「治療用食品・介護用食品」─取材レポート/その1 新しい食文化を提案する食品総合商社(株)アキヤマ
株式会社アキヤマ 業務用食材・資材・機器専門商社
北斗市東前3-41 TEL 0138-77-7491
業務用食材の卸問屋として有名な(株)アキヤマが、介護食や特定の疾患を持つ人向けの食品の小売を行って好評を得ているという。 どんな食品がありどんな人のためのものなのか話を聞いた。 |
●小林久周(ひさかね)社長 |
(株)アキヤマは東京出身の先代社長が函館で創業した食品問屋だ。戦後間もない頃に函館をたびたび訪れていた先代社長は、函館に来るたびに甘味料の手配を頼まれ、列車に乗っては甘味料を運んできたという。そうしたことを続けるうちに「道南には物が不足している」と感じた先代社長は商売としての可能性を感じ、昭和26年に製菓・製パンの卸問屋として現在の(株)アキヤマを設立した。その後は外食産業向け食品や学校給食用食品も取り扱うようになり、総合食品卸問屋として函館・道南域の食を支えている。
そんな(株)アキヤマが注目したのは今後の高齢化社会だ。人口が減り、高齢者や病気を持つ人が今後は増えていく。そうした時に求められるのは、家庭で食べられる治療食や介護食である。こうしたニーズに応えるため、平成15年に全国病院用食材卸売業協同組合員となり、治療用食品・介護用食品の取り扱いと小売を開始した。
当初は本社併設店舗の一角に置かれただけだったが、反響が大きく、今では売り場の4分の1を占めるまでになっているという。特に病院を退院してからまとめ買いしに来る患者さんが多く、1度に数万円購入することもしばしばとのことだ。「その金額を少しでも減らし、早く良くなってもらうために今後は栄養指導も行っていけるようにしたい」と小林久周(ひさかね)社長は話す。
実際にどんな商品がよく買われているかを担当の根本琢己課長に聞いた。
「腎臓病の方のためのタンパク調整食品が売れています。レンジで温めるご飯とレトルト惣菜がよく出ています。腎臓病の方がこれを摂取することで、人工透析を遅らせることができます。
通信販売などでは同じものを大量に買わなければなりませんが、ここではバラで買うことができるため、いろいろな味のおかずを買うことができ、喜ばれています。これによって飽きずに食餌制限をすることができます」。
その中でも特に売れているのは、やはり主食のご飯だという。腎臓病ではタンパク制限があるため、普通の白米ではほんの少ししか食べられない。当然おかずも制限される。だがそれを低タンパクのご飯に替えることにより、ご飯も普通の量食べることができ、おかずも減らさずに食べることができるのだ。このため、腎臓病の人がご飯だけ低タンパクのものにしておかずは家族と同じものを食べるということも可能になるとのことだ。
高齢者のためのトロミ調整剤もよく出る商品だという。
「高齢者は飲み込む力が弱るため、誤嚥(ごえん~間違って飲食物を器官に入れること)が起きやすくなります。トロミ調整剤は飲み物にトロミを付けることによって、口にしてから一呼吸置いて飲み込むことで誤嚥を防ぐものです」。
実際にトロミ調整剤を見せてもらったが、水に少量を入れるだけでかなりのトロミが生まれる。
穀物の粉やガムの原料になる物質などが原料とのことで、無味無臭だ。誤嚥は一歩間違えば命の危険にもつながるため、トロミ調整剤は重要な介護食と言える。
このほか高齢者向けの食品としては、高タンパク食品・高カロリー食品・微量栄養素補給食品も用意されている。これは食が細くなっても必要な栄養を摂取できるようにと開発された食品だ。
さらに糖尿病患者のための低カロリー食品や甘味料も重要なラインナップの一つだ。肥満気味のお客さんがこうした食品を買い求めに来るケースもしばしばだという。加えて、貧血の人のための鉄分強化食品、産後の人や骨粗しょう症の人のためのカルシウム強化食品といった機能食もここで購入することができる。
最近は介護施設や病院の栄養士の方から紹介を受けたり、病院で患者さん同士が意見交換したりするなどして治療用食品・介護用食品の存在を知り、買いに訪れる人が増えているそうだ。
●店内陳列商品/試食コーナー