第30回 西洋医学的な見方による「ツボ」の効果
「東洋医学的 健康針断」では、益井東洋治療院の益井院長が、現代西洋医学とは、少し視点を変えて診た「体や健康」についてのお話をしていきます。お気軽にお読みください。
<東洋医学的 健康針断>
コラム寄稿:益井 基 院長
(益井東洋治療院)
皆さん、こんにちは!
今回は鍼灸治療の原点に返り「ツボ」とその効果についてお話をしたいと思います。
東洋医学の特徴的な考え方である「ツボ」という概念のお話ですが、昨今、その謎に包まれていたメカニズムが解明されてきているのです。
少し前まで「鍼灸治療はなぜ効くか?」という事に関しては医学的に解明されておらず闇の中でしたが、これを西洋医学的に解明し発表している医師がいらっしゃるのです。
その医師は、高橋 徳先生という方で、アメリカのウイスコンシン医科大学の教授であり、現在は岐阜と名古屋で統合医療のスタンスで医院を開業され、西洋医学とともに鍼灸治療をされております。
今回は高橋先生が最近、出版された「8つのツボで30の病気を治す本」を参照にしながら話を進めていきたいと思います。
ツボの専門家であります我々、鍼灸師が治療に使うツボの選択の仕方は、非常に複雑で鍼灸師によっても違います。
しかもWHO(世界保健機関)が認めているツボは約361穴あり、患者さんがセルフケアの為にチョイスするには数が多すぎ難しくなってしまいます。
それを徳先生は、「とびぬけて優れた効果のある8つのツボ」を潔く選択し、これだけで9割以上の病気に対応できると述べております。
私の個人的な感想としても、特にセルフケアとして用いるなら十分であると考えています。
その8つのツボを紹介いたします。
① 足の三里 代表的な万能ツボ
② 合谷 上半身の症状の特効ツボ
③ 肩井 肩こり・頭痛の特効ツボ
④ 風池 自律神経を調整するツボ
⑤ 腎兪 腰周辺の症状に効くツボ
⑥ 三陰交 女性の病気の特効ツボ
⑦ 陰陵泉 膝痛の特効ツボ
⑧ 内関 ムカムカの特効ツボ
これらの8つのツボを「どのように刺激して」「どのような症状が改善するか」は次回にいたしまして、今回は「ツボの効果のメカニズム」について簡単にお話したいと思います。
体の皮膚や筋肉には多くの知覚神経が分布しており、この神経により「痛み」「かゆみ」「温感」「冷感」などの情報を受け取り大脳皮質の知覚神経中枢へ伝えます。
つまりツボを刺激した時、皮膚や筋肉への刺激は、知覚神経を介して「脊髄(背骨の中を通る)」に入り、脊髄の脊髄視床路という経路を通って脳へと伝えられていくのです。
脊髄を通り脳に伝わった情報は、脳にある次の4つの場所に届けられ、それぞれに違う作用が起こります。
それらの作用は、次のようになります。
① 延髄に届く→自律神経系(交感神経と副交感神経)の調整作用
② 中脳に届く→オピオイド(脳内で分泌される麻薬様のホルモン)の鎮痛作用
③ 視床下部に届く→オキシトシン(愛のホルモンとも言われます)の抗ストレス作用
④ 脊髄反射(脳まではいかず脊髄で帰って来る反射)→GABA(痛みを和らげる効果がある)の鎮痛作用
ツボと言うスイッチを押すとそれぞれにペアとなっている部位が働きだし様々な効果が出るのです。
このような医学的な考えに基づいた鍼灸治療は「ウエスターン・メディカル・アキュパンクチャ」(西洋医学的鍼灸治療)と言われています。
この①~④の作用を組み合わせていけば、多くの症状に対し使っていけるのではないでしょうか。
徳先生は現代医学が苦手としている症状に対しても大きな効果を発揮すると述べています。
その期待できる効用としては次の3つです。
① 慢性疾患への対応
② 薬漬けからの脱却
③ 自然治癒能力の回復
様々な検査に引っかかって来ない慢性疾患に対して現代医学の効果は限定的で、薬がどんどん増えてしまう悪循環も見過ごせません。
鍼灸治療をすることにより減薬することができれば、本来の自然治癒能力が高まり症状は改善してくるでしょう。
伝統医療である「鍼灸治療」って、体に優しく、効果的な治療なのですね。
<参考文献 8つのツボで30の病気を治す本 高橋 徳先生>