基本は地域に喜ばれる医療と介護のサービス

重介護ゼロ、介護離職解消に向けての取組み

白ゆりグループ㈱メディカルシャトー 代表取締役社長 佐 藤  文 彦 氏
函館本社:函館市美原2丁目50番2号 TEL 0138-34-3231
https://www.shirayuri.gr.jp/

『ライフプレステージ白ゆり』ブランドの高齢者介護複合施設を札幌、函館、北斗の3市で運営する㈱メディカルシャトー。現在、13種30事業所の運営を通して地域の医療福祉介護を支援する同社の佐藤文彦代表に白ゆりグループが取り組む課題と目指す将来像について語ってもらった。


「メディカルページ函館・道南版 2018年夏号」(平成30年6月1日発行)の冊子に掲載された記事です。内容は掲載時のまま表記しています。

 

■佐藤文彦社長:1975年生まれ。北大大学院工学研究科(医用システム工学専攻)を終了後、情報通信企業および外資系ソフトウェア企業に勤務。2012年㈱メディカルシャトー入社。2017年4月より同社代表取締役社長

函館と札幌で13種の事業を展開している白ゆりグループは、コンセプトに『医療と介護の融合を実現する』を掲げています。

日本における医療と介護は、制度上で医療保険と介護保険があり、厚労省が定期的に価格やスキーム(体系・枠組み)を変えています。しかし、国民が、その詳細を十分に理解した上で、それらのサービスを受けられる環境にはなっていないのが現実です。
私どもは調剤薬局から始めて介護事業、また、最近は医療法人としてクリニックの運営にも携わらせていただいていますが、利用者の方に適した医療・介護のサービスを笑顔で届けたい、これを念頭に考えてきました。
医療保険、介護保険は血税から成り立っているものですから、いろいろなケース、その方に合わせた最適なサービスを提供する。これが選ばれるサービス提供者としての理想の姿だと思います。
『医療と介護の融合を実現する』と謳って21年目になりましたが、ようやくその形が少しずつ出来上がってきているのかなと考えています。

運営する函館の『ライフプレステージ白ゆり富岡』は2016年度のダイヤモンドセレクトによる有料老人ホームランキングで1位を受賞しました。

『ライフプレステージ白ゆり富岡』は、最初の複合型施設で、オープンして12年ほどになります。離職率も低く、若いスタッフからベテランスタッフまでおりますし、介護福祉士の比率も高い。12年の歴史のなかで、ずっと満室で推移している、こういったところが評価された大きなポイントではないかと思っています。
1位を受賞したことは、非常にうれしく思っていますが、受賞するために施設を運営しているわけではなく、地域のみなさまにご評価いただくのが一番だと思っています。たくさん“ありがとう”といって頂ける施設。これは富岡だけでなく、私どもの全ての施設に共通した思いです。

2年前に棒二森屋6階にオープンした『ふらっとDaimon』を運営していますが、これは函館市から管理委託の選定を受けたものですね。

高齢者の方々の生活におけるニーズや期待をお聞きしたり、健康寿命を長く延ばせるようなライフスタイルづくりをサポートする。そのようなことを実現出来る場所があればという思いが以前からありました。函館市の介護福祉課の方々も、そのような場所を考えていらっしゃるということで、私どもがチャレンジさせていただきました。
場所が棒二森屋ということで、大門地区の高齢者の方の利用が中心かなと考えていましたが、交通のアクセスもよく、函館市全域の高齢者の方にお集まりいただいています。
運営する上で一番大事なところは、人が集まる空間のデザインです。『ふらっとDaimon』で提供するイベントや講座など、内容の面白い魅力的なコンテンツ作りに力を入れていかなければなりません。
アンケートもお願いしています。最初の一年は、お叱りをいただくこともありましたが、段々ご評価いただけるようになり、現在は週に1000名を超える方々にご利用いただいています。

介護の現場にいち早く介護ロボット『HAL』を導入しましたが、その目的は?

重介護といわれる大変な介護のお仕事を出来る限りゼロに近づけていくために、将来的に介護ロボットが活躍すると捉えて『HAL』を導入してスタッフに触れてもらっています。早くから、こういうテクノロジーに触れて、いろいろなロボットに対する知見を深めることが現場で必要になると考えています。
スマートフォンなどICT(情報通信技術)のテクノロジーも、この4、5年で大きく変わっています。同様にロボットやAIというテクノロジーも、この5年、10年で大きく変わってくると考えます。10年前に登場したスマホをほとんどの人が使っているという時間のスパンを考えても、早くからテクノロジーに触れることが必要です。
今は美原と新さっぽろに1台ずつ導入しています。見守りやコミュニケーションなど、いろんなジャンルに渡るロボットがあります。介護では排泄を補助するロボットまでありますから、現場で“どう使えるか”という発想をしてもらうことで重介護ゼロ、さらに介護離職のない環境につながっていくと考えています。

■スタッフとのミーティング(画像は白ゆりグループ提供)

利用者の急増にともなう職員不足という大きな課題への対応は?

今の日本の出生数と出生率を考えても労働人口の減少は避けられません。離職率を減らすだけでは施策として間に合いませんから外国人の労働力に頼らざるを得ないのが現実です。
介護の業界にも技能実習生の門戸が開かれ、ベトナム、フィリピン、インドネシア、タイやカンボジアを主体とした東南アジアからの技能実習生の受け入れとその教育をする仕組みが非常に大事になってきますし、教育する日本人スタッフの育成などは今から必要です。
最初の1年目は、本当に教育するだけです。その後の2年目、3年目、出来れば最長の5年目まで、働いてもらえるような仕組みとともに、技能実習生の中の数パーセントでも介護福祉士の資格を取ってもらい、在留資格介護というワーキングビザを取得して長く日本で働いてもらう。そのモデルとなるスタッフの育成まで考えていきたいと思っています。
ただ、3年、5年と日本で働いて、自国に帰ったら違う仕事に就くというのでは、技能実習生の制度としては失敗といわざるを得ません。ですから、自国に帰っても日本での技能実習生としてのスキルが生かせるような環境まで整えることが重要と考えています。

白ゆりグループが今後目指しているものを教えてください。

『医療と介護の融合を実現する』というコンセプトは変わりません。グローバルの時代といわれますが、私どもでは、造語で“グローカルの時代”といっています。ローカルに視点を向けて、地域の皆様に喜ばれる医療と介護のサービスとは何かということを常に考えながら、事業を開発していきたいと考えています。函館と札幌、渡島地区と石狩地区を中心としたサービスですが、自分たちの体力を客観的に見極めながら、足場をしっかり固め、成長していきたいと考えています。
何よりも現場が命ですから、全員が現場に目を向け、しっかりといい職場づくりをすることが、いいサービス提供につながると思います。利用者の方やそのご家族、そして白ゆりの仲間のスタッフがお互いに笑顔がつくれるようなサービスを提供していきたいと思っています。

(取材日:平成30年4月30日)


株式会社メディカルシャトー
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