身近で相談を受けるかかりつけ薬局と在宅介護・医療に対応した訪問薬剤師

 株式会社ファーマフロント 代表取締役・薬剤師 神 田  一 仁 氏
・白ゆり薬局 末広店(本社) 函館市末広町3番14号 TEL.0138-24-5010
・白ゆり薬局 乙部店 爾志郡乙部町704番地14 TEL.0139-62-5777
https://www.pharma-front.com/

薬といっても、同じ成分で先発品・後発薬品(ジェネリック)のメーカー・規格違いを合わせると100種類以上あるものもあり、その数は膨大。医療機関からの処方箋により調剤する薬局(保険薬局)もこうした時代変化と社会情勢に対応した変化が求められている。一般社団法人函館薬剤師会副会長で、株式会社ファーマフロント代表取締役として函館市と乙部町で白ゆり薬局を運営する薬剤師の神田一仁氏に話を聞いた。


「メディカルページ函館・道南版2020年冬号」(令和2年11月16日発行)の冊子に掲載された記事です。

 

薬局とドラッグストアの違いは何でしょう?

■神田一仁 代表

 大きな違いは、薬局には薬剤師が常駐していて、医師の発行する処方箋にしたがって、調剤を行うことができます。そういう薬局のことを正式には保険薬局と呼んでいます。一方、ドラッグストアは多くの方は日用品や食料品を揃えた大型店をイメージされていると思いますが、一般的に、市販薬、いわゆるOTC薬品をメインに扱う店舗販売業のことを指します。最近では処方箋を受付けて薬局の機能を兼ね備えているドラッグストアもあります。
 ただ、同じ市販薬でも扱える違いはあります。市販薬の中でもリスクが高い要指導医薬品や第1類医薬品と分類されているものは、薬剤師の説明を受けなければ購入できません。

最近よく聞く、かかりつけ薬局について教えてください。

 複数の医療機関にかかっている方は、それぞれの医療機関の近くにある、いわゆる門前薬局さんで薬を求められている方も多いと思います。薬局をひとつに決めていただくと、使用する薬をまとめて管理することができます。複数の医療機関から名前は違うが同じような効能の薬が出ている場合もあります。また、飲み合わせで注意が必要な相互作用がある薬に薬剤師が気づくことができます。
 かかりつけ薬局というと処方箋がないと入りづらいという方も多いと思いますが、相談薬局のようなものです。頭痛や腹痛があるという時は、今飲んでいる薬が関係している場合もありますし、市販薬も置いていますから症状に合ったお薬を選ぶお手伝いができる場合もあります。気軽に来局していただきたいと思います。また相談内容によっては、お医者さんにかかってくださいと勧めることもいたします。かかりつけ薬局では、薬剤服用歴をお一人ごとに作成しています。これまで飲んでいる薬や体調、アレルギーの記録も取っていますから、安心して相談していただけると思います。ぜひ、ご自宅や職場のお近くなどにかかりつけ薬局を持たれたらよいと思います。

薬局ではお薬手帳を渡してくれますが、この利用方法は?

 お薬手帳に書かれていることは、その薬局の処方が記録されています。でも、みなさんがしっかり管理されているとは限りません。手帳を持参されない方が薬局でお渡ししたシールを手帳に貼ってくれるといいんですが、そうではない方もいます。また、これはA病院用、これはBクリニック用と医療機関ごとにお薬手帳を使い分けている方が意外と多いんです。これでは他の医療機関の処方内容が入って来ないので困ります。お薬手帳を一冊にまとめることで役立ちます。
 日本薬剤師会では「e-お薬手帳」というアプリを作成しています。スマホで処方薬の管理ができますし、市販薬の登録もできます。うちの薬局も対応していますので、ご興味のある方はぜひ試してみてください。

白ゆり薬局末広店では介護施設の処方箋も扱っているのですね。

■白ゆり薬局 末広店

 施設のスタッフの方や訪問看護に行かれている方から、利用者さんの薬の飲み忘れや、錠剤が大きすぎて飲み込めていない、飲むとむせるなどの問題を聞いていました。そういうデータを蓄積して、対応法をアップデートしてきました。
 今はほとんどの薬局でもしていますが、お薬を朝昼夕とかひとつのパックにして、同じタイミングで飲めるように一包化したり、間違えないように患者さんの名前を入れたり、日付を入れたり、必要な場合は視覚的にも分かりやすいように色で線をひいたりということは以前からやっていました。
 錠剤の嚥下が困難な方には、潰せる錠剤なら粉砕して潰したり、今はゼリー状の薬もあるので、医療機関へ連絡して替えてもらえませんかと提案したりもします。
 介護施設では、栄養剤を摂取されている方も多いのですが、缶やアルミパックに入っていて、一週間分となると段ボール箱で何個にもなることがあります。利用者さんご自身やヘルパーの方が持って帰るのも大変な労力です。そこでうちの薬局から介護施設に配達することもしています。
 介護施設のスタッフの方には、薬の飲ませ忘れや他の方に飲ませてしまうんじゃないかという不安が相当なストレスと聞いています。分包紙にバーコードを入れて端末で読み込み、利用者さんの顔と名前や服薬タイミングを表示して、薬を飲ませたことをデータで管理できるシステムをできないか検討している最中です。スタッフの方のストレス、労力緩和の応援グッズになればなと思っています。

在宅介護や療養に対応する訪問薬剤師さんもいらっしゃるそうですが。

 ここ数年、全国的に在宅医療が推進されて、病院から在宅での療養へ移行しています。訪問看護師やホームヘルパーの方が、利用者さんのお宅にお伺いしたときに薬の管理やセットにほとんどの時間を費やしてしまい、ほかの仕事ができないという話も聞いております。薬剤師も薬局の中ばかりじゃなく、在宅や施設に行く必要性が出てきていると思います。
 訪問薬剤師は原則、通院が困難な方や、薬の管理が必要な方に対して医師の同意があれば、ご自宅などを訪問させていただきます。薬を入れる箱やお薬カレンダーなどをセットしたり、正しい服薬方法をアドバイスしたりします。その後も、お薬をきちんと飲んでいるか、副作用が出ていないかという情報を医師にフィードバックして、ケアマネージャーさんや訪問看護師さんとも情報を共有します。
 函館薬剤師会のホームページにも道南地区で在宅医療に取り組んでいる在宅医療支援薬局リストを掲載して、相談に応じている薬局をご紹介しています。(PDFにリンクしています)

処方箋も新しいタイプがあるそうですね。

 薬剤師は処方箋の内容と患者さんからの聞き取りなどの情報から推察して仕事をしていますが、全国的な取組みで、検査値が表示された処方箋が出始めていいます。当地域でも函館五稜郭病院がこの形式の処方箋を発行しています。薬剤師も腎機能や肝臓の状態を知ったり、血糖値やコレステロールのコントロール状態を見られることで、指導の幅がもっと広がると思います。今後は、この新しい処方箋が増えていくと思っています。

(取材日:2020年10月15日)


■株式会社ファーマフロント(白ゆり薬局)オフィシャルサイト