第19回 「自分で出来る腰痛対策」

toyo_doc「東洋医学的 健康針断」では、年4回、益井東洋治療院の益井院長が、現代西洋医学とは、少し視点を変えて診た「体や健康」についてのお話をしていきます。お気軽にお読みください。
<東洋医学的 健康針断>

コラム寄稿:益井 基 院長
(益井東洋治療院)


皆さん、こんにちは。2012年、新しい年となり最初の「健康針断」になります。
今年もどうぞよろしくお願いします。

本当に月日の経つのは早いもので、私が治療院を開業して、今年で26年目となりました。
長年にわたり一貫して「患者さんを治療する」と言う事を基本的なスタンスに、日々、考え続けてまいりましたが、ここのところ「治す」と言う事は、私ら治療サイドだけでは難しく感じるケースが大変に増えて来ている印象を強く感じております。たとえば腰痛が「治らない」、「すっきりとしない」など、症状を長引かせるいくつかの要素として「体の問題」「心の問題」「社会状況や環境からの様々なストレス」「生活習慣の変化」などの要因があると私は考えます。

「体の問題」は治療側の努力で改善させることができる部分ですが、それ以外の問題では、患者さんの努力が必要な範囲でありまして、ここの問題が大きく締めている症例が非常に増えてきていると思います。
今回は、「体の問題」以外で、患者さん本人が努力したり、変えたりすることで「腰痛を改善させる」重要なポイントをお話しさせて頂きます。

●腰痛の85%は原因が分からないのを知っていましたか?

腰痛の原因となっているものの多くは、腰の筋肉や骨・関節にあると考えられていますが、整形外科で診察や検査をしても明らかに異常が認められず、原因を特定できないということが多くあります。
皆さんも「検査したけど特に異状がないので薬を飲んで様子を見てください」と言われたご経験があるのではないでしょうか?しかしこれは西洋医学的な検査の結果として出る原因が分からないという話で、東洋医学的な視点からの症状に対する原因としては、多くの状態で説明することは可能であります。痛みのある部分を局所的にだけ診ても原因としてわからないことが多く、全身的を診ることが痛みの本質を知る上で必要なことと思います。
これは人として全身を診る東洋医学の得意とするところであります。

●痛みがあるうちから身体を動かすことの重要性

ここで一つ「痛み」を治療していくうえで知っておかなければいけない重要な事があります。
それは腰痛が起きた場合、早いうちから身体を動かしていくことが、痛みを改善したり、腰の機能を保つ上で非常に重要であるということです。
少し前までは、痛みがあると安静にして体に無理をかけないようにしておかなければいけなかったのですが、最近では真逆のことが推奨されています。ところが早めに体を動かしていても「心や社会状況・環境の問題」があると、痛みが長引きやすくなる事が分かってきました。

「心」~一般的に患者さんが痛みを訴えますと、周りの人は心配してその患者さんには優しく接します。
この回りからの優しさは、心地よい反面、痛みが治まればもう優しくしてもらえなくなるのではと、心の問題が生じやすく、不用意に安静状態を長くしてしまいがちであります。それにより筋力が低下したり、代謝が悪くなったりと、かえって腰痛が悪化してしまうのです。

「社会状況・環境」~自分が仕事を休んでも任せられる人がいる・経済的な保証があるなど、安心して休んでいれる環境にある場合も、安静にしている期間が長くなり、結果的に腰痛が長引いてしまいます。少々、痛みを感じても出来る範囲でいつもの生活を続けましょう。

●脳を鍛える運動をしよう

腰痛対策として腹筋や背筋を鍛えるトレーニングを行うのは一般的に効果があり、皆さんも知るところだと思います。しかし「心や社会状況・環境からのストレス」が要因となり、慢性化している腰痛には、「脳を鍛える運動」を行う事が、腰痛を改善させるという事が分かってきました。

慢性化した痛みと脳の関係をご説明します。
痛みを感じている人は身体を動かすことに強い不安感や恐怖を持っており、多くの人はあまり動かさない様にしているものです。しかし体を動かさないでいると、神経が過敏になり、かえって痛みを感じやすくなる「痛みの悪循環」に陥ってしまいます。

身体の神経は全身をくまなく巡り、脊髄を経由して脳に情報を伝えます。
身体をあまり動かさないでいると、神経からの痛みである「感覚情報」しか伝えられなくなり、脳に伝わる情報量が格段に減ってしまいます。すると、脳は感覚情報を探し出そうとして神経のアンテナを伸ばしたり、痛みを感じるセンサーを増やしたりして、どんどん神経が過敏になってしまい、痛みに対しての反応が強くなってきます。

このような悪循環を断ち切る為には、適度な運動を行う事により、脳に色々な刺激を送ることが重要となり、そうすることで痛みを感じにくくなってきます。

●脳に刺激を与える効果的な運動

■ウォーキング

良い姿勢で歩く事を意識して、無理のない範囲の時間(およそ15~20分くらい)・距離で、週に3回くらいは行ってください。

■ラジオ体操

体のどこを動かす体操なのかを意識して、一つ一つの動作を大きく踊って下さい。全身がくまなく動き、簡単で効果的であります。

■ゴルフボール回し

手に意識を集中させ、手のひらでゴルフボールを回してください。手の動きを支配している脳の領域はとても広いため、手に意識を集中して動かすことで脳の広い範囲を刺激します。

●「体の問題」は我々、施術者にお任せください。

全身の状態をきっちりと診察して、適切な施術を致します。
それ以外の問題は、前述のように患者さん自らが努力をして、改善への近道を進みましょう。
痛みはきっと改善いたします!