病院の移転新築予定の高橋病院
医療と介護でさらなる地域貢献
●社会医療法人 高橋病院 ●社会福祉法人 函館元町会 ●一般社団法人 元町会 高 橋 肇 理事長
函館市元町32番18号 TEL0138-23-7221
1894年(明治27年)、函館市西川町(現在の豊川町)に開院した高橋米治医院に始まる社会医療法人 高橋病院は、明治・大正・昭和・平成の時代を超え、創立125年の本年、令和の新しい歴史の1ページを加える。高橋肇理事長に計画を進める病院の新設移転とともに社会福祉法人と一般社団法人により医療と介護の両面から地域に貢献する高橋病院グループの展望を語ってもらった。
「メディカルページ函館・道南版2019年夏号」(令和元年6月10日発行)の冊子に掲載された記事です。 こちらもご覧ください。 |
先生が高橋病院に戻られてからの展開を教えてください。
私が高橋病院に戻ってきたとき、函館には急性期の病院が全国平均の2倍ありました。また、高橋病院の立地する西部地区の高齢化率も全国の数十年先をいくものでした。そこで、どこも手がけていない回復期リハビリテーション病棟を道南で初めて立ちあげました。
様々な類型の病院が機能分化する中で、効率化や情報の共有を目的に電子カルテやITネットワークをツールとして用いてきた方向は正しいと思っています。
施設は基本的には人材がいなければつくらないという方針で進めて、それで施設系は平成18年に1回中断して、その代わり、訪問リハビリや訪問診療など小さな事業所で、マンパワーがある程度確保できるものを手掛けてきました。地方に出向いて地域リハを行政、自治体と一緒に展開したいとも考えています。今、70名余いるセラピストも、そのためにはあと10名は必要だと思っています。出向いていくことが地域に対して何らかの貢献にもなるでしょうし、当院では先々代から檜山地方も含めて往診や訪問診療を行っていたので、原点に戻りつつあるのかなとも思っています。
新元号の令和が発表された4月1日に湯の川クリニックを開院されました。
急性期病院や在宅からリハビリのために患者さんが当院に来ます。入院中は問題ありませんが、立地的に半径3㎞のエリア内の多くが山と海で、デマンドバスでの利用者の方や入院の方のご家族を送迎には、限界があります。また、スタッフにとっても不便な立地です。そこで設けたのが大縄町のなでしこ(小規模多機能ホーム等)。今度は湯の川の方まで半径を広げたのが湯の川クリニックです。
加えて、湯の川で診療所を手掛けたもうひとつの理由は、病院の新築計画です。景観条例で高さ制限もあり、本格的にやるには移転しかない。スタッフには土地が決まったら移転すると話しています。新病院が完成した時には、この場所にクリニックを残す予定です。育ててもらった心の中心として最低でもクリニックは置きたい。湯の川クリニックの開院は診療所運営のノウハウを予習する目的もあります。
移転の際には介護療養病棟から介護医療院へ転換して、新病院は119床プラス介護医療院60床という形で、患者さんだけでなく、ご家族の方にもアメニティ、療養環境を提供しなければならないと思っています。
人生100年時代で、急性期の“Life”は生命、命を救うことを意味しますが、私たちの“Life”は生活であり、このあたりを一生懸命考えて、人生に少しタッチ出来ればいいと願っています。
新病院は医療の時代変化に対応しているのですね。
超高齢社会では従来型の医療行為に馴染まない時代に突入しています。医療の世界では病んだ臓器の完全治癒まで望んでしまう傾向にありますが、年齢に即したほどほどの医療にしなければ、からだの内外の均衡がとれなくなって生活復帰が叶わなくなる場合があります。命を救い病気を治すのが名医ならば、リハビリ病院である私たちは患者さんの生活、人生を支えていけるような信頼される良医になろうと心掛けています。
そうすることにより、今後広まるであろうACP※に活きると思っています。
少子高齢化が進むなかでマンパワーに対する考えは?
若い人たちがどんどん少なくなる。1人1人の生産性をあげるにも限界があり、ITやロボット、IoTやAIを使わざるをえないと思います。医療界でも労働力不足だからこそテクノロジーを受け入れる余地が経営者に出てきたのかとも思います。
医療や介護業界のスタッフの職場をどうやって魅力的なものにするか、仕事や業務のシェアリング(分担)、シフティング(移管)も課題です。
高齢者だけではなく、人間はいくつになっても人の役に立ちたいという気持ちがあります。高齢者は見守られる側だけにいるのではなく、その残存能力を地域の人たちと一緒に使って欲しい。当法人で経営している介護老人保健施設では“介護助手”という名称で活躍してもらっています。
また、職員の満足も重視しなければなりません。一般的にこの業界での離職の大きな理由は、人手不足による業務多忙、給与面、職員同士のコミュニケーションの行き違いと言われていますが、一番の問題はコミュニケーションと考えています。
いま職員が500人ほどですが、毎年2回人事異動希望調査と他部署への見学希望を取り入れています。他職員には見られないように理事長である私宛てに封書で送ってもらい、異動希望の場合は法人業務管理室、所属長と本人、場合によっては所属長なしで話し合うという流れです。大体7~8割くらいの異動希望が叶い、離職率も減って、適材適所が図られるようになりました。
メンタルヘルスも専従の者がいて、新人は1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、1年と定期的に必ず面談します。本人の希望があれば私も異動希望調査の都度、毎回30~40人程度と数回にわたって面談しています。面談で現場の状況が分かりますし、人を大事に育てることが管理者としての責任だと思っています。
新病院の展望
函館は人口減少に歯止めが効かず2050年には10万人くらいになるともいわれ、高齢者も2040年をピークに減少するとかなりの病院や施設は必要なくなると言われています。
最終的には、お互いの長所を伸ばし、短所を補う機能を持つ施設同士がひとつの集合体となる地域医療連携推進法人になっていくという可能性もあると思います。
新病院は、他病院とは一味違った斬新なものにしようと思います。いざ自分がリハビリを受ける、あるいは入院するといった際に選択されるよう、アイディアをみんなで一緒に考えていくことを始めています。
奇抜なものをつくるつもりはないのですが、心が癒される病院にしたいと思っています。ごく一例ですが、動物フロアや、温かいクアハウス、バーカウンターなどがあってもいい。
いずれにせよ、生活、人生に関わる大切な時間を、居心地のいい空間でどう過ごせるかと思っています。
※ACP(Advance Care Planning :アドバンス・ケア・プランニング):将来の変化に備え、医療及びケアについて、本人を主体にその家族や近しい人、医療・ケアチームが繰り返し話し合いを行い、本人の意思決定を支援するプロセスのこと。希望に沿った将来の医療及びケアを具体化することが目標。2018年11月30日(いい看取り、看取られ)に厚生労働省が愛称を「人生会議」と決定した。
(取材日:2019年4月1日)
高橋病院
函館市元町32番18号 TEL0138-23-7221
■休診日:日曜・祝日・12月30日~1月3日
・7月13日(午前のみの診療)・8月13日
■駐車場:30台
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