「治療用食品・介護用食品」─取材レポート/その8 新しい食文化を提案する食品総合商社(株)アキヤマ
『低タンパク食 料理教室』開催
株式会社アキヤマ 業務用食材・資材・機器専門商社
北斗市東前3-41 TEL 0138-77-7491
治療用・介護用食品も扱う食品総合商社の(株)アキヤマでは、腎臓病の方やそのご家族を対象にした料理教室を定期的に実施し、好評を集めています。そこで今回は、平成24年4月26日に北斗市のかなでーる(左写真)にて開催された低たんぱく食の料理教室と勉強会にお邪魔し、その様子を見学してきました。 |
この日のメニューは、中華粥・鱒と野菜のホイル焼き・小松菜ともやしのさっぱり和え・白玉マンゴーソースかけの4品。たんぱく質・リン・カリウム・塩分などを減らした、慢性腎臓病の方のための献立です。低たんぱく食品を製造しているキッセイ薬品工業の協力を得て、低たんぱく米「ゆめごはん」やリン・カリウムを3分の1に減らした「げんたつゆ」、たんぱく質を調整したレトルトソースなどを使用。こうした腎臓病の方向けの食品を使って普段通りに調理を行っていくだけで良く、特別な下処理や調理法は必要ありません。調理開始から約1時間後には、彩り良く盛り付けられた低たんぱく食のメニューが各テーブルに並びました。
記者もすべてのメニューを実際に試食してみましたが、どのメニューにも食べる人を楽しませる一工夫が込められており、満足感や食べる楽しさなどを感じることができました。確かに少し薄味ではありましたが、味気なさを感じるほどではなく、薄味に慣れると十分毎日の食事としておいしくいただけそうです。腎臓病の食事療法について様々なヒントを与えてくれる、大変有意義な料理教室だと感じました。
料理教室の後は、函館五稜郭病院の医療部栄養科長を務める川村順子先生による講演で、腎臓病の食事療法に関する基本的な考え方をおさらいしました。たんぱく質の摂取制限については「摂取量が限られている中で、良質のたんぱく質を摂って欲しい」と強調。ご飯やパンなど主食を低たんぱく質の特殊食品に替え、おかずを普通に摂って良質なたんぱく質を摂るのが良いとしました。玉子や肉、魚、豆腐などアミノ酸を多く含む食品でたんぱく質を摂るように勧めました。また、「栄養指導は作る人だけでなく食べる本人も一緒に受けて欲しい」とも。料理する人だけが理屈をわかっていても、食べる人が納得していないともめごとになってしまう場合があるからだそうです。
慢性腎臓病の方にとって食事療法は不可欠なものですが、「あまり神経質になってもかえって体調を悪くするので良くない」とも。少し数字をオーバーしたとしても前後の数日間で調整すれば良いと参加者に勧めていました。何が何でも1日の制限量に収めようと考えないことが食事療法を長く続けるコツだそうです。
■勉強会の様子と五稜郭病院栄養科長 川村順子先生(右) |
■出来上がり4品/■試食風景 |
■今回参加されたみなさん
料理教室と勉強会の終了後、講師として調理指導を行ったキッセイ薬品工業(株)ヘルスケア事業部営業課の斎藤良参事にお話をお聞きしました。
我が社は製薬会社ですが、薬と食品は病気を治す上で両輪を為すものだとの考えから、20数年前より社として今回のような取り組みを行っています。腎臓病の方のための食品をただ製造するのではなく、いかに食事療法をうまく継続して透析を先に延ばすかを考えると、やはり調理実習が必要だと考えています。ドクターや栄養士に指導を受ける機会はどうしても限られてしまいますので、メーカーとしてその任を果たしていきたいですね。
こうした勉強会では患者さんのお悩みやご意見・ご要望を直接お聞きできますので、会社としてもありがたい機会です。実際にこうした場での意見を反映させて新しい製品の企画も行われています。
主催者として今回の勉強会を担当した(株)アキヤマの小林周平常務は・・・
年2回のペースで今回のような調理実習と講演を組み合わせた慢性腎臓病食事療法勉強会を実施しており、継続して参加している方もいらっしゃいます。我々の使命は、こうした治療用食品を販売することだけではなく、お客さまに健康になっていただくために当社の持っている知識やノウハウをお伝えしていくこと。そのために我々もより一層商品について勉強を重ねたいと思っています。
アキヤマでは現在牛乳の宅配事業を展開していますので、これを基に今後は介護用・治療用食品を宅配するシステムの構築を進めたいと考えています。当社にご購入に来られる回数を減らした分、ご自分の行きたい所に出かけていただけたらと思います。今後も他社にはできないサービスを提供していく心構えです。
(取材日:平成24年4月26日)