医療用ウィッグの相談はお気に入りの髪型の時に

ウィッグ選びの一番のポイントは髪の長さ

株式会社Passage代表 久末 智光
美容室パサージュ 函館市石川町350番地21 TEL.0138‐46‐8023㈹ https://www.passage1987.net/

抗がん治療の副作用で抜け毛に悩む人には医療用ウィッグが心強い味方になってくれる。㈱Passage代表の久末智光氏は、石川町の美容室パサージュで、販売だけでなく、治療中の髪の量に合わせた調整など、医療用ウィッグの専門家として10年以上のキャリアをお持ちです。久末代表に医療ウィッグを相談する時のタイミングや選び方などについてお話をお聞きしました。


「メディカルページ函館・道南版2018年冬号」(平成30年11月1日発行)の冊子に掲載された記事です。

 

■久末智光代表

おしゃれ用のウィッグと医療用ウィッグは違うのですか?

おしゃれ用は、カールの仕方も分け目も出来あがってスタイルが決まっています。でも、スタイルが決まっていますから、抗がん治療の方が被ると、取ってつけたようなイメージになり不向きだと思います。
抗がん治療の副作用で抜け毛が起こるのでウィッグを使う方は、基本的にはウィッグを使っていると思われたくない。以前と同じ髪型で、治療を受けていることを知られたくないという思いが強いんです。

治療中に脱毛しても、治療後には再び髪が伸びてきますね。

そうした変化を回りに意識させないためには、髪の量の変化に対応した調整が必要です。
抗がん治療が始まる時には、髪が抜けるから短くした方がいいと思われる方もいて、肩下くらいまでの髪を肩上くらいまで短くする人もいます。
確かに抜けた毛をちゃんと落とさないと毛先に残って、寝ている時に絡まり、ほどけなくなってしまうこともあります。また、抜けるのが恐いから洗いたくないという心理が働いたりもします。でも、抜けるべき毛を落としていないためで、ウィッグを扱っている側にすれば、髪が長くても短くても抜けるのは一緒。ただ、処理の仕方が違うだけです。

では、いつ相談すれば良いのでしょうか?

治療による抜け毛が始まる前、その方がされていたスタイルが原点ですから、ご自分が今一番気に入っている髪型の時にご相談に来られるのがベストだと思います。
脱毛されてから来られると、もとのヘアスタイルが分からないので、スマホに入っているご自分の写真を見せていただいて、イメージして作ることになります。
もとのヘアスタイルが分かって、初めてアレンジが出来ます。特にロングのヘアスタイルのウィッグでは、治療中に長い髪をわずらわしく感じられることもあります。その時には少しカットしてあげるとか、スタイルチェンジができます。スタイルは、人それぞれで本当に難しいのですが、やはりもともとのヘアスタイルから作った医療用ウィッグでしたら、短くしても、ご本人も納得できます。

もとのヘアスタイルがロングの方と逆にショートの方ではウィッグも異なるのですか?

■ロングのヘアスタイルは人毛100%(左)、ショートはミックス(右)の医療用ウィッグが向いている

医療用ウィッグには、長いヘアスタイルと短いヘアスタイルでは、向き不向きがあります。
人毛100%のウィッグは、毛の長さがすべて襟足から30センチの長さで植えているので、ロングの方向きです。余計なボリュームも出ないし、毛先の処理もきれいにできます。
長いと毛の重みがあってまっすぐになるんですが、短くすると毛が軽いので、人毛本来のうねりが出てしまいます。ですから短くすると扱いにくくなるんです。
人毛と化繊のミックスのウィッグは、ある程度のミディアムロングまでは作れますが、本来はそれよりも短いスタイルに向いています。もともとミックスのウィッグは、人毛100%のものより毛の長さが10センチ短い20センチで、ベースそのものにロングのものはありません。

あくまでも髪の長さがウィッグを選ぶときの基本になるのですね。

■石川町の美容室パサージュには相談しやすい個室(下)もある

そうです。髪の長さとスタイルによって選び方も変ります。
ご高齢の方は、値段が高い人毛のものが一番いいと思われる。でも、ご本人の髪型はショートというのでは本当は無理なんです。毎回ブローしたり巻いたりしなくてはいけません。人毛には人毛の、ミックスにはミックスの良さがあることを説明して、お客さまに選択してもらっています。
髪の長い方は、脱毛が終わり、もとの長さまで伸びるのに時間がかかります。でも、ずっとウィッグを付けているかというとそうでもないんです。長いスタイルの方は、もともと短くしたことがないことが多いんです。家に帰ってウィッグを取り、短い毛の自分を毎日見ている内にショートに目が慣れてきて、前と同じくらい伸びる前に、もうウィッグを取っていいかなと思えるようになる。ですから、もとの長さまで伸びる前にウィッグを外してデビューする人が多いんです。

治療が終わったという安心感もあるのでしょうね。

そうですね。治療が終わって、あとは髪が伸びるのを待つだけという気持ちなので、そういう切り替えもできると思います。
最初は病気自体を受け入れることが難しいので、それを切り替えて自分はこうするという意思は、治療中は特に出ないと思います。
治療が終わったという安心感もあり、客観的に自分の短い髪を毎日見ても気にならなくなって、ウィッグを外される。
でも、実際に抗がん治療の経験がない僕は、お客さまからお話を聞いて分かることで、最初の頃は予測して説明もできませんでした。
髪が肩下まであった方が首くらいまで短く切って、脱毛が始まりウィッグを作りに来たときに、ロングのウィッグを付けられて、これが自分の姿だ、髪を切らなければよかったと思われたそうです。
特にお仕事をされている方は、短くしてからも会社に行かれるので、もとのようなロングのウィッグでは、会社に行けない。
医療用ウィッグを考えられたら、やはり、ご自分が今一番気に入っている髪型の時にご相談に来て欲しいですね。

(取材日:平成30年10月11日)


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