「治療用食品・介護用食品」─取材レポート/その11 (株)アキヤマによる「介護食」
直営店舗から利用者に提供 専門メーカー(株)フードケアによる介護用食品
株式会社アキヤマ 業務用食材・資材・機器専門商社
北斗市東前3-41 TEL 0138-77-7491
業務用食品の専門商社である(株)アキヤマは、製菓製パン業、外食産業の柱に、10年ほど前から治療用食品・介護用食品にも主軸を置いている。それも医療機関や介護施設などの給食用食品・食材の提供だけでなく、在宅で介護を受ける高齢者に安全で、美味しく食べられる介護用食品の販売にも注力している。 道内では唯一の販売スペースで(株)アキヤマが扱う専門メーカー、㈱フードケアの介護用食品の特徴とともに食による在宅介護への取り組みを紹介する。 |
■(株)アキヤマ 根本琢巳営業部長(写真左)と上杉賢司氏 |
「当社が治療食、介護食の分野に取り組んだのは2003年のこと。ほぼ10年を迎えています」と話すのは、(株)アキヤマの根本琢巳営業部長。きっかけは治療用食品・介護用食品の組合専売品を、病院・介護施設などへ販売することができる全国病院用食材卸売業協同組合への加盟だった。
その後、高齢化社会は急伸。これを背景に治療用食品・介護用食品の市場マーケットは急成長し、食品メーカーだけでなく、食品卸業者などの参入も加速する。(株)アキヤマには取り扱う2000アイテム超の商品知識だけでなく、各種のイベントなどを通して地域に情報発信。10年にわたって蓄積されたノウハウにより利用者から高い信頼を集めている。
一日の長に甘んじることなく、(株)アキヤマは業務用だけでなく、在宅で介護する個人ユーザーにも配慮する。
地域要望による介護食展開
(株)アキヤマが扱う商品とメーカーの中で今回紹介する㈱フードケア(本社神奈川県相模原市)は1997年の設立以来、介護用食品を核に展開している業務用介護用食品のリーディングカンパニー。「病院や介護施設の栄養士さんから、当社が施設に入れている商品と紹介を受けて、お買い求めに来て下さるご家族の方もいらっしゃいます」と話すのは、(株)アキヤマで介護用食品を担当する上杉賢司さん。
㈱アキヤマを通して医療機関や介護施設などで、(株)フードケアの介護用食品が使われている。そうした施設で提供された食事を自宅に戻ってからも提供したいという要望に応えること、そして在宅介護を支援したいというのが、㈱アキヤマが介護用食品の展開に力を入れる要因だ。
介護用食品の機能と重要性
介護用食品は、噛む力や飲み込む力など、食べる力が落ちた高齢者向けの食品。食べ物を喉から食道へと送り込むという一連の運動を私たちは何気なく行っているが、『飲み込む』という行為には、多数の器官が複機能(協調運動)している。老化などで、この協調運動が機能しなくなると、食べ物が器官や肺などに入る『誤嚥(ごえん)』を引き起こす。誤嚥により肺に細菌が繁殖して炎症を起こす(誤嚥性肺炎)など重篤な疾患の要因となる危険性がある。その一方で、ものを口から食べるのは、生きている事を実感できる重要な日常行為。多くの介護施設でも食事の提供に力を入れるのも、そのためだ。
(株)フードケアの介護用食品の特徴
誤嚥を防ぐため、嚥下(えんげ)力が衰えた人の食事に添加して飲みこみやすくするのが『とろみ剤』。従来は片栗粉など澱粉質により、とろみを出していた。しかし、粥やミキサー粥など澱粉食材は唾液中のアミラーゼにより分解され、流動性が高まることで咽頭内に流れ込み、誤嚥を誘発するケースもある。
「当社の『スベラカーゼ』は、澱粉分解酵素をふくんでおり、口腔内にいれたままでも流動性を防止して安全に嚥下することが可能です」
㈱フードケアの商品『スベラカーゼ』について、同社の中野康俊氏(認知症ケア指導管理士・健康予防管理専門士)は、こう話す。
高齢者は、お粥を主食とすることが多いが、『スベラカーゼ』には誤嚥を防げるだけでなく、お粥の栄養価を低下させないという機能もある。『スベラカーゼ』は、澱粉を多く含まない食品やみそ汁等もゼリーにすることができる。さらに『スベラカーゼ』を使ったお粥は、冷凍も保存も可能。長期間にわたる介護には心強い味方。このほか『スベラカーゼ』を使ってのメニューレシピでは南瓜や里芋の煮物のほか、ラーメンや餅ゼリーなどの作り方も紹介している。
■(株)フードケア中野康俊氏(写真左)と 食べる力が落ちた高齢者向けの主な介護用食品 |
食事を通してのQOLの向上という点では食肉・魚肉品質改良剤の『スベラカーゼ・ミート』もある。漬け込むだけで、肉や魚介類が約40%柔らかくなり、噛む力が低下した高齢者でも食べやすくなる。牛・豚・鶏のほか魚介類などにも使え、生臭みを軽減するほか、冷めても柔らかさを保つことができる。
㈱フードケアの商品には、このほかに食欲が低下した摂食障害の高齢者に向けた栄養機能食品『エプリッチ』もある。1パック220gにエネルギーと蛋白質を補給できるゼリー物性がパックされ、味はフルーツ各種のほか、コーヒーなど10種類の風味がある。また、醤油をかけて冷奴風にも楽しめる豆腐タイプの『エプディッシュ』など不足しがちな栄養素をバランスよくサポートする栄養機能食品がある。
これらの栄養機能食品には、高齢者にエネルギーと蛋白質を補給することで、褥瘡(じょくそう・床ずれ)の予防と回復にも効果がある。
食を通して高齢者のQOL向上を
高齢化社会の急速な進展で、介護用食品の必要はさらに高まる。「当社の商品もより便利にかつ、安心と信頼をお届けしなくてはならない」と話す中野氏は、同社の製品を直接手に触れ、実際に試食も出来る㈱アキヤマの直営店の重要性も補足。道南地区において食を通した在宅介護の支援に一層の期待が高まる。
(取材日:平成25年9月11日)