すべての人々が地域で共に生きる社会を目指し就労や共同生活援助など支援事業を展開する
●社会福祉法人 道南福祉ねっと
理事長 成田孝四郎 氏
七飯町本町4丁目20番2号 TEL 0138-86-7118
障害当事者(以下当事者)や健常者、子どもなど誰もが地域の中で互いを認め合い、ともに生活していくという『ソーシャル・インクルージョン』を理念に、北斗市と七飯・森の両町で当事者支援事業を行っている社会福祉法人道南福祉ねっと(本部七飯町本町4丁目20番2号)。その発端は、養護学校に勤務する教職員有志による当事者の地域生活保障運動でした。相談を始め共同作業所、グループホームなどの施設で支援する『道南福祉ねっと』のこれまでの歩みと事業について、当初からのメンバーの一人である同社会福祉法人理事長の成田孝四郎氏にお話をお伺いしました。
「メディカルページ平成27年度改訂版」(平成27年11月1日発行)の冊子に掲載された記事です。 |
「平成9年11月に7人の仲間たちが集まって、当事者の地域生活を保障する話し合いから始まりましたが、基本はこれより何十年も前に遡ります」。成田理事長は、道南福祉ねっとの源流となった『今、七飯町からはじめよう 福祉のまちをつくる会』の発足について、こう話します。
当時、北海道七飯養護学校の教諭だった成田氏らに共通していたのは、当事者や高齢者などの弱者が、社会において常に犠牲を強いられているという思いでした。
「こうした社会がおかしいということは、みなさん分かっている。弱い立場の人、それは災害などの被災者もそうですが、そういう人たちのために何かをしなければという思いは必ずある。でも日常生活に追われて動き出すことはできない。本気になって動き出せば、誰かがどこかで同様の動きをしてくれるかもしれない。それでは実際に形にしてみようと仲間たちと立ちあげたのが、今の道南福祉ねっとにつながっています」(成田理事長)。
■地域の方が開催してくれた支援パーティーの一コマ |
最初に具体化を目指したのが、現在、『あかまつ公園(七飯町総合公園)』となっている国道5号線沿いでの計画でした。当時は道所有の原野だった同地に中心市街地法なども利用して、七飯町になかった一定規模の商業施設を核店舗として誘致、散策路などを配置し、そこに当事者の施設も設けようという計画でした。実現化委員会もつくられた一大プロジェクトでしたが、補助を期待していた法律が変わったことなどから頓挫してしまいました。
このプロジェクトの頓挫でも諦めることはなく、実現できなかった七飯町で最初に当事者の施設を実現しようとの決意で平成12年4月にオープンしたのが共働作業所『ToMoハウス』でした。平成15年10月には、『七飯地域福祉ねっと』として、社会福祉法人格を取得。同年11月には、小規模通所授産施設共働作業所『ToMoハウス』を開所しました。
誰もが地域の中で生きられる社会づくりを目標に、どんな人でも受け入れるという作業所でしたが、利用する当事者は、入所施設や実家で暮らす人がほとんど。食事などの面で誰かのサポートを必要としました。
そのため自立した生活を営むグループホームの設置を計画、平成18年3月、知的障害者地域生活援助事業『グループホームすみれ』が開所。就労支援事業、共同生活援助、共同生活介護、短期入所、相談支援等の事業所を開設し、法人名も「道南福祉ねっと」へ変更。現在、本年12月の開所を予定する新しい『グループホームすみれ』も加えて、七飯町に18施設。北斗市に1施設。森町に6施設があり、160名が利用。職員は90名を数えます。
道南福祉ねっとの事業と対象者
『道南福祉ねっと』の事業は、相談支援事業(計画・地域・障害児・基本)、地域生活支援事業、生活介護事業、就労支援事業(就労移行支援・就労継続支援B型)、共同生活援助事業(空床利用型ショートステイ)があります。
また、サービス対象者は、身体、知的、精神の障害当事者に限りません。発達障害者、てんかん患者、難病患者、累犯触法障害当事者を含め、弱い立場の人たちを支援しています。では、具体的にどのような人が、サービスを受けられるのでしょうか。
「もちろん障害者手帳をお持ちの方は利用できます。また、この手帳をお持ちではなくても、心療内科や精神科等へ通院していることを証明する医療費受給者証をお持ちの方。このほかに難病患者として特定疾患を医療機関が証明した方も対象です。障害福祉サービス受給者証の障害支援区分で受けられるサービスが決まりますが、当社会福祉法人と個別契約をしていただきご利用が可能です」と話す成田理事長は、さらに「原則18歳以上となりますが、養護学校等に通われている児童でも、親御さんが困っているので寝泊まりだけもという利用も可能です。お子さんが医療費受給者証や障害者手帳をお持ちなら、ショートステイは1歳の幼児でも利用できます。特別なケース以外は、障害があれば利用できるといえます」と説明しています。
また、サービスを受ける人の居住先も限定されていません。居住地特例により、最初にサービスを受けた時の住民票に記載された自治体が、その後もサポートします。それは七飯町の『道南福祉ねっと』のサービスを受けるのも同様です。
変わらぬ理念と着実な歩み
規制緩和により、地域生活や生活介護、就労支援などを行う事業所は全国的に急増し、小規模な事業所だけでも全国で1万2000以上の事業者数を数えるといわれます。それだけの事業者がいれば、当事者など社会的弱者への支援体制は十分ではないのかと思われますが、『ソーシャル・インクルージョン』の理念が社会に反映されているという現状ではありません。なぜなら、支援を必要としている人を受け入れない事業者もいるからです。
他の事業者が受け入れを断った利用者を『道南福祉ねっと』が引き受けているケースは度々あります。「一人の人を支えるためにはリスクを背負う。何かを成し遂げる時には当然批判もあります。行政機関も当社会福祉法人を認知し出したのは最近のこと」と、変わらぬ理念で着実に歩んできた『道南福祉ねっと』でさえ、その存在が認知されてきたのは、ようやく最近になってからとの現状を語ります。
それでも成田理事長は、「どんな人でも育った地域で安心して、ゆったりと暮らせる社会をつくるという理念は変わりません」と、『道南福祉ねっと』が掲げる理念を繰り返し強調しました。
社会福祉法人 道南福祉ねっと
七飯町本町4丁目20番2号 TEL 0138-86-7118