吉田食品本社・工場の移転新築に続いて直営店舗『和創菓ひとひら』オープン
『ヨシダのお菓子』から『ひとひら』ブランドへ 創業70年余の伝統を持つお菓子の老舗が新展開
●株式会社 吉田食品 代表取締役 吉田貴之 氏
函館市西桔梗町851番地8 TEL 0138-83-1784
●http://o-kashi-yoshida.com
昭和17年の菓子製販の老舗・株式会社吉田食品が本社・工場を函館市西桔梗町に移転新築。これに隣接して直営店舗『和創菓 ひとひら』をオープンしました。これまでの卸から直販への新たな展開に挑戦する同社社長の吉田貴之氏に『ひとひら』のネーミングに込めた思いと地産地消にこだわったお菓子づくりと健康についてお聞きしました。 |
昨年11月に本社と工場を西桔梗に移転新築し、今年3月4日には本社に隣接して、直営店舗『和創菓ひとひら』をオープンしました。この場所を選ばれた理由は?
北海道新幹線が開業して新函館北斗駅からいらっしゃるお客様のことも考えました。函館市内で函館山の麓に建てるのも観光スポットとしてはいいのかもしれませんが、普段いらっしゃる地元のお客様は来づらい。産業道路の外側に位置する場所で、近隣の昭和地区は分譲が進んで、若い方も多い。工場だけでなく、店舗の立地を考えて、路面に面した、この場所を選びました。
まず工場のことを教えて下さい。特に衛生管理に重点を置かれたということですが。
以前から衛生管理には力を入れていました。吉田食品はスーパーなどへ卸す、流通菓子が主体でしたので安全管理など一定水準のものが必要ですし、万が一でも、クレームがあったら大変なので、しっかりした管理体制をとれるように整備してきました。
直販の商売は売る力はありますが、どんぶり勘定になりがちだったり、管理が十分行き届かなく問題があることも多い。逆に当社はベースができていましたから、この課題もクリアできると考えました。
それが直営店舗『ひとひら』のオープンにつながるのですね。
『ひとひら』は店舗名であり、同時にブランド名です。スーパーにお菓子を売っていた吉田食品が、直販を始めたことをお客様に知っていただこうと思いました。お客様に管理体制や製造過程が見えるように、併設の店舗をつくりました。また、みなさんに見て楽しんでもらえるような店舗設計などにこだわりました。
『ひとひら』は、社長のネーミングですか。
そうです。『ひとひら』というと、一片の花や雪など、はかないイメージがありますが、そういうわけではありません。最初に文字はひらがなを使いたいというのがあって、加えてやさしい響きも欲しかった。
今まで苦労してきて、いろんな人に関わって救われてきたことがたくさんあります。自分は大学を卒業してから、何も知らないで菓子屋に修業に行きましたが、結構厳しいところでした。教えてくれなかったり、怒られたりしましたが、その人がなければ今の自分はない。函館に帰ってきてからも、いろんな困難がありましたが、大勢の人に助けてもらってきました。『ひとひら』の『ひと』は人で、出会いを大切にということがひとつ。
もうひとつは、ものづくりというものは真心込めてつくるものです。お菓子ですから、それは手でつくるということ。掌で心をこめてつくる。それが『ひとひら』の『ひら』に込められた意味で、この二つの言葉からのネーミングです。
『ひとひら』は単に店舗名というのではなく、卸の吉田食品が、新たに手掛けた直売のブランド名でもあります。
お菓子のアイテム数は、どれくらいあるのですか。
年間通して400くらいあります。中心は和菓子です。ですから『ひとひら』にも和創菓とつけています。今、店舗に並んでいる商品の7割は新商品です。ギフトも合わせて100品くらい並んでいます。新しい店舗をつくっても、ちょっとだけ新商品というのでは変化は生めません。あれもこれもとやらないとお客さまに目新しく印象を与えられません。
吉田食品はスーパーで買えるお菓子も持っていて、この店でなければ買えないものもある。お客様から直接声を聞けるのは楽しいです。写真を撮りたいけどいいですかという声も多いです。この場所で時間を過ごしたいというお客様を増やしたい。いつ来ても、わくわくさせるものがあるという取り組みをしていかなければなりません。1週間に1回は来るというお客様にも、また増えているねと言っていただかなければ。
まだ1シーズンもやっていませんから、どういう取り組みをしていくかと楽しんでいきたいと思います。
社長は2年前に北海道内で初めて選・和菓子職に認定されました。この認定は和菓子職でとして、創造的な手作り和菓子ができる技術があることを証明するものと聞いています。
私は一級和菓子製造技能士という国家資格も持っていますが、もともと国家資格より難しい資格をつくろうというので出来た選・和菓子職ですから、こちらの認定の方が難しいというのが正直な感想です。選・和菓子職認定を持っている100名くらいが、昨年暮れにチームをつくって、和菓子という伝統文化を世界に広げるということで、国外での活動も目指しています。
御社では地産地消を謳っていますが、お菓子と健康という面でのお考えを聞かせてください。
健康面に優しいものが好まれます。美味しいことと健康面が両立できればなおいいですね。和菓子は洋菓子にくらべて油脂類が少ないということでヘルシーという感じを受けられますが、加えてビタミンや食物繊維が多いという特徴があります。
『ひとひら』ブランドでは素材を大事にしています。小麦粉なども北海道産のものを使うとか、バームクーヘンも卵はPG卵を使ったり、バターもサロベツのもの、小麦粉、砂糖も、生クリームも北海道産です。とことんやれるところまでやっています。これも直売だから出来ることです。
『ひとひら』ブランドの今後の展開は。
基本的に『ヨシダのお菓子』として売っているのは、ほぼ定番のものですが、これからは『ひとひら』としてのブランドづくりを確立したい。スタッフも増やしました。お店の担当者からも、お客様が求めていらっしゃるから、こういうやり方はどうでしょうとか、こういう企画をしたいという提案が来ます。スタッフの提案でホワイトデーの盛り合わせも何種類か出しました。
これからは地元で2号店という手もありますし、首都圏での販売も考えています。
(取材日:平成28年3月12日)
【株式会社吉田食品沿革】 |
▼『ひとひら』の店内とお菓子