ウェルキャブ車愛用者インタビュー:オーパ(助手席リフトアップシート車)
函館トヨペット株式会社
函館市石川町169番地35 TEL 0138-46-2111
函館トヨペット(株)では、石川店店舗内に福祉車両を展示する「ウェルキャブステーション」を設け、道南地域での福祉車両の普及に努めている。 「ウェルキャブ」とは、福祉(ウェルフェア)と客室(キャビン)を合わせたトヨタの造語。同社では「すべての人に自由な移動を」との思いを込めて福祉車両をウェルキャブ車と呼んでいる。そこで前号に引き続き、函館トヨペット(株)でウェルキャブ車を購入し日常的に利用しているお客さまに、実際に車を利用してみての感想や車いすでの外出などについての現状をお聞きした。 ※「メディカルページ函館平成21年度改訂版」(平成21 年11 月28 日発行)の冊子に掲載された記事です。内容は掲載時のまま表記しています。 |
■本誌記者のインタビューに答える平松芳光さん(76歳) 北斗市にお住い。 平成16年にオーパ助手席リフトアップシート車を購入された。 |
ウェルキャブ車を購入なさった理由を教えてください。
平成16年の2月頃に妻がクモ膜下出血で倒れてしまいまして。すぐに入院して手術し、リハビリを経て約3ヶ月で退院しましたが右半身が動かなくなってしまいました。それまでは毎年妻と車で道内旅行に出かけていまして、今年は旭川方面に行こうかと話していた矢先の出来事でした。以前から函館トヨペットさんの車に乗っていましたので、障がい者を乗り降りさせやすい車ということで説明を受けて購入することにしました。
それは大変でしたね。奥様が退院なさる際には、病院から今後の生活についてなど指導はあったのですか?
まず、自宅で養生するか施設に入居するかを聞かれましたね。それで自宅を選んだわけですが、いろいろ指導はしてもらいました。自宅での介護の方法はもちろんですが、家自体も手すりを付けたり段差をなくしたり畳をやめてフローリングにするなど改造するようにと教えてもらいました。実はこの病院からの指導の時に「自宅から病院に通う手段はどうしますか?」と聞かれ、あっと思って函館トヨペットさんに相談させてもらったというわけです。
今乗っておられるのはどんなタイプのお車ですか?
オーパの助手席リフトアップシート車です。電動式で助手席が回転して降下しながら車外にせり出して来るタイプです。後部のハッチバックを開けるとフックが付いていて、折りたたんだ車いすを電動で持ち上げてトランクに収納させることができます。大変便利ですよ。
ご乗車の頻度はどのくらいですか?
デイサービスに週3回、病院には月1回行くことになっていますが、それ以外の日も雨が降らない限りは毎日妻を乗せてどこかに出かけたりしていますよ。
たとえばどんなところにお出かけになりますか?
初めは人ごみのない四季の杜公園などに散策に行っていましたが、そのうち「人の多いところにも連れて行ってあげないとストレスが溜まるのでは」と思うようになり、今はデパートのうまいもの市などにも車いすで連れて行っています。妻も「うちのお父さんはどこでも連れて行ってくれるんだよ」と周りの人に自慢しているようですね。
■車両後部ハッチバックを開けて説明する平松芳光さん |
結構出かけておられるんですね。以前は遠出もしておられたとのことですが、最近はいかがですか?
一昨年はディズニーランドに行きましたよ。結構車いすのお客さんが多かったですね。車いすでも来やすいということなんでしょうね。昨年は高速フェリーのナッチャンに乗って奥入瀬のほうに行ってきました。
車いすでお出かけの際に不便を感じることはありませんか?
一番の問題はトイレです。出かける時には、車いすで使用できるトイレがどこにあるか事前に調べてから行きます。最近は以前に比べたらトイレの数は増えてきたのでいいかなと思っていますが、便座が冷たいところが多いので、便座に敷く紙を持ち歩いています。
お車の話に戻りますが、奥様が乗り降りされる際には介助しておられるということですね?
妻は家の中では4点杖で歩いていまして、外出の際には自分で車まで行きます。助手席が電動で車外に出てきますので、立ち座りだけ手を貸しています。目的地に着いて車いすに乗り換える時もそうですね。電動式の助手席の移動を妻が自分でやりたがり、リモコンで操作しています。
平成16年以来ウェルキャブ車をご使用なさっておられての感想などがありましたら教えてください。
現状では大変満足していますし、妻も喜んでいます。
実は、今も毎月妻を病院に連れて行きますが、助手席が回転したり車いすを吊り下げる装置が付いていたりする車に乗っている人をほかに見かけたことがありません。それで、私が助手席や車いすのクレーンの操作をしていると結構注目されたり、「いいねー」とか「高いんだろうねー」と言われたりします。(消費税が)非課税になるのを皆さん知らないんじゃないかなあと思いますよ。今後高齢者がどんどん増えていくので、函館トヨペットさんとしてももっと知らせたほうがいいんじゃないかなと思います。
平松さんのご担当である函館トヨペット上磯店の佐藤武郎係長にもお話を聞いた。
■ウェルキャブ車に関する問い合わせは多くなっているのでしょうか。
そうですね、お問い合わせやご相談は、年間を通じてコンスタントにあります。車のパンフレットにも必ずウェルキャブ車のお知らせを載せていますので、必要が生じたときにお声を掛けていただければと思っています。
■何か特殊な車ではないかというイメージがある方もおられるようですが、いかがでしょうか。
ウェルキャブ車は決して特別な車ではありません。ひと昔前、自家用車は「何年乗ったから」と、ある意味周期的に買い換えるものでした。ですが今は多くの方が、「大学を卒業した」「結婚した」「子どもが生まれた」などライフサイクルの変化に伴ってその時に自分や家族が使いやすい車に乗るようになっています。ウェルキャブ車もその中のひとつとしてとらえていただければと思います。装置は確かに特殊なものですが、ご家族の必要に応じた車という意味では決して特別なものではありません。
■逆に、営業マンとしては必要のない方にはお勧めできない車でもあると思いますがその辺りの難しさはありませんか?
たとえば普段からご家族のご様子をお聞きしたりして、コミュニケーションを取ることに務めたいと思っています。介護に関わることですので、お客さまもただ「安ければ」を求めているのでなく、アフターサービスや安心を求めておられるはずです。そのような訳で、普通の車以上にお客さまに信頼されなければと心しています。
「税制上の優遇措置があるとは言え安くはない買い物ですからお客さまの経済的な面もあるとは思いますが、それがクリアできるのであれば潜在的な需要は高いと思います。ウェルキャブ車を活用して、お身体の不自由な方や足腰の弱ってきた方なども、なるべく変わらない生活をし、ご家族も負担を軽減して無理なく過ごしていただきたいですね」と結んでくれた。