「治療用食品・介護用食品」─取材レポート/その5 新しい食文化を提案する食品総合商社(株)アキヤマ

治療用・介護用食品 利用者インタビュー(4)

株式会社アキヤマ 業務用食材・資材・機器専門商社
北斗市東前3-41 TEL 0138-77-7491

函館市にお住まいの佐藤由美子さんのお父様(89歳)は、4年前に倒れて、現在は、月の半分を自宅で過ごし、もう半分を施設でのショートステイを利用されています。
由美子さんはフルタイムで働いており、3人のヘルパーさんの協力の下、お父様の介護を続けています。今回は、由美子さんがお父様のために利用している高齢者向けの介護食品に関してお話を伺いました。

akiyamarepo05_1010_04自宅介護に至った経緯を教えてください。

今年5月末に父が入所していた施設との行き違いがあり、急遽施設を出なくてはならず、自宅で介護することになりました。本当に突然のことでしたので、受け入れるためになんの準備もできておらず困惑しましたね。

突然のことで、食事の用意などもわからない点が多かったと思いますが、(株)アキヤマの介護用食品との出会いはいつだったのですか?

知り合いがアキヤマさんの食品を利用していたので、存在は知っていました。そこで、急遽施設を出たときに、その知り合いの方に頼んで父の分の介護食品をアキヤマさんで買ってきてもらったんです。その食品を利用し、落ち着くまでなんとか凌ぎました。その後、色々なトロミ剤やゲル化剤を試すようになったんです。

現在は主にどのような商品を利用していますか?

(株)フードケアの「スベラカーゼ」とキッセイ薬品工業㈱の「スルーパートナー」という商品を利用しています。色々試したのですが父にはこの2つが1番合っているようです。

それでは商品について教えて頂きたいと思います。
まず、「スベラカーゼ」とはどういった商品なのでしょうか?

スベラカーゼという粉末をミキサーにかけたおかゆに混ぜて撹拌(かくはん)することで、ご飯をゼリー状にすることができるんです。父は今年の7月頃までは水分の少ないおかゆを食べていたのですが、徐々にそれも難しくなってきました。そこでご飯やおかずにトロミをつけたり、寒天のような食感にする商品を試したのですが、やはり咽(むせ)てしまうことが多かったんです。施設にいた時には誤嚥性(ごえんせい)肺炎を起こしたことがあったので、心配でした。アキヤマさんに相談したところ、スベラカーゼとスルーパートナーが適していることを教えてもらいました。この2つを利用したゼリー食は、プリンのような、卵豆腐のような食感で父もツルンと飲み込めたんです。飲み込みに困難な方には最適です。

「スルーパートナー」とはどんな商品なのでしょうか?

akiyamarepo05_1010_10粉飴と寒天が主原料の粉末です。おかずをミキサーで撹拌(かくはん)し、それを加熱し、スルーパートナーを加えます。冷やすと、おかずがゼリー状になります。味噌汁やポトフ、魚の煮つけなど、ゼリー状にできない料理はまずないと思いますよ。パスタや蕎麦などにも応用できます。スベラカーゼとスルーパートナーを利用したゼリー食のおかげで、今までより誤嚥(ごえん)は少なくなりました。

お父様の召し上がる食事は、由美子さんが召し上がるものと同じものですか?

そうです。私が普段食べるものを、スルーパートナーを加えることで父用にすることができるんです。一から作り直すことを考えたら、手間は少ないですし、なにより同じものを食べられる喜びは大きいですね。

他に「スベラカーゼ」「スルーパートナー」の魅力はどんなところでしょうか?

どちらも粉末なので、加える量によってゼリーにする硬さを調節できます。父に1番あった硬さの食事を用意することができるんです。ただ、スルーパートナーは食材によって、適量が違うのでその加減が難しいですね。感覚を掴むまで苦労しました。今でも毎日が試行錯誤ですね。

毎日が試行錯誤とのことですが、他に工夫されている点などはありますか?

スルーパートナーを使って「お茶ゼリー」というものを作りました。ほうじ茶1Lにスルーパートナー6杯を入れて、カロリーゼロの甘味料3杯を加えます。かき混ぜながら沸騰させて、これを冷ますとゼリーができます。他のおかずと同じように飲料もゼリー状にするんです。これは父の水分補給に役立ちます。緑茶やオレンジジュースなどでも作りました。麦茶も試したのですが、これは癖が強くて失敗でしたね。飲料の中にはゼリーにするのに向いているものとそうでないものがあるようです。スルーパートナーの適量も違いますから。

「お茶ゼリー」とはたいへんユニークな発想ですね。まるで創作料理のようですね。

他にも自宅へ介護に来ていただいているケア・キューピットのヘルパーさんの方々が「洋ナシ牛乳」といったものを作ってくれました。夏にはスイカやメロンといった食材もゼリー状にして作っていただきました。本当に一種の創作料理ですよね。ヘルパーさんたちとみんなで試行錯誤しています。

そういった工夫をされるのは、やはりお父様に色々なものを食べて欲しいという思いからなのでしょうか?

父は食べることにすごく欲のある人です。だから食べることが生きる希望に繋がると思います。可能な限り、食事を味わって欲しいですね。

この機会に、今後の要望などがありましたら、お聞かせ下さい。

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■ご自宅で取材 ※写真左からお父様・ケア・キューピットのヘルパー泉さん・ 佐藤由美子さん

ミキサーを使用し、加熱処理をすると、どうしても時間が掛かってしまうので、もっと時間を短縮できるような商品があればいいですね。それとスルーパートナーのような商品で液状やゲル状のものがあれば、適量がわかりやすく、調理は楽になるかもしれません。

最後になりましたが、介護をされている方に一言お願いします。

介護は1人では決してできません。私もヘルパーさんたちにいつも助けられ感謝しております。アキヤマさんにも助けられました。私はできるだけこういった経験を伝えていきたいです。それは、私がまわりの友人や知人に精神的にささえられて、一人ではないと思えたので自分自身の経験を生かして、現在自宅介護で苦労されている方々に何かお役にたてることがあればと思います。


(取材日:平成22年9月24日)