特集34 医療に介護の視点を取り入れ、居心地のいい入院生活を

toku_101029_takahashi_doc社会医療法人 高橋病院 高橋 肇 理事長
函館市元町32番18号 TEL 0138-23-7221
http://takahashi-group.jp/

toku_081031_takahashi_01函館山を背景にした元町地区で、「地域住民に愛される 信頼される病院」を理念に掲げ、回復期や退院後のリハビリテーションに力を入れている高橋病院。患者さんの満足度を高めるためには、医療と介護の連携が重要であるという高橋 肇理事長に、お話を伺いました。


「メディカルページ平成22年度版」(平成22年10月29日発行)の冊子に掲載された記事です。※院名や役職、また内容についても取材時のまま表記しています。

 

入院患者さんに気持ちよく過ごしてもらうために、いろいろな取り組みをされているようですね。

病院というのはサービスを提供するところですから、患者さんが入院しているあいだ、いかに居心地よく、満足感を持って、安心して過ごせるかというのは、とても大事なことです。医師や看護師はどうしても危急の症状に対処することに追われがちですから、うちでは平成19年から顧客サポートセンター「ひまわり」を設置して、独自のコンシェルジュを2名おいています。コンシェルジュとは、ホテルにもいますが、総合相談受付係のような存在。入院して1週間以内に必ず病床を訪ねることになっているんですよ。
その際、医療的なことは医療者に任せて、たとえば趣味とか、これまでの暮らしとか、気にかけていることとか、そのかたがずっと歩んできた「生活史(生活歴)」を聞きとって、そこから患者さんの対応に入り込んでいくということをしています。聞きとった内容は電子カルテに入力して、医師や看護師などと情報を共有し、治療に役立てていくわけです。

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■高橋 肇 理事長

生活史ですか!たとえば、どのような活用例がありますか。

「カラオケが好きで、歌いたいね」という話があれば、併設施設の防音カラオケルームにお連れして、歌ってもらうということもあります。たとえば脳梗塞の方なら、後遺症でしゃべりにくくなりますよね。それが、カラオケになると非常によく歌えて、口がまわるんですよ。楽しみながら運動になる、リハビリになるというのは、いいじゃないですか。
リハビリはなかなかしんどいものですが、それをエンジョイしながら未来に向かっていくというのは、医療からとらえたリハビリ、あるいは介護ケアの目指さなければならないところかなと思います。

入院生活についての要望なども、聞きとりされるのですね。

はい。食事の問題、部屋の問題なども、ひまわりチームが聞きとります。ベッドが硬いとか、リハビリの時間が短いとか、現場で対応できるものは現場で、それから全体的な問題はサービス向上委員会というのがありますから、そこで対応することもあります。この夏はかなり暑かったので、クーラーがなくても涼しくなる方法や、院内の気になる臭いへの対応なども、チームを組んで検討しましたね。
コミュニケーションをとるなかで、今何を希望しているか、何を不快に思っているかを早いうちに吸収して対応していくことは、患者さんの精神的な安定のためには重要なのです。それだけで、年間の院内投書の数は5分の1以下に激減しましたから。

とても細やかな対応をされていますが、そこに至るきっかけはどのようなものだったのでしょう。

もともと私は循環器系の内科医ですけれど、「人」が好きといいますかね、医者にならなければ手相をみる占い師になっていたかもしれません(笑)。メンタルのことを大切にしたかったんじゃないかなと思うのですよ。私たちの座右の銘のひとつは「医療だけでできることは少ない」ということ。もともと、一人一人の生活史というか、過去があって今があるわけで、心身ともに病んでいるものは、過去から振り返ってみなければ解決できませんから。
たとえば内臓のどこかが悪いと言っても、それは内臓だけの問題ではなくて、そのかたの今までの生活環境とか、個人的な問題とか、メンタル面も含めて、いろんなものが複合して、体に表れてきているのです。生活に根差したところを聞きとらないと、いい医療はできないのではないかなと思っているんですよ。

病院の方針に「医療と介護の連携」が挙げられていますが、それも同様の理想形ということでしょうか。

そうですね。これまで医療と介護(ケア)のあいだには、大きな乖離(かいり)がありました。医者の側は「診断・治療」を目的としていますから、患者さんの内側、内臓をみます。一方、介護担当者は「生活支援」が目的ですから、患者さんの気持ちや体力、筋力、生活など、外側をみます。みるところが違うのですね。
たとえば、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血という3つの病気があると、医療側は診断法・治療法などで大きく異なる疾患だと認識しますが、ケア側は、脳の障害よりも表れた生活上の障害に対応するものだから、同じようにみるわけです。そこを、同様の尺度をもって情報を交換できれば、本当に患者さんのためになる医療と介護ができるようになる。たとえば、その人の生活状況や薬ののみ方などの情報が治療に役立ったり、逆にその病気ならではの今後の見通しや薬の影響が把握できれば、より細やかなケアができますよね。

toku_101029_takahashi_03そのような連携を可能にするには、何が必要でしょうか。

医療が中心になる急性期はたかだか数週間、あとは介護側が主役になるので、共通認識が可能になる簡単な評価方法が必要です。われわれは、たとえば運動機能や嚥下(えんげ)機能など、患者さんの日常生活12項目について、それぞれ5段階の評価基準を設けたシステムを採用しています。食事なら、自分でちゃんとできる、食べこぼしながら自分でできる、ヘルプが必要などの5段階に分けてイラスト化し、だれでも評価できるようにすると、現状、ひとつ上、ひとつ下のレベルがはっきりして、ケアの方向、目標がはっきりしますね。これをスマートフォンなどで携帯することによって、医療側と介護側で情報を共有できますし、グラフ化して経時変化をみることで、急性期、回復期、在宅期を通して一貫した見守りができるわけです。その際に力を発揮するのがIT技術。電子カルテやオンラインの評価システムは、患者さんのQOL(生活の質)の向上をサポートするのに欠かせない、強力な武器になりますよ。

 


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