「危険な腰痛」と「注意すべき腰痛」について

 腰痛は整形外科ではもっとも頻度の高い症状です。誰でも一度は経験されたことがあると思います。

 急性腰痛では、よく「ギックリ腰」になったと患者さんは表現されます。ただ、「ギックリ腰」は病名ではありませんので、この中には多種多様の原因が含まれていますし、その原因も一つではないかも知れません。なぜ腰痛が発生するのか、完全に解明する事は困難と言われています。

 それでは「ギックリ腰」になってしまったら、どうすればいいのでしょうか?本当にひどい腰痛の時は病院を受診する事も困難ですので、可能であれば2~3日安静と鎮痛剤・湿布などで様子をみても良いかもしれません。

 それでも全く改善しない場合、さらに悪化する場合は専門的診断と治療が必要になってくると思います。

 そこで特に「危険な腰痛」と「注意すべき腰痛」について説明したいと思います。
 安静にしても進行性に悪化する腰痛の場合、「危険な腰痛」として腰椎の感染症や転移性骨腫瘍(悪性)の可能性を考慮する必要があります。

 感染症は細菌と結核菌、その他の場合があります。疼痛は細菌性の場合はかなり強く、結核性の場合はそれほどでもありません。早期の検査と適切な治療が必要です。

 転移性骨腫瘍(悪性)は癌の骨転移と同じ意味です。腰椎は内臓の癌の転移が起きやすい部位です。動作に関係なく疼痛が強く、体重減少、食欲低下などの全身症状を伴います。原発巣を含めて専門的な治療が必要です。

 次に「注意すべき腰痛」として骨粗鬆症の場合、軽微な外力で腰椎の圧迫骨折を起こす事があります。転倒しなくても、除雪や畑仕事などでも生じます。腰痛は長引き、放置すると圧迫変形は進んでしまいます。これに対しては骨粗鬆症の継続的な治療が必要です。

 整形外科とあまり関係ない疾患でも腰痛が発生する場合が多々あります。腎結石・尿管結石などの尿路結石症も強い腰痛を生じます。

 婦人科疾患や腹部大動脈瘤などの血管系の疾患でも腰痛が発生する場合があり、細心の注意が必要です。

 以上、いずれも正しい診断と早期の治療を行い、腰痛による健康被害をなるべく少なくしたいものです。

 医療法人社団 八木原整形外科クリニック理事長・院長 八木原一英先生 


最初に癌が発生した病変のこと。最初に胃に癌ができて、その癌細胞が肺に転移すると原発巣は胃がんとなる。

八木原整形外科クリニック基本情報へ