取材レポート 在宅の栄養指導など介護分野も手掛けるフリーランスの管理栄養士

前函館五稜郭病院医療部栄養科長 川村順子 氏

食品を通して介護、医療をサポートする業務用食材の専門商社㈱アキヤマは、低たんぱく食の調理教室の開催で食生活へのアドバイスも行っています。同調理教室で講師を務めている北海道栄養士会函館支部長の川村順子先生が、平成27年3月31日付けで函館五稜郭病院医療部栄養科長職を退職し、フリーランスの管理栄養士としてオフィスJ-kawamura(函館市大森町15番3号TEL0138-86 -5473 )を開設。川村先生に仕事の内容やこれからの取り組みをお聞きしました。

管理栄養士の仕事について教えてください。

■川村 順子氏

■川村 順子氏

まず栄養士の仕事を簡単にいうと、食事のメニューを立てるフードサービス、患者さんでもゲストでも食べているかどうかの確認までになります。管理栄養士は、がんなどの病状によって、消化にどういう動きが出るか、病態や解剖生理、薬との相互作用など、病態別に栄養の計画を立てます。
病態別では血液データをみながら、お薬との関係もあわせて疾患別に指導します。データを時系列でみて、正常範囲であっても除々に上がってくるデータがあれば、そこに着眼して、食生活とデータと比べていく指導もできます。食生活に関連したことであれば患者さんにもドクターにもフィードバックします。
前職は五稜郭病院医療部栄養科長で、通算28年間、五稜郭病院に勤務しました。フードサービスと栄養管理の両方に携わり栄養指導や実際に患者さんが食べられるかどうかをベッドサイドを訪問し、コミュニケーションを大切にしてきました。

フリーランスの管理栄養士となられた理由は?

全国レベルでのセミナーを実施したり、看護学校では臨床栄養学の講義を15年間務めさせていただきました。また、管理職を10年以上やらせていただいたので、今後は現場の仕事に就きたいと思いました。本当に困っていらっしゃる方の声をたくさんお聞きして、これまで五稜郭病院に育てていただいた今の自分が出来ることを実践しています。たくさんの方々に感謝の心を忘れることなく、今まで培ってきた経験や知識を活かして直接、私ができることを地域に還元したいです。

具体的にどういう内容の仕事を考えていますか?

19床未満の入院病床を持っている医療機関でも管理栄養士を配置することで診療報酬に反映されますが、人件費が必要になるので、点数が下がっても、管理栄養士を置いていないのが現状です。管理栄養士は非常勤で構わないので、医療機関から委託を受けて月2回、1週間に1回等の非常勤もできる可能性を切り開いていきたいんです。
また、現在、高齢化社会で食べられない方が増えています。体重が減少する原因は、咀嚼だったり、嚥下だったり、いろいろなことが関係しています。食べられなくなった方にも指導ができる在宅の業務にも踏み込んでみたいと思っています。
病院と契約しての在宅訪問栄養指導だけでなく、介護保険による在宅での栄養指導。栄養管理だけでなく、在宅に関してはフードサービスも兼ね備えた方が、よりベストです。

実際に調理もされるのですか?

在宅の場合、その方が普段食べていらっしゃるものを冷蔵庫の中をみて、判断してあげたいんです。その方の食歴に合ったもので、普段食べているものに加えたり、減らしたりしてメニューを考えてあげたいですね。
ヘルパーさんに調理をお願いしている方は、介護保険を使っている方ですから、どうやったら食べられるかというのが基本だと思います。ベースに疾患のことも考えながらの介護のための食事。ヘルパーさんには、そうした指導もしたいです。

在宅での介護食についてアドバイスをお願いします。

病院では嚥下困難食も4段階のものを自分でつくりあげて、実際に提供もしてきましたが、これは病院だから出来ることです。在宅でお一人のために調理するのであれば、労力や時間、材料費も含めたトータルで考えた場合、すべて手作りではなく、市販の介護用食品を使うこともひとつの手です。見た目がよく、美味しくなければ、食べられません。介護用食品をうまく利用したメニューが必要です。
介護用食品はいろんなメーカーさんのものが、たくさんあります。でも、嚥下食とか咀嚼障害といわれても、一般の方は分からないと思います。もっとかみ砕いて説明することが必要です。介護用食品はアキヤマさんで扱っているものやメーカーさんから頂いたサンプルで味も知っていますし、どんな成分内容なのかも分かっていますから、その方がどのような味がお好きなのか、どういうものを普段食べていらっしゃるのを見定めて、お薦めできればと思います。

これまで講演や調理教室もなさっていましたね。

■川村氏が講師を務めるアキヤマ主催の低たんぱく食料理教室(平成26年5月)

■川村氏が講師を務めるアキヤマ主催の低たんぱく食料理教室(平成26年5月)

アキヤマさんからお声をいただいて、低たんぱく食の料理教室は今後も続けます。また講演もしています。先日は薬剤師会からのご依頼で講演しました。というのもドクターから栄養を取りなさいとか、糖尿なので食事に気を付けてといわれても、ほとんどの方は調剤薬局に行ったときに薬剤師さんに聞くんです。こういう薬を飲んでいるけれど、どういう食事をすればいいんですかとか、栄養をつけるには、何を食べればいいんですかと聞くんですね。でも薬剤師さんは、お薬のことは分かっても、栄養や食事に関してのアドバイスは難しい。
先日は渡島、日高、胆振の薬剤師の方たちの研修会で、疾患別の栄養指導は、どうあるべきかという話を講演させていただきました。管理栄養士による栄養指導を講話し、それをベースにここまでだったらできるという判断は、薬剤師の方たちがしたほうがいいと思います。病態別の食事に関しても、薬剤師さんに指導をしたです。

管理栄養士のほかにもたくさんの資格をお持ちですね。

学会で勉強して、学会認定の資格を取ることも自分のモチベーションをあげるためのひとつなので、プロフェッショナルを追求するため、いろんな資格を取りました。
去年は日本ではじめてのがん病態認定の管理栄養士の第一回目の試験を受け、がん病態栄養専門管理栄養士の認定を受けました。資格で持っているのは、日本病態栄養学会の病態認定管理栄養士、日本静脈経腸栄養学会栄養サポート (NST)専門療法士、日本糖尿病療養指導士、学会の学術評議員もさせていただいております。
薬剤師、医師、理学療法士など他職種と連携するには、そういう方たちと共通の言語と認識を持たなければなりません。学会は、そのための勉強にもなります。フリーランスになり時間も取りやすくなり、行きたい学会には、すべていけるので凄く楽しみです。

根本琢巳営業部長
akiyamarepo14_15060111川村先生には、低たんぱく食の料理教室で講師をお願いするなどお世話になっております。先生には今後も料理教室をお願いしたいと思っておりますし、メーカーさんも交えて飲み込みの難しい方への講習会などを開催させていただければと思っております。
小林周平常務
akiyamarepo14_15060110川村先生が今回、独立されるとお聞きし、社長を始め当社でも先生をサポートさせていただきたいと思っております。経験豊富な先生ですが、フリーということでのご不安な部分もあるかと思います。それをどれだけ解消させていただけるかがアキヤマとしての使命だと思っています。今後とも先生から勉強させていただいて、先生の目指すビジョンに近づいていかなければならないと強く感じています。
 

(取材日:平成27年4月14日)