第12回 突然起こる痛み─「寝違い」とは

toyo_doc「東洋医学的 健康針断」では、年4回、益井東洋治療院の益井院長が、現代西洋医学とは、少し視点を変えて診た「体や健康」についてのお話をしていきます。お気軽にお読みください。
<東洋医学的 健康針断>

コラム寄稿:益井 基 院長
(益井東洋治療院)


皆さん、こんにちは!
我が町「函館」にも冬将軍が近づき、日に日に寒くなってきましたね。
早起きして、走るのがつらくなってきました。(だって外は真っ暗なんですよ・・・)

そんな先日の朝、私の家内が「首が痛い」と言って、ロボットのような動きで起きてきました。
数日前から忙しく、「疲れたな~」とは言っていたのですが、突然、首が回らなくなってしまいました。
一般的に言う「寝違い」というやつですね。
今回はこの寝違いとは「どういう状態」で、「どんな時に起こりやすいか」をお話ししたいと思います。

【寝違いの状態】

寝違いとは朝起きたら急に、頚や背中の上部に激痛が走り、動かせなくなるような状態のことを言いますが、皆さんも恐らく一度や二度は経験されているのではないでしょうか?
寝て起きただけで、特別悪いこともしていないのに、どうして突然、痛みで頸が回らなくなるんだろうと不思議ではないですか。

ほとんどの「寝違い」は、頚椎についている筋肉の端にある「腱」の部分が傷ついたり、筋肉を包んでいる「膜」や「筋の繊維」自体に傷がついてしまうことで起きてしまいます。
なんらかの理由で、頚周辺の組織に傷がついて、その周囲に炎症を起こし腫れている状態ですから、自分でできる対処法としては、痛みのある部分への冷却が一番効果的であります。
寝違いは、ほんのわずかな傷である場合がほとんどなので、患部を冷やして、数日間、頚をあまり動かさないようにしていれば、痛みは少しずつ改善してきます。

一番してはいけないことは、この逆のことで、お風呂や温湿布などで温めて、痛みのある部分を揉んでしまう事です。

患部には傷が付いて、内部は腫れているわけですから、温めたり、揉むという事は良いわけはありませんよね。
しかしこれが結構多くの方が犯している間違いで、温めたり、揉んでいる間は気持ちよく楽なのでしょうが、この後は必ず炎症がひどくなり、痛みもひどくなり、治りにくくなってきます。

また、上記のような一般的な「寝違い」の痛みは数日で改善してきますが、手に痺れを感じたり、力が入らなくなってきたら、椎間板ヘルニアなどの他の病気を疑わなくてはいけません。そんな時は、必ず整形外科などの医療機関で検査を受けるようにしてください。

【どんな時に寝違いになりやすいか?】

では、どうして急に腱や筋肉に傷が付いてしまうのでしょうか?ここが肝心なところです。
今のところ医学的な根拠は明確ではないのですが、「寝違い」を起こすにあたり、いくつかのトリガー(引きがね)が有るのは間違いありません。

<寝違いをおこす引きがね>

  1. 慢性的な寝不足
  2. 胃腸の調子が悪い
  3. 精神的なストレスが続いている
  4. 慢性的な疲労による筋肉の持続的緊張状態
  5. 風邪

これらがいくつか重なっている時は要注意で、筋肉の緊張が高まったり、自律神経のバランスが悪くなったりするのです。
それにより「普通に寝ている間の寝相や寝返り、枕の形・寝床の状況の変化に、頚・肩・背部の筋肉の収縮・伸展がついていかず、持続的な筋肉の過緊張状態が起き、しまいには、少しの体の動きにも対応できず、傷ついて炎症をおこしてしまう」というのが、寝違いの実態であります。

【寝違いの治療】

頚の奥の「腱」「筋」「膜」に傷がついて炎症を起こし、その後、その熱により、硬く緊張を起こしてくる病態に、鍼灸治療は、大変に効果的であります。
直接、患部に近い部分から治療できるので、消炎・鎮痛が早く進みます。
おおむね痛みが和らいで、動かしにくい状態だけになった段階で、マッサージをプラスしてやると、より回復が早まります。
寝違いで頚が回らなくなった時には、鍼灸治療を思い出して、ぜひ、ご相談ください!!


生活習慣(食生活・生活のリズム)に気をつけ、ラジオ体操程度でよいので、全身の筋肉をストレッチして、「引きがね」になる要素から、日々、体を守りましょう!
それにより間違いなく、寝違いは予防できると思います。