第18回 「足底板ーインソール」 効果の印象と製作過程

toyo_doc「東洋医学的 健康針断」では、年4回、益井東洋治療院の益井院長が、現代西洋医学とは、少し視点を変えて診た「体や健康」についてのお話をしていきます。お気軽にお読みください。
<東洋医学的 健康針断>

コラム寄稿:益井 基 院長
(益井東洋治療院)


前回は「インソール」の効果とその考え方についてお話ししましたが、今回はその効果の印象と制作過程に関してお話したいと思います。私は趣味でマラソンをやっておりまして、インソールは練習用2足とレース用1足の計3足のランニングシューズにすべて入れております。先ずは私自身が4ヶ月間使用した印象をお伝えいたします。

●カスタムインソールとの出会い

2008年に初めて前脛骨筋の肉離れを起こして以来、09年はハムストリングの肉離れ、2010年は負荷をかけて走るとハムストリングが切れそうになる様な張りに悩まされ、不安・苦痛なく走るという事がほとんどありませんでした。

今年(2011年)の初め、「ランナーズ」という雑誌で日本シグマックス社から新しく発売さるカスタムバランス社のインソールの事を知りました。今までも色々なメーカーからカスタムインソールが発売されていましたが、いまひとつ理論的なものが私の治療の考えと結びつかず、導入を躊躇していたのですが、カスタムバランス社のものは非常に共感を持てましたもので、すぐにメーカーに問い合わせをして東京に向かったのです。

●自分に合わせたインソール

シグマックス社本社に伺い、私の足に合わせて制作して頂いたインソールとシューズを持って、すぐに担当の者と皇居に走りに行きました。ソールを入れたシューズに足を入れて立ちあがった瞬間、足の裏が地面をしっかりと踏んでいる感覚があり、フィット感を強く感じました。2周ほど皇居の周りを走ったのですが、心配していた違和感や足の痛みは全く感じられず、大変気持ちよく、ランニングすることが出来たのです。それ以来、運動負荷を徐々に上げていっても、この数年悩まされ続けた脛やふくらはぎ、太ももの痛みや嫌な張り感は全く出なくなりました。

●足のダメージと印象

8月28日に北海道マラソンに出場してきましたが、暑さで後半は「ばてばて」になりましたが、足の方のダメージは全く無く、すぐに練習を再開することが出来ました。12回目の同マラ出場の中でも、レース後の足のダメージがこんなに軽い事はなかったですね。もちろん年齢的な衰えがありますので、インソールを入れたからと言って「タイムが縮まった」「筋肉痛も出ない」などと言う事は私にはありませんが、明らかにスポーツ傷害と言える「痛み」「怪我」が出るには至らず、防止できているという印象が強いです。

以上が施術側であります私の印象ですが、数字ではっきりと示せるような客観的な評価となっておりませんけれど、印象として少しでも参考になれば良いと思います。

●インソールの制作過程

次に問い合わせが多かったインソールの制作過程に関して、ご説明したいと思います。

【カスタムバランスインソールが出来るまで】

①ポドスコープによる足底圧の観察
toyo18_01先ずはポドスコープに素足で乗って頂き、足の裏をカメラで撮影します。パソコン上で画像を見ながら、専門スタッフが足の状態をチェックして、踵からアキレス腱のアライメント(軸)や足底圧の分析をします。緑色が濃いほど足圧が高いことを示しており、重心の位置や足底にかかる荷重の状態が分かります。また、踵からアキレス腱の軸が、内側に傾いたり(プロネーション)、外側に傾いたり(スピネーション)していないかを調べ、患者さんにとって正しい足の位置(ニュートラルポジション)を見つけます。
これにより足首・膝・股関節・腰に負担をかけず、身体のバランスが取り易くなる様なインソールの形状を判断します。

②施術
toyo18_02下肢のアライメントや足底圧を確認した後、正しい関節・筋肉の動きが出来る様に、マッサージを行います。この過程は、長年、骨格のアライメントにポイントを置いて治療してきた当院ならではのものであります。

 

③専用ヒーターによる加熱
toyo18_03専用ヒーターでインソールを加熱すると、芯材に柔軟性が生まれ、一人一人の足の裏の形状に応じた成型が可能となります。この芯材は、通常の使用でランニング1600kmくらいの耐久性があります。

 

④成形
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クッションの上に加熱したインソールを置き、その上から真っ直ぐに足を乗せて立ち、下方向に体重をかけます。そして前後にゆっくりと重心を移動させて、歩いている状態に近い足の裏を作ります。さらにスタッフが親指のつま先を持ち上げ(ウインドラス効果)、足底筋膜を引き上げることにより、土踏まずのアーチをもち上げ、歩行時の土踏まずにぴったりとマッチした剛性の高いインソールを成形します。この過程が「カスタムバランス」の特徴であり、他メーカーと一線を画するところであります。

⑤仕上げ
toyo18_05足を後方へゆっくりと引き上げ、クッションから足とインソールを離し、足の形状とインソールがフィットしているかをチェックし、細かいところの調整をして、仕上げます。このようにして制作したインソールは、同様な形の靴であれば、入れ替えが基本的に可能であります。体重を確実に分散できるしっかりとした足元を作り、日々、積極的に歩いて頂ければ、健康的な生活を維持できるであろうと考えております。

●脊椎バランス

鍼灸治療とはあまり関係ないインソールのお話でしたが、脊柱を左右バランスよく起立させる事が出来れば、首・肩・背中・腰・下肢の筋肉の緊張を和らげ、身体の痛みや苦痛を感じない生活が可能なのです。

これは鍼灸治療にとっても大いに有効なツールとなると思います。