古くて新しい“きびだんご” その魅力と将来展望

株式会社 天狗堂宝船 代表取締役 千葉 仁 氏 

七飯町字中島205-1 TEL0138-66-3200 URL https://www.tengudou.co.jp/

道内に残る“きびだんご”製造メーカーは2社。そのうちの1社㈱天狗堂宝船は今年喜寿の記念すべき年を迎えた。また製造開始57年を数える同社のきびだんごは4月、七飯町に直営店をオープンして新たな展開期を迎えている。かつては病院売店にも置かれ人気を集めていた“きびだんご”。その魅力と将来展望を同社代表の千葉 仁氏に聞いた。

 

千葉 仁 社長

新川町の頃には、各病院の売店に私も配達で行っていました。一番記憶にあるのは中央病院さんの売店。カステラは最初から、それにきびだんごです。谷田製菓(夕張郡栗山町)さんは、道内全域で強かったんですが、函館にはうちも國産製菓さんもあって、病院売店に谷田さんのきびだんごが入っていたという記憶は私にはありません。國産製菓さんとうちが入っていたと思います。

地元の有力スーパーが淘汰されて、スーパー業界は全道の中の函館エリアみたいになり、他地区エリアの定番商品が、そのまま函館にも入ってきて、谷田製菓さんの商品も道南圏でも広く出回るようになりました。

昭和30年代から50年代にかけて

 当時、カネマルさんや他の問屋を通してうちが直接売店に納品していました。忙しい時は週に一、二回くらい。月に数回は自分たちでつくったものを配達していました。

 ものすごく売れていたということはありませんが、当時は病院の階段下の狭い場所でやっている売店もあったんですが、通院やお見舞いの方、入院されている患者さんにはお店の選択肢がなくて、そんな小さな売店でも売り上げは大きい時代だったんですね。

 パン屋さんは毎日のように配達して残ったものを下げるという営業スタイルでしたが、ロスを出したくないので、数量を限っていましたから、時間を過ぎるとほとんど品切れ状態。そんな時のつなぎで、うちのカステラや日持ちのするきびだんごが重宝されていたと思います。

病院の売店は、お菓子以外でも入院に必要なものを販売していました。今は病院売店もコンビニさんが多いですが、大都市でも企業や組織が従業員のために、オフィスビルや工場内に設ける企業売店がありますが、あれも自社でやられているのは、ほぼないと思います。市役所も以前は購買部の売店がありましたが、コンビニに代っている時代ですから。

きびだんごは昔から腹持ちがよいといわれていました。水あめ、砂糖、小麦粉、餅粉の原料を蒸気で熱して、砂糖や水あめを足しながら混ぜて、水分を調整して練り上げます。素朴な味で腹持ちがよく、日持ちもして、多少手が汚れていても包装紙を破ってワンハンドの片手で食べられる形状です。

北海道では野良仕事をしていた屯田兵の人たちが携帯食として食べていたのがルーツといわれています。その後、農家さんの繁忙期には、出目さん(時間で働くアルバイト)に10時と3時のおやつとして重宝された商品の筆頭格がきびだんごでした。

食べるときに音がしない。匂いがしない。ベッドの上で食べてもボロボロこぼれることもないし、同じ病室の人にも匂いや音で迷惑をかけない。そうした重宝さもあるんです。そういう理由から映画館の売店にもありました。うちは映画館では東宝の劇場にきびだんごをカステラとセットのように入れてもらっていました。【次ページへ】