医療用ウィッグでのサポートに思いを新たに

抗がん剤治療を受け故結佳先生が託したもの

●美容室パサージュ代表 久 末 智 光 氏   

美容室パサージュ 函館市石川町350番地21 TEL 0138-46-8023(代)

抗がん剤治療を受けて外見変化に悩む患者さんたちにアピアランスを通してエールを送り続けてきた久末結佳先生が本年1月にご逝去。ご主人であり、美容室パサージュ代表の久末智光先生は、医療用ウィッグは、これまで通りに石川町の美容室でフルサポートしています。改めて乳がんと向き合ったと話す久末智光先生に結佳先生が残された思いも話してもらいました。


「メディカルページ函館・道南版2018年夏号」に掲載された記事です。内容は掲載時のまま表記しています。

 

■久末智光氏

最初に奥様の久末結佳先生のご逝去に心からお悔やみ申し上げます。

昨年12月22日にちょっと違和感があるというので病院に行きました。体調はそんなに良くなかったのかも知れませんが、本人もそんなに重くは感じていなかったようです。12月27日に入院して、細胞検査の結果、乳がんで転移もしていると告知がありました。
乳がん自体は2センチくらい。ただ、早い段階でリンパ節に転移していて、そこから肺、肝臓、骨へと転移していました。翌日から、抗がん剤治療に入りましたが、1月5日の午前中に容態が急変して逝去しました。

Passageとしての営業に変更はありますか?

石川町の美容室パサージュの医療用ウィッグへの対応は、今までどおりです。以前から医療用ウィッグを利用されている方も、髪の抜け初めから生えそろうまでの期間に渡ってのカットや調整など、これまで通りのフォローを行っています。
医療用ウィッグの販売も継続していますし、医療用ウィッグに関するご質問等がありましたら、直接石川店に連絡頂ければ、個室で対応いたします。抗がん剤治療などにより脱毛に悩む方で医療用ウィッグの使用を考えていらっしゃる方は、美容室の方にご相談ください。

田家町のアピアランスサロンは奥様のご担当でしたね。

アピアランスサロンの方は休業中です。今後、これまで補整下着やパットを買われていたお客様に関しては、前に使っていたものが欲しいというご要望があれば、データが残っているものは対応していきたいと考えています。
立ち会えるスタッフがおらず試着が出来ませんので、ご希望のお客様には、お貸しして試着していただく形を考えています。お問い合わせの際に、それもご相談頂いければと思います。ドイツ製のアニタの補整下着をお使いの方については、買い替えが必要な方もいらっしゃるので、その対応についても考えて参ります。

■個室(上)も完備した美容室パサージュ

先生ご自身のお仕事には変わりはないということですね。

仕事の内容に関しては変わりありませんが、気持ちの上での違いはあります。
治療できるということは、未来があるということだと僕は思うんです。治療が出来なければ、そこで断たれてしまう。どの時点でがんを見つけられれば治療できるのかということになりますから、早く見つけることが大事だと改めて思っています。
妻も年に一度毎年2月に乳がん健診を受けていたんですが、去年の2月は忙しくて行けなかったんです。それでも40代~50代の乳がん検診は2年に一度ともいわれているので大丈夫だろうと。「来年は行かなきゃだめだね」と話していたんです。
特に女性は我慢強いので、病院にかかっている時間もないということもあるのでしょうが、自分のためだけでなく、家族のためという意識を持って欲しい。
病気が発覚して、入院治療という時期があっても、治療が終われば100%ではないにしても、元の生活に戻れる。でも、治療できなくて亡くなれば、元には戻れない。その時に家族がどういう思いになるのかを考えて欲しいですね。

それでも発症してしまった方へのサポートがお仕事ですね。

抗がん剤治療などで髪の毛が抜けるなど見た目の変化も大事だとは思います。がんになったというショックと治療による脱毛のショック、そして副作用の辛さのショック。
脱毛がショックの一因であれば、髪が抜けても外出できるということが、ひとつの目標になるなら、ウィッグを使う選択肢が出てくる。ひとつのショックは解消できる。
副作用は、それを抑える薬もあるので、医師に相談すれば、対処してくれますから、もうひとつのショックも解消する。
この2つをクリアして頑張れば、がんのショックも克服できるかもしれない。治療期間は一生という時間の内の一部分です。
ですからウィッグを使って、もっと外に出ようという気持ちになれる、その手助けになればと今、凄く思っています。

お伝えになりたい奥様の思いはありますか。
妻も入院して抗がん剤治療を受けて、「抗がん剤ってこういうものなんだと実感した」といっていましたし、副作用が出た時も、「こんなに辛い思いをしてやっているんだ」といっていました。
これは経験した人でなければ分からないことなので、多分、妻が生きていて、仕事を続けていたら、仕事やお客様に対する接し方も、変わったと思います。 抗がん剤治療をいわれた時には、髪も抜けるので、僕にウィッグの予約もしましたし、ウィッグには何種類か色があるんですが、「あのウィッグで作って、帽子も早めに持ってきて、髪の抜ける様子も写真に撮って」といっていました。 意欲的に治療を受けて自分の経験を仕事に生かすつもりで、そんな話もしていました。
本人としては、これから治療を受ける人に自分が経験したことを少しでも伝えたいと思っていたんじゃないでしょうか。今となっては、そこがちょっと悔しいところです。

(取材日:平成30年5月13日)


株式会社Passage
美容室パサージュ 函館市石川町350番地21
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(取材日:平成29年11月9日)