「ロコモティブシンドローム」と「骨折」について

ロコモティブシンドローム(略して「ロコモ」)は、骨・関節・筋肉などの衰えが原因で、「立つ」「歩く」といった機能が低下した状態の事をいいます。

「ロコモ」の原因は多様で知らず知らずのうちに悪化していきます。

足腰の筋肉量は運動不足や肥満などの影響により40~50歳代から徐々に減少し、70歳代では約半分になるといわれています。
さらに女性では骨量が減少し「骨粗鬆症」の発生率も高くなります。

60歳以降では主に膝関節を中心とした「変形性関節症」が増加し、腰椎の「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)」なども加わり、歩行困難を招きます。この頃になると立位・歩行に不安を感じる為、外出や運動を控える様になってしまい「ロコモ」はますます悪化してしまいます。
「ロコモ」が悪化すると「転倒」の危険性が増してきます。「転倒」の結果、最悪の場合は「骨折」となってしまいます。骨粗鬆症があれば骨折の危険性はさらに高まります。

実際の骨折は上肢では手関節・肩関節が多く、それぞれ橈骨遠位端 (とうこつえんいたん)骨折・上腕骨近位端(じょうわんこつきんいたん)骨折となります。橈骨遠位端は屋外での転倒の時に身体を支えた時に起きやすい骨折です。

下肢では股関節・足関節の骨折が多く、特に股関節の大腿骨近位部 (だいたいこつきんいぶ) 骨折が重要です。転倒して股関節を強く捻挫した際に発生する事が多いといわれています。早期の手術とリハビリが必要で歩行機能の回復を図ります。

昔はこの骨折により寝たきりになったり、生命予後に影響したりもしましたが、今は適切な治療が行われれば、その危険性は低くなっています。

骨折という最悪の結果にならないためには40~50歳代からウォーキングを中心とした運動習慣を持ち骨粗鬆症の治療も併行して行ない骨折しにくい強い骨を作る事が大切です。

「ロコモ」にならない為のトレーニングで重要なものを最後に紹介します。片脚起立の練習です。
片脚だけで1分間、バランスよく立てればOKです。左右1分間、各3回行うようにしましょう。このトレーニングは体幹筋・下肢筋を強化しますしバランス機能も良くなります。ただし転倒には十分注意して下さい。

まだ生活習慣病の「メタボ」に比べると「ロコモ」の認知度は低いのですが、高齢化社会の中で「ロコモ」の予防は健康寿命の為に重要なことだと思います。

 医療法人社団 八木原整形外科クリニック理事長・院長 八木原一英先生 


病気・手術などの経過において、生命が維持できるかどうかについての予測

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