第28回 時間栄養学

toyo_doc「東洋医学的 健康針断」では、益井東洋治療院の益井院長が、現代西洋医学とは、少し視点を変えて診た「体や健康」についてのお話をしていきます。お気軽にお読みください。
<東洋医学的 健康針断>

コラム寄稿:益井 基 院長
(益井東洋治療院)


食事に関して興味をお持ちの方は多いと思います。

テレビを見ても雑誌を読んでも、グルメの話題やダイエットの方法で情報はあふれていますよね。

特に「~を食べないで痩せる」とか「食事の回数を減らして痩せる」など、痩せることに関する食事の情報たるやひどいものです。

「耳に鍼をすれば痩せますか?」なんて事を聞かれるのはしょっちゅうです。

しかし本来、食事というものは人の健康の維持・増進に大きく係わっている重要で必要不可欠な要素なのですよ。

今回は正しい食事のとり方についてお話したいと思います。

皆さんは一日の食事をどのように摂っていますか?

それぞれの生活習慣の中で、「回数」も「嗜好」も「量」も十人十色で全く違うのではないかと思います。

従来の栄養学では「何をどれくらいとるか」を中心に語られてきましたが、近年ではそれに加え「いつ」「どんな順番で」「どのくらいの速度で」食べるかという、時間的概念が重視されるようになってきているのです。

これが最新の考え方であります「時間栄養学」と言われるものであります。

人の健康と長寿のカギとなっているものに2つの「体内時計」があるのですが、この体内で時間を操る仕組みには「時計遺伝子」と「テロメア」と言うものが握っています。

朝になったら目が覚めて活動して、日が暮れて夜になったら寝るという大切な1日のリズムを「概日リズム」と言い、季節による日照時間の違いを考慮して、概ね1日25時間周期で刻んでおり、これをつかさどっているのが「時計遺伝子」であります。

食事時間がバラバラであったり、太陽のリズムとは違う極端な夜型生活などといった「概日リズム」から外れる不規則な生活を送っていると、時計遺伝子に乱れが生じます。

すると睡眠障害やうつ、生活習慣病や癌、肥満、メタボなどと様々な不調を招くことが分かってきております。

また、テロメアとは寿命の回数券と言われ、染色体の両側にあるDNAであります。

細胞分裂を繰り返すたびに少しずつ短くなっていき、それが無くなると細胞は分裂できなくなり寿命を迎えます。

このテロメアは時計遺伝子と深くかかわっており、時計遺伝子のリズムを無視した不規則な生活を送っていると短くなる速度が速くなると最近の研究で解明されているのです。

つまり時計遺伝子の情報通りの正しいリズムで生活を送ることが、テロメアを最大限有効に使用する「健康」と「長寿」の大事なポイントであり、それに即した食事が「時間栄養学」と言うものなのであります。

時間栄養学で最も重要とされるのが、朝食を摂ることです。

なぜなら時計遺伝子には、中枢時計遺伝子と末梢時計遺伝子があるのですが、朝起きて朝日を浴びると脳がリセットされ24時間のリズムを刻み始めます。

しかしこれだけですと末梢時間遺伝子は眠ったままです。

これをリセットするのが朝食なのであります。

朝の光を浴び、朝食を食べることで中枢・末梢とも24時間のリズムのリセットが完了します。

このずれがないように朝食は朝の光を浴びてから2時間以内が理想であります。

このリセットができないと25時間周期のまま1日の生活が始まり、少しずつ1日のリズムが乱れ不眠や自律神経の乱れとなってくるわけです。

また、朝食の内容により時計遺伝子のリセット力に違いが出るのです。

①栄養バランスの完璧な食事 ②糖質とタンパク質だけ ③タンパク質だけ ④糖質だけ

この順番でリセット力が落ちるということが分かってきました。

また、食物繊維や一部のビタミンなどがテロメヤの短くなる速度を遅くすると言うことも分かっています。

食べる時間ですが、脂肪の合成を促すホルモンは18時から朝4時位にかけて活性化します。つまりこの時間をさけて食事をとれば太りにくいということになるでしょう。

このように体は太古の昔より刻み込まれたリズムを考えて食べると言うだけで、「健康」と「長寿」を実践することが可能であると思います。

難しいことではありません。

朝起きたらすぐにカーテンを開き、窓を開けて朝日を浴びて下さい。

そして栄養のバランスの良い食事をしっかりと食べて下さい。

これだけで笑顔での生活ができるでしょう。

是非、皆さん実践してみて下さい!

〈参考〉 香川靖雄先生 「時間栄養学」