特集9 パワーリハビリテーションという介護予防法

toku_060601_takedaclinic_docケアプラザ新函館・たけだクリニック 武田 良一 院長
函館市宮前町27番11号 TEL 0138-62-3100

toku_060601_takedaclinic_01宮前町にある「ケアプラザ新函館・たけだクリニック」では、オープン当初から、介護保険が適用されるパワーリハビリテーションを導入しています。 パワーリハビリテーションは、高齢者の介護予防・介助軽減・自立支援のための手法として、数種類の機器を使用し、要介護高齢者の日常の動作性と体力の向上を目的として考案されたもので、衰えてしまった筋肉や神経の働きを呼び起こすためにごく軽い負荷をかけるという運動法。たとえば歩行で転びやすく外出を控えていた方、左手に麻痺がある方など、パワーリハビリテーションを続けることにより動作が安定し、日常生活が行ないやすくなるといいます。加えて、運動することにより、行動意欲も生まれ、精神的にも前向きになるという事例も多いそうです。
こうしたパワーリハビリテーションを積極的に取り入れている「ケアプラザ新函館・たけだクリニック」の武田良一先生にお話を伺いました。


「メディカルページ 平成18年度版」(平成18年6月1日発行)の冊子に掲載された記事です。※院名や役職、また内容についても取材時のまま表記しています。

高齢者の介護にあたって、パワーリハビリテーションを導入されたのは?

武田:効果が数字になって現われるリハビリテーションのプログラムだという点が魅力でした。デイサービスやデイケアなどでもリハビリテーションを行なっているところはたくさんありますが、たとえば3カ月経った時にこういう結果がでていますと成果を発表している事例というのは少ないんですね。パワーリハビリテーションの場合、評価システムが確立されているので、それが可能なんです。成績というのは、上がればうれしいじゃないですか。それと一緒です。実際、目に見える効果があります。うちにいちばん最初にこられた方は、最初は車椅子でしたが、3カ月後には杖を使って歩けるようになりました。もちろん個人差もありますし、疾患の違いや麻痺の程度にもよりますので、全ての方に同じように当てはまるわけではないですが、数多くの有効な事例のあるリハビリテーションなんです。

これからリハビリテーションを始めようとする人たちにとっても、目標として明確ですね。

武田:そうですね。うちの場合は、利用者側とご家族とまずは相談して、ご本人が何をどうしたいのか、どういう生活をしたいかということを明確にした上で、目標に向かってリハビリしていきます。ただ単にリハビリをするというのではなかなかむずかしいんです。よくリハビリをすれば、元に戻れると思っている方がいらっしゃるんですが、そういう方は病気になってしまった自分の体をどうしても受け入れられないんですね。でも、残念ながら、病気になる前の体には戻らない。ですから、自分の今の状態を受け入れた上で、何ができるようになりたいのか、どういう生活をしたいか、と目標を立てることから始めるんです。「隣のスーパーで買物をして食事を作れるようになりたい」、「趣味のカメラを手に、もう一度写真を撮りたい」など。小さな目標でいいんです。常にそういうことを正確に確かめながら、リハビリテーションのプログラムを作り、実践しています。

toku_060601_takedaclinic_02「ケアプラザ新函館・たけだクリニック」では、通常のデイケア、デイサービスにあるカラオケやマージャンなどのレクリエーションは敢えて行なわず、運動機能の回復を優先としています。案内していただいたマシンルームには、上体の曲げ伸ばし、股関節の曲げ伸ばしや開閉など、さまざまなリハビリを行なう6台の機器が並び、数名の高齢者の方が運動されていました。
リハビリマシンはそのどれもが一見すると、通常のトレーニングマシンのように見えますが、運動している方の心臓に掛かる負担は「入浴時と同程度」だそうです。「スポーツ等で行なう筋肉トレーニングの場合は、だいたい70%の負荷量までやるんですが、ここでやる場合は30%程度の負荷量でやりますので、本人にとっては、機械を使って運動しているという重さを感じることがないんですね。人間の体は、通常、全体の能力の約3割から4割を使って日常生活を送っています。つまり、6割から7割はふだんは休んでいるんですね。病気になれば、さらに、その休んでいる割合が多くなります。そこに少し刺激を加えることによって、休んでいる筋肉を活発化させると、たとえば今まで歩けなかった人が歩けるようになるというのが理論なんです」と武田先生。
たくさんの窓から光の差し込む部屋で、体を動かしたり、マシントレーニングを受けている高齢者の方々は、とても若々しく活き活きとした印象でした。

■写真:平成18年3月25日講習会より


武田先生は、介護の在り方、高齢者医療についてどのようにお考えですか?

武田:患者さんが、笑って「ありがとう」と最期にそんなふうに言えることが、目指すところでしょうか。その方の生活というものを、医療も介護も含めて、一緒に考えて行なっていくことが大事。医療のない介護なんてないですからね。そして、そのためにも本人がこうしたいと自ら希望されることが大切なんです。
内科医の時にも、人の終末期に立ち会ってきましたが、どうやって死にたいのか、と本当はそうやって聞きたい気持ちもありました。でも反面、どうやって死にたいかと聞いた時に、それを自分が支えられるかと考えるとむずかしい面もあります。たとえば病院で死ぬか、自宅で死ぬか――。そうして終末期が近づいてきたときに、ご本人、そして家族死についてオープンに話しができ、最期になった時に、おろおろしたりおたおたせずにちゃんと死ねるか看取れるか、医師もまた苦しい悲しいという状況をどれだけサポートできるのか…。そうしたいろんな状況を考えると、まだまだ難しい問題です。でも、少なくとも、ご本人がこうしたいと希望されることを、一緒になって「やってみようよ。がんばってみよう」と取り組んでいく。それがうちのクリニックがやろうとしていることの根っこの部分なんです。

「利用者する方から教えられることがたくさんあるんです。リハビリテーションのプログラムひとつとっても、お仕着せの考えで『あなたには無理です。できません』ではなく『やってみようよ』とトライする姿勢が大切」だと武田先生は言います。そして、リハビリを受ける側と提供するスタッフの側、双方が同じ足並みで目標に向かっていくこともまた必要なことだと話されていました。
「ケアプラザ新函館・たけだクリニック」のスタッフは、看護士、準看護士や介護福祉士、運動実践指導師、作業療法士など、現在14名ほど。みなそれぞれの立場から、現場からの視点を持って、介護の在り方に意見を持つ意欲的な若いスタッフが多いそうです。内科医としての経験の長い武田先生ご自身もまた、5年前に介護保険法が施行された時にケアマネージャーの資格を取得、同時に社会福祉士でもあります。まだまだ、医師が介護の現場に取り組む事例が少ないと言われている中、こうした考えを持ち実践する武田先生のような存在は貴重です。toku_060601_takedaclinic_03
また、同クリニックでは、医療ソーシャルワーカーを配置し、医療・福祉・介護保険などあらゆる相談の窓口も設けています。「現在は、介護保険適用の施設ですが、最終的には、高齢者だけではなく、どんなケアに対しても対応しようというのがうちのコンセプトでもあります。困っている方がこられたら、何らかの手助けができる場でありたい」とお話されていました。

■写真:平成18年3月25日講習会より

■2006年、介護保険法・改正について

介護の現場に詳しい武田先生から、今年4月に改正された介護保険法について、わかりやすく教えていただきました。


介護保険法が創設して5年経ちますね。今回の改正で大きく変わる点を教えてください。

武田:大きく変わる点として「予防介護」というのが始まるという点です。つまり、介護状態にならないように事前にケアする、ということです。改正される以前の要支援、要介護1、要介護2、要介護3、要介護4、要介護5の6段階から、今回新たに要介護を二つに分けましょう、といういうことになりました。創設後、5年後に見直しをかけるとされた介護保険法ですが、実際に5年後を見てみるとと、介護度が低い方、つまり要支援、要介護1、要介護2くらいまでの方のだいたいが一年経つと介護状態が悪化しているという現状がありました。通所やホームヘルプサービスや入浴だとかサービスなどを導入したがために、ご本人がやらなくなってしまったのでは? 要するに、サービス過剰だったのではないかと管轄する厚生労働省はみているんですね。そこで、自立支援という策をとらなければ、高齢者の介護状態がどんどん高いレベルに達し、介護保険がつぶれてしまうのではないかと。そこで、要支援はそのままに、要介護1を細分化し要支援2というのを設け、ケアマネージャーが、利用者ができること、できないことをきちんと分けた上で、入所やヘルパーの制限などをし、支援できるサービスを提供する。運動の機能向上、栄養、口腔の3つに重点を置いてケアをし、非介護の高齢者を、できるだけ地域で支援する事業も再編しましょうという動きが今回の改正の大きな点だと思います。

なるほど。介護を必要する高齢者になる前に、何らかのケアをするということが法的に整備されるということですね。

武田:そういうことですね。日本の場合、団塊の世代が、全員リタイアしてきて高齢者となる2015年~2025年の間が、いちばん高齢化が高くなるんです。その後は総人口が下がってきますので、たぶん介護保険も安定するだろうと見ているんです。それまでの間はなんとか給付をおさえたい、という状況があるようです。そのためにも、総合的な相談窓口機能として「地域包括支援センター」というものを設けてマネジメントにあたり、今までの介護保険による給付制度も見直しが計られることになります。地域単位でも、そうした高齢者に対する支援事業として、介護予防のサービスを再編しようという動きがあります。

ケアプラザ新函館・たけだクリニックが導入しているパワーリハビリテーションの取り組みなどは、今回の「介護予防」という考え方に合致しますね。

武田:そうですね。うちのクリニックがオープン当初から考えてきた介護の在り方と重なる部分が多くあります。多くの高齢者の方々に元気になっていただくことは、ご本人にとってはもちろんですが、介護する側にとって、ひいては社会的にもよい方向へ向かっていくのだと思いますね。


ケアプラザ新函館・たけだクリニック
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