まずは栄養士への浸透を─治療用・介護用食品の講習会を開催(平成20年6月25日開催)

akiyamaevent01_iv_02治療用食品や介護用食品の販売に力を入れている(株)アキヤマでは、これらの商品の特徴や使用方法について説明するために栄養士向けの講習会を開催している。同社によると、まず栄養士にこうした食品への正しい知識や理解を持ってもらい、そこから一般の患者にも浸透させていきたいとのこと。さらに栄養士の勤める各医療施設などでこれらの商品を食事に取り入れてもらいたいとの狙いもあるという。
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●講師による講習風景

アキヤマ営業本部の一室に設けられた講習会会場に入ると、すでに約20人の栄養士が集まっていた。函館市と近郊の病院や老人保健施設などから集まったという。講師は治療用・介護用食品を製造・販売しているキッセイ薬品工業ヘルスケア事業部の担当者。この日は腎臓病と嚥下(えんげ)障害についてスライド形式で資料を見せながらの講義となった。
講義によると、日本における潜在的な腎臓病患者は非常に多いと推定されているとのこと。統計では日本の透析患者は毎年1万人ずつ増加している。だが、実際には毎年2万5000人増加し、その一方で1万5000人の透析患者が亡くなっているのだという。「ガン、メタボリックシンドロームの次は腎臓病が国を挙げて対策するものになるのでは」との予想もあると話された。

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●真剣に講義を受ける栄養士さんたち

腎臓病においては食事療法も非常に重要な鍵となる。特に腎臓の負担を軽減するためにはタンパク質を控えることが必要だ。だが、タンパク質は食パンや白米など主食にも意外と多く含まれているため、普通に食事をしているとおかずが制限され食べられるものの幅がとても狭くなってしまう。

そこで助けになるのが治療用食品「タンパク調整食品」だ。特にキッセイ薬品の販売するパック入りご飯「ゆめごはん」は、1食(180g)のタンパク質含有量を通常の25分の1に抑えた優れもの。普通の白米では1食当たり4.5gのタンパク質を含むが、同商品はわずか0.2gしか含まない。つまり患者は、主食のタンパク質が少ない分、摂取できるおかずの種類や幅が広がるというわけだ。

●「ゆめごはん」カレー

●「ゆめごはん」カレー

この「ゆめごはん」は、電子レンジで温めて食べる一般的なパック入りご飯と同じ外見。実際に試食してみると、粘り気も味も普通のご飯とほとんど変わらない。「治療食」と言うと我慢してまずい物を食べるようなイメージがあるが、これは毎日の主食としても何ら問題のない味だと言えそうだ。

この日の講習会で次に扱われたのは嚥下(えんげ)障害。嚥下障害とは、食べ物や飲み物を飲み込んだ際に器官と食道の切り替えがうまくいかず、むせてしまったり肺に入ってしまったりする問題のこと。主に老化によって人体の反応が鈍くなることによって生じる。これを解決するためには、食べ物や飲み物を粘度があって変形しやすい形状にすることが必要だという。従来は料理をミキサーにかけてドロドロにした食品が嚥下障害を持つ人の食事として用いられてきた。
しかしながら、ミキサーにかけるとすべての食材が混ざってしまうため、食材本来の味や形がわからなくなってしまうという欠点がある。そこでキッセイ薬品ではミキサー食を簡単に固めることのできる粉末「スルーパートナー」を販売している。これを利用して、たとえば肉は肉、芋は芋、ニンジンはニンジンなどと個別にミキサーにかけて再び固めた肉じゃがといったような食事を提供することができる。肉も芋もニンジンもすべてがかき混ぜられて一体となっている従来のミキサー食と比較すると、見た目も味わいも本来の料理に近いものを再現できるという。

このほか似たような商品として「とろみ調整食品」と呼ばれる粉末も何種類か販売されている。こちらは飲料に混ぜることによってとろみを付けるもの。とろみのある飲料は口の中での飲料の移動がゆっくりになるため、勢い良く飲み込んで器官に入ってしまうといったことを避けられるという。
講習会では参加者も実際にこの効果を体験した。

講習会終了後、参加者の老人保健施設管理栄養士のお二人に感想を聞きました。

akiyamaevent01_04_23お二人の職場では、通常の食事のほかに塩分制限食と低タンパク制限食を用意しているとのこと。しかしながらこうした制限のある献立を作るのには日々苦戦していると言い、「市販のタンパク調整食品を使うことができれば献立は楽になると思います。バラエティが増えて患者さんのためにもいいのでは」と治療用・介護用食品に関心を寄せていた。

※右写真:各種治療用・介護用食品

アキヤマではこうした栄養士向けの講習会を継続していく考え。今後は実際に調理実習を行うなどして、治療用・介護用食品のより一層の普及に努めたいとしている。