「ウェルキャブ車」愛用者インタビュー: 社会福祉法人函館カリタスの園特別養護老人ホーム「旭ヶ丘の家」

ハイエース(スーパーロングボディ車いす仕様車 )

函館トヨペット株式会社
函館市石川町169番地35 TEL 0138-46-2111

使う人の立場に立った車づくりで大好評のトヨタの福祉車両「ウェルキャブシリーズ」。福祉車両を実体験できるウェルキャブステーションの開設や、各種イベント会場で福祉車両を展示するなど、ウェルキャブ車の普及に務めてきた函館トヨペット株式会社では、平成23年春に函館市旭岡町にある特別養護老人ホーム「旭ヶ岡の家」にハイエース・スーパーロングボディ車いす仕様車を納入した。これまでにもタイプの異なるウェルキャブ車を導入してきた同施設だが、今回導入したハイエースの性能には大変満足しているという。今回のメディカル情報では「旭ヶ岡の家」を訪れ、実際の現場で利用するスタッフの上野博司さんに使い勝手や気付いた点などを伺ってみた。


※「メディカルページ函館平成23年度版」(平成23 年11 月1 日発行)の冊子に掲載された記事です。内容は掲載時のまま表記しています。

現在、自動車メーカー各社から複数の福祉車両が発表されていますが、今回の車種選定にあたってはどのような点を重視されましたか?

toyopet11_14_02これまでに私たちの施設では、トヨタのハイエース、ライトエースのウェルキャブ車のほか、他社メーカーの福祉車両も導入してきましたが、車いすの搭載は最大で2台まででした。しかし車いすを利用する入居者は年々増えており、一度になるべく多くの車いすを搭載できるという点にポイントを置いて車種を選定した結果、国産車で唯一4台の車いすを搭載できるこの車になりました。

スーパーロングボディの車両とはいえ、車いすを4台搭載すると少々手狭ではありませんか?

正直なところ、車いすをフルに4台載せるといっぱいになった印象を受けますが、狭いところにたくさんのものを集約するのは日本のお家芸ともいえます。車内はコンパクトにまとめられ、見た目以上にたくさんのものが載せられます。もちろんマイクロバスなど大きく広いことに越したことはないでしょうが、これ以上の大きさになると道幅や駐車場の問題もでてきますので、現行のトヨタの乗用車の中では実によく設計された車だと思います。

これまでの倍の台数の車いすを搭載できるようになったわけですが、実際に4台の車いすを載せることはあるのですか?

この車を導入して以来、ほぼ毎日のように利用して走行距離も半年で6000kmを越えています。用途としては入居者の通院の際の送迎に利用するのが主で、4台載せる場合もありますが、多くの場合が車いすを2台載せての行動になります。また、入居者の中にはリクライニング式の車いす生活の方もいますが、このスーパーロングボディ車ではストレッチャーも搭載することができるので、入居するすべての方の移動が可能になりました。車いすを4台搭載できることも魅力ですが、ストレッチャーや車いすを2台しか載せない場合でも従来の車よりもゆったりとした空間を確保して送迎できるところにこの車のメリットを感じます。

実際に送迎される入居者の方の反応はいかがでしょうか?

みなさん「広くていいね」「乗り心地がいいね」と好評です。通常の車のシートとは異なり、車いすはビニールのシートが一枚あるようなもので振動が直接伝わります。とくに施設の周辺には砂利道もあるので、私たちドライバーも振動にはとくに気を遣いますが、路面からの振動の吸収性も高く、みなさん快適に乗っていられるようです。

toyopet11_14_10車いすの最大の搭載数が増えたことでのメリットはありますか?

「旭ヶ岡の家」ではレクリェーションの一環として春先の花見や秋の紅葉狩りなど、施設外への遠足も行っています。これまでは複数のグループに分けて行動していましたが、一度で倍の人数を運ぶことができるようになり、入居者が外に出る機会も作りやすくなったと思います。また、今回のハイエースには中部座席も設置されており、介助者や車いすを必要としない方も一緒に移動できるので便利ですね。

これまでに利用してきたウェルキャブ車と比べ、これは便利だと思う点があれば教えてください。

今回の車で驚くほど便利になったと感じるのが、ワンタッチで車いすを固定することのできる「サポートバー」の採用です。これまでは自動車に載せた車いすを固定するには、車いすの前後4か所にフックを掛けて固定レバーや紐で引っ張るのが主流でしたが、サポートバーの採用で車いすの前方に回り込まなくても後方から4か所すべてのフックをワンタッチでセットできるようになりました。フックを掛けた後はボタン一つで電動式のワイヤーで固定することができ、解除するときにもボタン一つで操作できます。バッテリーを搭載した電動式車いすや、フレームの長さが特殊な一部の車いすの中にはワンタッチで装着できないケースもありますが、今後すべての車いすで対応できるようになれば介助者の作業効率も格段に上ると思います。

読者の中には同タイプの車の購入を検討されている方もいると思いますが、車を選ぶ際のアドバイスなどがあればお願いします。

今回の車には付けなかったのですが、ワンタッチでドアの開閉ができるオプション装置があります。私たちの施設ではドアの開け閉めはドライバーが行うのが原則ですが、中には積極的にお手伝いしてくれる方もいます。昔の車に比べるとドアは軽くはなりましたが、高齢者の方にとってはやはり重く感じるようで、そういうケースを想定してワンタッチ開閉のオプションを付けておけばよかったと思っています。また、車内用の点滴フックを今回初めてオプションで設置したのですが、これがとても重宝しています。これまでは付き添いの方が手で持ったり、手すりなど適当な場所に引っ掛けていたのですが、専用の器具はやはり便利ですね。その他、酸素ボンベを設置する器具や手すりなどオプションも数多く揃っていますので、施設の状況に合ったものを吟味して選ぶといいと思います。とくに手すりは付け過ぎると場所をとって逆に移動の邪魔になることもあります。函館トヨペット石川店のウェルキャブステーションでは福祉車両を実際に体験できるので、専門スタッフに相談してみるのがいいでしょう。

メーカー、車種、製造年式によって車いすのサイズと形状には随分と差があることを知った今回の取材。車椅子の統一規格を作るのは困難だという話も聞くが、「サポートバー」の便利さが際立っていただけに、どのような車椅子にも対応できる装置の改良が待ち望まれる。今回の取材でご協力いただいた函館トヨペット㈱では、電動リクライニングの車椅子でもワンタッチで固定できるよう、早速本社の担当部門に対応を求めたという。ユーザーからの貴重な意見を常時フィードバックし、ユーザーにとってより使い勝手のいい製品を作ろうと試みる同社の姿勢に好感が持てた。

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