質なケアを考えていければと思っています」と話している。

※DX:ITを使い、ワークフローが変革し生産効率を上げること。

(取材日:2025年10月17日)