「治療用食品・介護用食品」─取材レポート/その7 創業60周年を期にチェンジにチャレンジの実戦へ

株式会社アキヤマ 業務用食材・資材・機器専門商社
北斗市東前3-41 TEL 0138-77-7491

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akiyamarepo07_1111_02今年で創業60周年の節目を迎えた業務用食材の専門商社㈱アキヤマ。ここ数年は飲食店、ホテル・旅館への食材提供だけでなく、医療機関への食材提供も道南で唯一行うなど新しい事業にチャレンジし続けている。「マンネリは通用しない時代」と語る小林久周社長。
一方、新規事業の先頭に立って指揮をする小林周平企画室長も「選ばれる企業」への具体的な行動を自ら実践する。今回の取材レポートでは新たな時代を迎える同社の動きについて両氏に話しを伺った。
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■「業務用食材・機器フェア2011」で挨拶する小林久周 社長

60年といえば人間でいえば還暦。新たな時代へのスタートに立つにあたっての決意をお聞かせください。

昭和26年5月に先代社長秋山始一(モトカズ)が秋山製菓材料店を興して創業60年、節目の年を迎えて身の引き締まる思いです。近年、時代は急速に変化しており、もはや過去のやり方、マンネリ化は通用しない時代です。マーケットは益々縮小に向かい、新しい時代に挑戦、すなわちチェンジにチャレンジしていかないと勝ち残れない時代になりましたが、弊社も時代の変革に乗り遅れることなく、一層の努力をしていきたいと思う次第です。

近い将来競争の激化が予想される中、アキヤマとしてどのような対応をお考えでしょうか?

会社としてこれまで通りやっていたのではお客様は離れていってしまうでしょうから、お客様から必要だと思われる商社にならなくてはなりません。今後も数ある企業の中から当社を指名していただくには、新たな試みにチャレンジするとともに、他社よりもより良いものをより早くより安く提供していく。それがアキヤマの使命だと感じています。


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■新サービスの一翼を担う森永乳業の宅配用牛乳は、現在約600軒の家庭に配達されている。搾りたての風味にこだわったという牛乳は、脂肪分2%とは思えない濃厚さで美味しいと評判。

新たな試みということでは、前回の取材レポートで伺った牛乳の宅配と治療食・介護食の宅配を合わせたサービスもその一つということでしょうか。

牛乳の宅配サービスというのは昔から多くの会社が行ってきたサービスで、それ自体は新しい試みではありません。業務用食材の卸し業者として外食産業の世界で商売をさせて頂いておりますが、個人のお客様で知っている方はほとんどなく、全くの新人だといえるでしょう。そんな新人の会社が他社と同じことをしていたところで数ある同業者からアキヤマを指名していただけるわけもなく、牛乳を売るという以外のサービスをいかに付加できるかが成功するためには不可欠です。そこでアキヤマの強みであるサービスの一つとして治療食・介護食の宅配を始めたわけです。治療食・介護食が必要な方の中には、自分で買いものに行くのもままならない方もいます。今回の試みはそういう方のお役に立てるサービスだと考えております。

治療食・介護食の宅配はたしかに魅力のあるサービスですが、初めから想定した上で牛乳の宅配事業に取り組んだのですか?

牛乳の宅配はゼロからのスタートではなく、廃業を検討していた他社の事業を継承するかたちで始めたものでした。たまたま縁があって弊社に声をかけていただいたわけですが、廃業となれば契約しているお客様は困るでしょうし、どうにか引き継げないものかと思いチャレンジすることにしました。

もちろん不安はありましたが、そういうお話が来るということは自分が試されているのだと思い、それに応えるチャンスを頂いたのだと思ったのです。正直なところ、事業を引き継ぐことにプレッシャーを感じる部分も大きいのですが、お客様に喜んでいただき、プレッシャーを喜びに換えていけるよう頑張っていきたいと思っています。

他社から引き継いだ事業に、自社の得意分野である治療食・介護食を組み合わせたわけですが、お客様はすんなりと受け入れているのでしょうか?

一般のお客様にとってはアキヤマという社名を聞くのは初めてという方がほとんどでしょう。ですから、牛乳や治療食を売るという以前にまずは「私はアキヤマです」というところから始めなければいけないと思っています。従来の業務用のお客様とは異なり、宅配のお客様を獲得するというのは非常に難しく、お客様個人個人との繋がりというものが大変重要になってくるビジネスだと感じています。時間はかかるかも知れませんが、根気よく誠意を持ってサービスを提供していくことが重要であると思っています。

これまでの業務のお客様とは全く異なるお客様に対し、どのようなアプローチをお考えですか?

弊社には、先代が築いた実績という大きな強みがあります。これまでのアキヤマは、業務用食品の販売を通してお客様に役立ち、生活をさせて頂いておりました。これからのアキヤマは、個人ひとりひとりのお客様の健康管理を担うことで、お客様のお役に立つ心構えでおります。おかげ様で、弊社営業陣は、お客様や諸先輩の皆様のあたたかいご指導により、お金で買えない専門知識を学ばせて頂き、身につけてまいりました。治療食・介護食の知識があり、牛乳の知識があり、業務用の知識があるといった具合に一人で三役をこなせる営業陣は、きっとお客様のお役に立つことでしょう。将来的にはホームヘルパーの資格を取得したり、保険の代行サービスなども視野に入れながら新たな分野にチャレンジしていきたいと考えています。

新たなチャレンジとして既に動き出しているものはあるのでしょうか?

私は今年9月に食品衛生管理者の国家資格を取得しました。「食の安全・安心」という言葉をよく耳にしますが、食品添加物に関する知識を修得したおかげで、お客様の食に対する不安、相談にも応じられるようになりました。また、この資格を持つことで、例えば業務用の大袋食材を個人用に小分けにして販売することもできるようになりました。ご存知のように、業務用食材というのは一つの単位が大きい分割安になっています。これを小分けにすることで、個人のお客様にも必用な商品を必要な分だけ安く提供することができるわけです。
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■フェアでの治療食・介護食ブース
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■食品衛生管理者とは?
食品衛生法第48条の規定により、製造又は加工の過程において特に衛生上の考慮を必要とする食品又は添加物であって、食品衛生法施行令で定めるものの製造又は加工を行う営業者は、その製造又は加工を衛生的に管理させるため、その施設ごとに、専任の食品衛生管理者を置かなければならないこととなっています。(厚生労働省)



業務用食材を取り扱うアキヤマだからこそ可能なサービスですね。では最後に、最前線で指揮を取る室長としての今後の展望をお聞かせください。

先ほどのお話に食の安全・安心という言葉が出ましたが、「安全」と「安心」、この二つの言葉は、似ているようで全く異なるものだと思っています。安全というものはどちらかといえばシステム的なもので、生産工程などの対策で対応できると思いますが、安心となると人それぞれ基準が異なると思うのです。どこに安心を求めるのか、何に安心を求めるのか。安心というものには心の部分が深く関わってきますので、信頼や心のケアといったものを大切にしていく必要があると思います。この人間的な部分のサービスを提供していくことがアキヤマのやるべきことで、それができて初めてお客様に選ばれるアキヤマになるのだと思っています。弊社のこれからの動きにご期待下さい。皆様のご指導ご鞭撻を心よりお願い申し上げます。

創業60周年の歴史と伝統に感謝しつつ、今の時代にあったものにチャレンジする決意を語ってくれた企画室長の小林周平氏。過去の実績の上にあぐらをかくことなく、慎重かつ大胆に新たなことにチャレンジしていきたいという姿勢が随所で見られた取材だった。同社の今後の展開が楽しみである。

 


(取材日:平成23年10月3日)