「治療用食品・介護用食品」─取材レポート/その14 食のトータルプランナー目指す(株)アキヤマ第46回業務用食材・機器フェア2015開催

高齢者向けの食事などセミナー・ワークショップも

株式会社アキヤマ 業務用食材・資材・機器専門商社
北斗市東前3-41 TEL 0138-77-7491
http://www.akiyama-fs.co.jp/ (オンラインショッピング)

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akiyamarepo15_20151005-1業務用食材の専門商社(株)アキヤマ主催による「業務用食材・機器フェア」が、平成27年10月5、6日の両日、函館流通ホールを会場に開かれた。同フェアは今回で46回目を数える同社の恒例イベント。食材、包装資材、調理機器などのメーカー90社が参加した会場には、各メーカーの製品が展示され、外食産業や病院・学校給食の関係者のほか、アキヤマ宅配サービスの利用者などが詰めかけた。また、会場では病院給食や外食、製菓・製パン業者に向けてのセミナー・ワークショップも行われ、各業種の関係者が熱心に耳を傾けていた。
■小林久周社長

■小林久周社長

「当社が食のトータルプランナーであることを訴求したい」。(株)アキヤマ代表取締役社長の小林久周氏は、フェア開催の狙いの一端をこう話す。
今回で46回目となるフェアだが、昨年の開催を前に小林社長は東京などの取引先をまわり、改めて何を目的としてのフェア開催なのかを考えさせられたという。
「メーカーさんとの話の中からヒントを得たことは、少子高齢化の中で、改めてエンドユーザーのお客さまを増やす提案をすることだと結論した」(小林社長)。
そこで昨年のフェアで初めて行われたのが、取引先の各業種に向けたセミナー・ワークショップ。今回のフェアでも、製菓・製パン、外食産業、病院給食の各関係者に向けて、2日間に6回のセミナー・ワークショップが開かれた。

病院給食事業者に高齢者の食事と栄養状態のセミナー

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■加葉田美里氏
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■山本 武氏

このうち病院給食の関係者を集めて開かれたのが、「高齢者の食事と栄養状態について(ケアフードのご提案)」をテーマとしたセミナー。
ハウス食品工業㈱札幌支店フードソリューション営業課の加葉田美里、山本武両氏を講師にしてのセミナーでは、同社が定義するケアフードは食事に対して何らかの配慮が必要な人向けの食品。その領域は、加齢により噛む力や飲み込む力が低下した人に配慮した介護食と病気により食事制限が必要な人に向けた病態食となると説明。
また、要介護原因の21%を占めるサルコペニア(加齢や病気、低栄養などにより骨格筋量が減少したり、筋力が衰えてしまう現象)やロコモティブシンドローム(加齢に伴い筋肉、骨、関節の3部位に支障をきたし日常生活が困難になる現象)の対策にはエネルギーとタンパク質を中心としたバランスの良い摂取が必要。

■病院給食事業者に向けたセミナー

■病院給食事業者に向けたセミナー

摂食・嚥下障害に対応するには食べる力に合わせた食事の工夫が必要であり、さらにあまり長い食事時間は疲れてしまうので、30分から40分が目安。食事の姿勢も即位なら背筋が自然に伸びて、やや前傾する姿勢が理想的。いすを利用する時は足の裏が床にしっかりついている事が重要とアドバイスした。
この後、試食を交えておいしさと手軽さ、やさしさを基本的な考えとするハウス食品が展開している在宅用と施設・病院等に向けたケアフードを紹介した。
「当社は小学校の学校給食から外食、病院食まで扱い、治療食や介護食は一事業部門ですが、少子高齢化の中で今後、高齢者のお客さまはさらに増加する。高齢者のお客さまとの接点になる宅配事業も重要性が高まる」と小林社長は、セミナーのひとつに高齢者の食事をテーマとした狙いについて話し、さらに「お客さまの元に直接通う宅配。そして、今回のようなイベントでムードを盛り上げる。何もしなかったら、お客さんは来ません」と、食のトータルプランナーとしてのアキヤマの展開を語った。

少子高齢化社会の中で、アキヤマが目指す個別化と差別化

高齢化の急激な進展と少子化のなかで、食事も家族が別々に食事をする「個食化」が進んでいる。
(株)アキヤマの小林周平常務は、「個別に一人一人のメニューを考えなければいけない時代」と話す。また、それが同業他社との差別化を図る最大の武器ともなる。
「高齢者の方に顧客となっていただくには、一人ひとりのお客様に向かっていくしかない。宅配事業はそのための有力なビジネス。一軒一軒のお宅を回り、牛乳や缶詰などの重ものや健康に特化した商品を代行して運ぶことで、お客様から、これも持ってきてという新たなニーズを受ける」と、小林常務は高齢者顧客の開拓に向けた宅配事業が、新たな需要の掘り起こしにつながっているとも話す。

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■小林周平常務
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■根本琢巳営業部長

さらに高齢者に向けた展開の深化も小林常務は探っている。
「その方に合わせた配達だけではなく、栄養指導も今後は重要になる。私どもアキヤマが、いち早く提案させていただいきたい」
(株)アキヤマは北斗市を中心に、函館市ではFCによる宅配事業を展開しており、今後は松前町、さらに木古内町への展開も目指している。
一部の介護食はドラッグストアなどでも売られ、周知はされてきている。しかし、あくまでも高齢者のためのものというのが、一般的な認識だ。
「介護食や治療食などは今後開発が進み、将来的には普通の人が、健康に気をつけて食べる食品になってくると思う。アキヤマは家族全員で食べられる健康な食事を提案していきたい。それが社長の思いです」
こう話す小林常務は、試食に加えて栄養指導なども提案出来る店舗展開など、お客様からアキヤマが選ばれるには、こうした差別化が重要と強調する。

介護食の販売でも一線を画した展開

ドラッグストアやスーパーで、紙おむつと一緒に介護用品として販売されている一部の介護食。一方で、アキヤマが本社併設の販売店舗『ワールドグルメプラザ』で販売する治療食や介護食は、実際に病院や施設などで使われているものだ。

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■フェア会場での2015全病食(協)PB商品紹介コーナー

「すべてではありませんが、1個から売っています」と同社の根本琢巳営業部長は、小口での希望にも対応した販売を話しながら、「退院して施設に入られて、病院で食べていたものを食べたいというご希望を受けたケアマネージャーさんが病院に問い合わせて、当社をご利用なさったり、退院後にご自宅での食事に介護食として病院から紹介を受けてお買い求めに来られる方もいらっしゃいます」と補足する。
ドラッグストアとは比較にならない品揃えに加えて、商品についての的確なアドバイスは利用者にとって何より安心できる。これもアキヤマの差別化の一端だ。
また、今回のフェアでも、介護食・治療食の講演会が行われたが、施設の栄養士から依頼を受けて、介護職員を対象にした水分補給やとろみ食品の正しい使い方などの勉強会も開催している。

北海道新幹線開業に向けて地元企業としての役割

来年(平成28年)3月26日には、北海道新幹線が新函館北斗駅まで開業する。地元企業として、本州から来る人たちにアキヤマはどういう会社なのかを知ってもらうことから始めるという。
そのために10月末の社員旅行の地に函館をあえて選んだ。
「社員一人ひとりが函館市や北斗市の魅力を知ってもらうのが目的。これまで観光施設のお取引先も、担当以外はそれほど訪れる機会がなかった。今回改めて社員全員が函館・北斗両市を勉強することで、観光客への情報発信とともに地元企業としてのアキヤマを認知してもらいたい」と、小林常務は地元企業としての思い入れを話している。

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(取材日:平成27年10月5・6日)