特集22 一般内科から血液透析・腹膜透析まで「腎臓病」の専門医に聞く

toku_080620_nehuroclinic_doc五稜郭ネフロクリニック 鈴木 勝雄 院長
函館市本通1丁目7番20号 TEL 0138-31-1717

toku_080620_nehuroclinic_012008年4月1日、本通の五稜郭循環器科泌尿器科跡に「五稜郭ネフロクリニック」が開院した。
腎臓病を中心に診療しているとのことだが、そもそもの開院したきっかけや腎臓病の治療についてなどを鈴木勝雄院長に聞いた。


「メディカルページ平成20年度版」(平成20年6月20日発行)の冊子に掲載された記事です。※院名や役職、また内容についても取材時のまま表記しています。

toku_080620_nehuroclinic_02まず、鈴木先生がここに開院なさったいきさつを教えてください。

私は五稜郭病院で腎臓病を専門に10年勤めていました。もともと五稜郭病院には腎臓病の患者さんが集中する傾向にあったのですが、市立函館病院が腎臓病の診療をやめてしまったこともあり、ますます五稜郭病院に患者さんが集中してしまいました。
そうなってくると、1人1人の患者さんに割ける時間が減ってきます。本当は患者さんに病状や治療方針を説明するのに時間がかかる診療科なのですが、それが大変になってきました。それ以前からも、安定期に患者さんを受け入れられる開業医が必要だと思っていたので、私がサポート側に回って分業をしたら良いのではと思い開業したというわけです。

診療科目はやはり腎臓病ですか?

そうですね。腎臓病中心ですが、もともとは循環器内科をしていたので、糖尿病・高血圧・狭心症・心不全などの循環器疾患も診療します。
また、ここの近辺にはあまり内科のクリニックがないため、ご近所のクリニックとして来院されても構いません。時々『風邪とかでも診てくれますか?』と問い合わせの電話がありますが、どうぞお気軽に受診してください。

腎臓病についてお伺いしたいと思います。腎臓病にはどんな症状がありますか?

蛋白尿、血尿が入口ですね。健康診断で見つかることが多いと思います。ですが、検査に引っかかっただけで他に症状がないということで放っておく方が多いようです。
確かに以前は病院にかかっても経過を見るだけということが多かったのですが、最近では慢性腎炎の一部は治療が可能となりました。元気だからといって放置せず、一度専門医にかかってもらいたいですね。

健康診断を受けない自営業者や主婦の方は蛋白尿や血尿に気付かないと思いますが。

そういう方々の場合、一番最初に気付く症状はむくみです。慢性腎炎の発症には、年代や性別、生活習慣は関係ありません。誰にでも起こりえます。このむくみに気付かずにさらに病気が進行すると、慢性腎不全になります。こうなると、疲れやすくなったり、だるさを感じたり、息切れがするようになります。しかしながら腎臓が原因だと分からず、他の病院・他の診療科を受診してから紹介されてくる患者さんが多いですね。慢性腎不全を根本から治す治療法はまだありませんが、きちんとした血圧管理を行いながら、きちんとした食餌療法を行うことで、進行を止めたり遅らせたりすることは可能です。少しでも早期に治療を開始できるよう、自分の身体の変化には注意をはらっていただきたいと思います。

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腎臓病に注意すべき人はいますが?

糖尿病の合併症として腎臓が悪くなる方が増えています。糖尿病の治療として血糖や血圧のコントロールさえしていれば良いという考えが病院にもあって、腎臓は大丈夫だと考えているうちに悪くなってしまうというケースがあります。早期に腎臓専門医に診せることで食餌療法も可能ですが、そのできることをしないでただ悪くなってしまうのは患者さんにとって不利益なことです。ですから、検査をして蛋白尿があった時はぜひ腎臓専門医も受診してもらいたいと思います。

腎臓病が悪くなってしまうと、結局は透析しかないのでしょうか?

慢性腎不全は進行性で、弱った腎臓が復活することはありません。腎移植を受けない限りは、透析しかありません。だからこそ、慢性腎不全に移行させない、慢性腎不全を進行させない努力が必要なのです。

toku_080620_nehuroclinic_04透析というと病院で行うものと思っていましたが、自宅でできる腹膜透析というものがあるそうですね。

腹膜透析は、おなかの中に手術で埋め込んだカテーテルと呼ばれる管を介して透析液を出し入れすることで行う透析療法です。血液透析に比べしくみが簡単なので、自宅や職場で、自分自身で行うことができます。また、腎臓に優しいのが特徴の一つで、透析が始まった後でも残っている腎臓の働き(残腎機能)を長持ちさせることが可能です。血液透析を行うと残腎機能は急激に弱っていきますが、透析生活のはじめの時期を腹膜透析で開始すると長期にわたり尿量が得られることが多く、水分や食事の制限が緩いまま長期間過ごせる例が少なくありません。通院も月に1~2回で済み、時間の制約も少ないことから、「まず最初の透析」として腹膜透析をお勧めしています。
ただ残念ながら腹膜透析に苦手意識を持っている医師・看護師がまだまだ多いため血液透析に比べ普及率が低く、日本の透析患者26万人のうち、腹膜透析を行っているのはわずか1万人です。ですが、五稜郭病院でも患者さんにきちんと説明をすると約3割の方は腹膜透析を選択されます。知っていて選ばないのは患者さんの自由ですが、知らせずに『知っていたらやりたかった』と言われるのは医療者として残念なことです。ですから当院ではきちんとした説明をして、患者さんに選択してもらうようにしています。

「当院では、旧函館市内まではバス送迎も行っており、介護士が同乗しています。何かの時には手助けになるので、好評をいただいています」と鈴木先生は最後に病院のアピールをしてくれた。
「むくみ」という一見わかりにくい症状が腎臓病の一歩かもしれないとのことで、特に定期的に検診を受けていない人は用心したほうが良さそうだ。五稜郭ネフロクリニックは普通の内科診療も行っているので、気になる方は気軽に来院して相談していただきたい。

 


五稜郭ネフロクリニック
函館市本通1丁目7番20号 TEL 0138-31-1717
■休診日 日曜・祝日 ■駐車場24台(当院前)
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