第9回 熱中症を防ごう

toyo_doc「東洋医学的 健康針断」では、年4回、益井東洋治療院の益井院長が、現代西洋医学とは、少し視点を変えて診た「体や健康」についてのお話をしていきます。お気軽にお読みください。
<東洋医学的 健康針断>

コラム寄稿:益井 基 院長
(益井東洋治療院)


皆さん、こんにちは!
函館の暑さもいよいよ本格的になってきましたね。
地球温暖化によるものなのでしょうか、全国的に異常なほどの高い気温になっているようでありますね。
TVのニュースを見ると、最高気温が「36度だ」「37度だ」と、騒いでいますが、この気温って体温より高いのですよ。
地球が変わってきているというのを、はっきりと実感できる今日この頃です。
そんな中で、私の趣味でありますマラソンも、8月、9月と大きな大会を迎え、練習に熱が入る時期となっています。
しかし、このマラソンは暑さには全く向かないスポーツでありまして、無茶なことをしますと、健康を害することになってしまいます。
そこで今回は、東洋医学的な立場からではなく、熱中症を体験したことのあるマラソンランナーとして「熱中症」に関する話をしたいと思います。


毎年、8月の末に札幌で行われる北海道マラソンは、ランナーにとってはあこがれの舞台です。しかしこの大会の恐ろしさは、8月の札幌で行われるという「暑さ」との戦いというところなのです。
北海道とは言え、8月の札幌は30度を簡単に越えます。この猛暑の中でのフルマラソンは、地獄のような暑さで、ランナーいじめとしか思えないくらいの過酷なレースなのです。
実は私は昨年、一昨年と、この大会で熱中症になり、リタイヤをしてしましました。
一昨年は、熱疲労による脱力感とめまいで、40kmの関門を通過できず、あえなくリタイヤ…。
昨年は、熱けいれんによる足の痙攣で、走れなくなり、収容バスに…。
何度も北海道マラソンの経験があり、予防法や対処法を知っていても、なる条件がそろってしまえば、簡単になってしまうのです。
気をつけなければいけないのは、この病気は、体温を調整する機能が、熱によってコントロールを失って起きる機能障害であるために、暑い日の運動時だけに起こる病気ではないということです。
激しいスポーツや重労働の場合は季節を問わず、また、冬に暖房のよく利いた室内で厚着をしていても、起こる場合があるのです。
たとえばお年寄りが、室内で窓を開けずにアイロンをかける様な時にでも、熱中症になり、倒れてしまうということは、実際に少なくないのですよ!
そこでまず、熱中症の種類を説明いたします。

◎熱中症とは、暑い環境で発生する体の障害の総称であり、次の4つがあるのです。

① 熱失神:
暑さにより皮膚の血管の拡張が起こり、血圧が低下し、脳の血流が減少し起こるもので、「顔面が蒼白」になり、「脈は速く」、「弱く」なり、「めまい」「失神」などの症状がみられます。
② 熱疲労:
脱水による症状で、「脱力感」「倦怠感」「めまい」「頭痛」「吐き気」などの症状がみられます。
③ 熱痙攣(けいれん):
大量に汗をかいて水分を消費したのに、水だけしか補給しなかったため、血液の塩分濃度が低下して起きる症状で、「足」「腕」「腹部」の筋肉に、痛みを伴う痙攣がおきます。
④ 熱射病:
暑さによる体温の上昇により、中枢機能に異常をきたしてしまう状態。「反応が鈍い」「言動がおかしい」「意識がない」といった意識障害がおこり、死亡率も高いのです。

この中で怖いのは、「熱疲労」と「熱射病」です。
「熱疲労」は死にいたることもある「熱射病」の前段階とも言われ、この段階での対処が重要となります。
熱射病の症状があれば、極めて緊急に対処し、救急車を手配する必要があります。
本人は「ちょっと体調が悪い」「少し気持ちが悪い」程度と思っている間に、症状が進んでしまうケースも多いのです。
自分では気づき難く、「たいしたことはない」と感じてしまうことが多いため、周囲の人間同士で、気をつけあうことが何より大切なのであります。

◎万一の事態に備えて、救急処置を知っておきましょう。

「熱失神」、「熱疲労」の場合は、すずしい場所に運び、衣服を緩めて寝かせて、水分を補給すると通常は回復します。足を高くして、手足を先から中心に向けてマッサージするのも有効です。
「熱痙攣」の場合は、0.9%の生理食塩水を補給すれば、回復します。塩分を補給するのです。
一番、重篤な「熱射病」は、少しでも早く体温を下げて、意識を回復させるかが、その後の状態を左右するポイントですので、現場での応急処置が重要です。
体温を下げるためには、水をかけたり、濡れタオルを当てて扇いだり、首・腋の下・足の付け根など、太い血管のある部分に、氷を当てる方法が効果的です。そして一刻も早く、病院へと運びましょう。


暑い中での運動や何らかの作業では決して無理せず、十分に水分を補給し、休息も取りましょう。
無理は禁物ですよ!!
これらの知識があれば、暑い夏も心配なく乗り切れることでしょう。