《英語診療事始》We can serve patients who speak English~英語を話す患者様も診療できます~①

※外国人の患者さんを英語で診療している五稜郭みやざき勢内科クリニック院長 宮崎 勢先生のコラムです。
青字表記の英語の正しい発音は翻訳アプリでご確認ください。

 なぜ英語で診療するようになったのか

開業して2年くらいしてから、イングリッシュスピーカーの患者さんが来るようになって、それなりの話は出来たんですが、診療ですから疾患に関する事で普通の会話ではない。それで英会話スクールに1年間通いしました。 それから米国人の友人たちと話してトレーニングを積んでいくうちに段々外国人の患者さんが増えて来て、こういうふうにいわなければ分からないんだと、患者さんからも習いました。

フランス人の患者さんが来ても英語でコミュニケーションします。フランスの方はフランスの英語だし、ドイツの方はドイツの英語、イングランドの方が来ると、また全然違う。同じイングリッシュでも全然違うんです。 シンガポールの人が話す英語をシングリッシュといいますが、日本人はジャパニッシュ。僕の英語もジャパーニーズイングリッシュ。でも、彼らは理解してコミュニケーションを取れます。

ただ、専門用語を使ってはいけません。 患者さんは医学の専門用語はまったく分かりません。日本人だって専門用語をいっても分かりません。外国人の患者さんも、医療界に勤めている人ではなく、本当に普通の人たち。平易な英語で話してあげないと、全然分かってくれません。

日本人はテレビが好きですから、みなさん医療番組から情報を得ています。僕はヨーロッパに行ったことが無いので分かりませんが、少なくともアメリカに行ってテレビを見ても、日本のような医療番組はまったく放送していませんから情報が無いんです。 心筋梗塞は英語でmyocardial infarction(マイカルディアル・インファークシャン)といいますが、分かる人は、まずいません。単純にheart attack(ハァーアタック)というと分かってくれる。

脳梗塞もcerebral infarction(サリーブラル・インファークシャン)といっても、「何の事」って、最初は通じませんでした。脳梗塞はstroke(ストローゥク)といえばすぐ理解してくれる。医学の本に載っている英語を話してみても、全然通じません。 時々、皮膚炎を起こしてくる外国人の患者さんがいらっしゃいますが、彼らは蕁麻疹もアトピー性皮膚炎も一緒くたんなんです。蕁麻疹は英語でnettle rash(ネトル・ラッシュ)というんですが、そういっても全然分からない。彼らは皮膚炎といったら全部eczema(エグゼマ)というひとくくり。全部eczemaといってしまう。皮膚炎の中には、たくさん種類があるんですが、それを説明しても分からないんです。

厚労省を始め、医療機関でも英語対応の問診票のサンプルを作っています。こういうもので、ほとんど分かるとは思うんですが、たとえば「Loss of appetite(ロス・アパタイト=食欲がない)」というのは、まず通じませんね。「Easily fatigued(イージリィ・ファティグド=疲れやすい)」というのも、分かるようだが通じない。「Lack of energy(ラック・オブ・エナジー=だるい)」の方がいいかもしれない。

当クリニックには、外国人の方で鬱病の患者さんも不安症の患者さんも来ますが、問診票に書かれているような単語では、まったくだめというのがたくさんあります。僕は相手が分からないなと思ったら、英語の電子辞書をみせてあげるんですが、それでも分からない、聞いたことがないといわれることも多いんです。

アメリカに何年も留学していても、医師として働くことはできませんから、実際に患者さんを診ることはありません。フランスは別だったと思いますが、アメリカでは日本の医師免許があっても医療行為はできない。研究施設での英語だけなので、患者さんと接触することがない。

英語で患者さんを診る時、一番大切なことは、相手の目をきちんと見て、分からないこと、聞き取れなかったことは必ず「Pardon(パードン=すいません)」。知ったかぶりするんじゃなくて、「ちょっと今聞き取れなかったんだけれども」とかいって聞き直す。あいまいな表現まま診察を続けていくのは良くないです。

僕が一番苦労したのはカナダ人の潰瘍性大腸炎の患者さんでした。20年も前のことなので、いいお薬がなかった。良くなったり悪くなったりの繰り返し。潰瘍性大腸炎は慢性の病気なので、定期的にいらっしゃって、その都度説明するんです。そうしている内に診る事自体が面倒くさくなってしまう。その時の経験から、常に真摯に患者さんに向き合うことが大事だと思いました。その患者さんは元気になってカナダに帰りました。

実は、無理して英語で話す必要はないとも僕は思っているんです。外国の方でも、旅行で一ヵ月だけ日本を旅しているという人は別かも知れないけれども、日本に1年とか2年住んでいるという人には、「どれくらい日本語を話せますか」と、まず英語で聞いておくんです。相手が「a little(ア・リトル=少し)」といったら本当に話せない。「大丈夫」と日本語で答えたら、英語で話さなくても分かると思うんです。

日本語でコミュニケーション出来ることが分かったら、いろいろ話していきますが、その中でどうしても医学用語を話さなければならないことがある。でも、彼らは普通の日本語は分かるけれども、日本の医学用語は分からないので、そこで初めて英語のメディカルターム、要するに医学用語を話します。でも、そこでも専門用語を使ってはいけない。

ですから彼らが日常使う疾患の英語を覚えておかないとだめなんですね。 たとえば結膜炎は英語でconjunctivitis(カンジャンクティバィス)といいますが、普通はpink eye(ピンク・アイ)といっている。そういうような単語をひとつひとつ覚えておかないと通じないですね。

外国人の患者さんで一番多いのはUSA。その次はカナダ。イングランド、オーストラリアという方もいます。 ヨットで世界を回っている時に血圧の薬がなくなったとお二人のフランス人が来られたこともあります。フランス人はフランス語に物凄い誇りがあるので、英語なんてという感じなんですが、僕はフランス語は分からないし、お互い変な英語で話して、それでもそれなりに通じるんです。分からなかったら、必ず聞き返す。別な表現でお願い出来ますかとかということが大事だと思いますね。

僕はカナダから来た方の英語は非常によく分かるんですが、アメリカの英語は物凄く難しい。カナダの英語はかなり早口でいわれても理解できるんですが、アメリカ人の英語は分かりにくい。RとLの違いだけじゃなく、単語がずっと続いているみたいなんです。逆にカナダの英語はフレーズごとに離して話すんですね。 先日来られたのはジャマイカの女性の方でしたが、非常に分かりやすい英語でしたね。

大切なことは医学専門用語は使わない。それと分からないことは素直に分からないと話す。ひと言「Pardonでいいんです。Pardonの連発になるかもしれませんが、それはそれでしょうがない。 向こうは困って来ているわけだから、真摯に向き合ってあげること。言語は黙っていては通じません。僕らの話す英語は間違っていて当たり前なんです。文法的に間違っていたって、どうってことはない。でも、会話が途切れてしまうと、次が続かなくなってしまうので、しーんとした時間が1分でも続くと大変です。会話が途切れないようにドクターの方から話を持って行ってあげなければなりません。 

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