遠隔診療にも対応。糖尿病の専門医が患者に合わせた適切な医療を提供

 たかさわ糖尿病内科クリニック 高澤 宏文 院長
函館市港町1丁目11番18号 函館港町ビル3F TEL.0138-44-0100

国内は328万9,000人。厚生労働省が昨年3月に発表(2017年患者調査の概況)した糖尿病患者数は、前回調査(2014年)から12万3,000人増えて、過去最多になった。最初は無症状でも放置していると様々な合併症を引き起こす糖尿病。その診療に特化したクリニックが4月20日開院した。糖尿病専門医である高澤宏文院長に同クリニックの特徴と糖尿病についてのアドバイスをお願いした。


「メディカルページ函館・道南版2020年夏号」(令和2年7月14日発行)の冊子に掲載された記事です。

 

■高澤宏文 院長

糖尿病診療に特化したクリニックを開院された理由を教えてください。

僕は函館に来て6年目ですが、函館は糖尿病専門医が非常に少ないエリアで、糖尿病を院名に冠しているクリニックもありません。専門のスタッフも育てたいし、患者さんもしっかり診たい。そのために糖尿病に特化したクリニックを開院しました。

糖尿病の専門医の道を選ばれた理由は?

 僕はめちゃくちゃいい加減な人間で、よく医者になれたというくらい勉強嫌いです。 糖尿病は、患者さんの生活、食事、生き方という文化的な側面も表われます。 勉強しようと思ったら専門のサイエンスの本もある。でもサイエンスの要素だけでなく、カルチャーの面も大事と思っています。特に僕はカルチャーの方に興味があって、サイエンスとカルチャーのバランスを考えた糖尿病の専門医を目指しました。

福井県ご出身の先生が、どうして函館で開院されたのですか?

 臨床医として生きていこうと思ったときに、いろんな診療科の先生と仕事をしてきました。東京大学医学部附属病院の糖尿病代謝内科で診察に当たっていた時、各診療科に糖尿病の患者さんがいるので、一緒に診せてくださいと各科の先生にお願いしました。いろいろな診療科ごとに糖尿病管理をしたら、患者さんにどういういいこと、あるいは悪いことが起きるのかを知りたかったんです。ただ東大でも脳外科は少なくて、これだけはできませんでした。 たまたま函館新都市病院が内科の糖尿病医を募集しているということで、脳外科での糖尿病を勉強できるということでお世話になりました。
 東京では1000人くらいの患者さんを診ていて、東京での開業も考えたんですが、函館で多くの患者さんを診させていただいたことは、僕が人に誇れる財産であり、函館を開業の地に選んだ理由でもあります。

糖尿病を疑うような自覚症状はあるのでしょうか?

 糖尿病の場合、8割くらいの方は症状が出ません。教科書に書かれている症状としては痩せてくる。1カ月で体重が5キロぐらい落ちる。体がこわい、だるい。異常に汗をかく。眠れない。いつもの状態とは何か違うという変化は、大体血糖値が高いために起きることです。ただ、症状が出てからでは遅いんです。 また、年齢も関係ありません。
 意外に思うかも知れませんが、糖尿病患者さんが多い年代層は二十代後半。しかも、痩せている女性です。糖尿病の患者さんというと、太った中年の男性というイメージがあるかもしれませんが、調べてみると実は二十代後半の女性が多い。その原因まで入って行くことが、予防医学の面でも今後の課題だと思っています。
 健康診断を受けられる方は、三十代以降が多いんですが、もっと早い段階、たとえば義務教育の保健体育等の勉強で取り入れると、糖尿病に関する意識も少しは変わってくるのではないかと思います。 残念ながら学校健診では分かりません。尿検査でも血糖値は正常100mg/dl(ミリグラム・パー・デシリットル)ですが、200以上でなければ、おしっこに糖は出ません。ですから早期の診断にはなりません。

糖尿病以外の病気、たとえば風邪などの症状も診ていただけますか?

 もちろんです。また、クリニックでは、身長150cmで体重が150㎏というような方の肥満外来もやっています。 糖尿病は全身疾患です。心も病むし、男性ではEDや禿げもある。全身の疾患なので、いつの間にか総合診療科的な知識を学びました。勉強は嫌いですが、患者さんを目の前にして、いつの間にか勉強させていただきました。

クリニックでの遠隔(オンライン)診療について教えてください。

 クリニックでは、電子カルテと連携しているシステムを採用して遠隔診療をしています。ただ、遠隔診療システムを手掛けているほとんどの会社は、たとえば函館や診療体制が脆弱な無医村など各地域の特性については、まったく考えていません。 遠隔診療は医師を潰すための方法ではなくて、限られた医療資源を守ってくための道具だと思うんです。ですから将来的にはオリジナルの遠隔診療システムを構築したいと考えています。そのためには1人ではできないので、いろいろな医療機関の先生方のお力も必要です。

先生のご趣味を教えてください。

 趣味は町ブラです。町を歩くのが好きです。これは糖尿病を診る上で必要と考えている文化にもつながっています。どういうふうに生きていくと、より楽しいのか。より明るく生きられるのかというヒントが見えてくると思っています。 函館は食べ物が美味すぎる。あとは冬、雪が降って凍るというのが厄介ですね。
 冬には北海道など雪国の人は血糖値が上がります。でも、それで健康被害が出ているというデータや論文はひとつもない。ということは、冬は運動しなくても、血糖値がちょっと高くてもいいのではというのが僕の予想です。それもこのクリニックで調べたいと思っています。
 寒いと運動量も落ちます。都会の人ほど運動しているというデータもありますが、運動しているから、雪国と比べて、どれくらいいいのかというデータはありません。高名な先生に聞いても、まだ分かっていないと答えられます。 糖尿病学は結構進歩したと思っていますが、まだまだ分からないことがあります。 血糖値とは何かということも、まだ分からないんです。血糖値を下げることが、本当にいい意味があるのかも実は分かっていません。 血糖値を下げる基準というのは、恐らく個人個人で違うと思います。この患者さんは、これくらい下げたらいい、この患者さんは下げなくてもいい、そうした基準をこのクリニックで決められたらいいと思っています。

そのためには患者さんの生活を含めた全体像を知る必要がありますね。

 血圧もそうですが、血糖値も個別化していけば患者さんによっては必要のない薬もあると思うんです。 糖尿病の薬には高価なものもある。患者さんは僕にはいいませんが、高い薬だと来なくなります。医療はサービス業だと僕は思っています。外来診療で職業なども聞いて、高い薬なら、これは少し高いですよという、ちょっとしたひと言も大事だと思います。 寂しいときに人間は悪いことするんです。甘いものを食べたり、犯罪に走ったり、ギャンブルやったり、覚せい剤などに手を出したり。 僕が寂しいと思うのは、人との別れです。本当に一期一会で、これで会えなくなるかもしれない。
 実は最初の専門は血液内科だったんです。血液内科は十代の患者さんが多くて、半数くらいの方がお亡くなりになる。それだけに一回一回真剣に診療しなくてはならない。その気持ちは糖尿病専門医の今でも変わりません。一度手を抜いたら命に係わると思い真剣にやっています。

(取材日:2020年5月7日)


たかさわ糖尿病内科クリニック
函館市港町1丁目11番18号 函館港町ビル3FTEL.0138-44-0100
■休診日:日曜・祝日
■駐車場:13台
オフィシャルページ/基本情報