函館五稜郭病院主催 第12回函館市民健康講座

禁煙や検診などがんの予防から緩和ケアまで分かりやすく解説

函館五稜郭病院(中田智明病院長)が平成28年10月15日、12回目となる「函館市民健康講座」をホテル法華クラブ函館で開催した。同病院の医師らが、肺がんや乳がん、前立腺がんなどの治療法や緩和ケア、さらにがん検診の必要性などを分かりやすく解説。会場につめかけた市民からの質問に答えた。


平成28年10月15日に開催されたものです。

髙金副院長

髙金副院長

健康講座は同病院副院長の髙金明典先生の開催挨拶に続いて、呼吸器内科科長の中田尚志先生が「禁煙のすすめ」を講演した。中田先生は、煙草の害から解説。喫煙者は非喫煙者よりも平均で10年短命であり、しかも健康寿命も短いことを説明。ニコチン依存症の人は、煙草を吸えばイライラやストレスが回復できると思っているが、実際にはニコチン切れのストレスを回復させているだけ。禁煙外来では、ニコチン依存症の治療として、ニコチンガムによる置換法と薬物療法があることを説明した後、自らの禁煙方法を紹介。禁煙開始日まで減煙し、なるべく暇なときから禁煙を開始すること。さらに水や氷、深呼吸などタバコが吸いたくなった時に役立つグッズを紹介し、「タバコの煙から解放されて、死ぬまで元気で」と禁煙を呼びかけた。

中田先生/高橋先生/米澤先生/仙石先生/浅井先生

左から、中田先生/高橋先生/米澤先生/仙石先生/浅井先生

続いて泌尿器科科長の髙橋敦先生が「前立腺がん治療の最新の話題」として、前立腺の説明から始め、男性に限れば前立腺がんの罹患者が一番多いこと。増加している原因は、高齢化と生活習慣、特に食生活の欧米化が上げられ、80歳以上の男性は3割から4割に前立腺がんのリスクがあると解説。治療法として、局所治療と全身療法があるが、局所治療では、函館五稜郭病院で導入しているダビンチによるロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘出手術は、より正確で安全な手術が可能であること。また、新しい抗がん剤の開発も進み、状況によって、いろいろな薬が使えるようになったことから、「QOLを維持しながら天寿を全うできれば」と話した。
「乳がんと妊娠・出産」をテーマに外科主任医長の米澤仁志先生は、乳がんに罹患する女性の数は30代から上昇するが、晩婚化とともに出産時期も遅くなり、乳がんの治療と出産の時期が重なるケースもあると若年性乳がんの問題点を指摘。乳がん患者の妊娠出産については、手術後に適切な治療を受けていれば考慮できるが、術後の補助療法によっては妊娠が出来ない、あるいは妊娠を避けた方がよい場合もある。また妊娠出産によって乳がんが悪化するわけではないようだとも話しながら、「乳がん検診の受診をお願いします」と結んだ。
緩和ケア科科長の仙石早苗先生は「緩和ケアと精神科」の演題で、平成24年6月にまとめられたがん対策推進基本計画で重点的に取り組むべき課題とされているのが、がんと診断された時からの緩和ケアの推進であることを話した後、緩和ケアチームの構成メンバーには、精神症状の緩和に携わる専門的な知識及び機能を有する医師を1人以上配置することが整備指針とされている。その理由は、がん患者には難治がんの診断やがんの再発や進行、さらに積極的抗がん治療の中止など“悪い知らせ”に遭遇する。それが大きな精神的負担となり、うつ病や適応障害、せん妄など精神科領域の診断名がつく症状を引き起こすことがあるためと説明。がんは長い治療が必要な慢性疾患という見方に変わっており、心身を整えるために精神科の医師のアドバイスが有効と解説した。
最後に健康管理センター保険師の浅井千絵美先生が、「“症状がないからこそ”のがん検診」をテーマに定期的な検診が、がんの早期発見と良好な経過につながるとがん検診の大切さを解説。肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮がんなど主な検診の概要を説明し、検診で異常が指摘された時には精密検査が重要。2人に1人ががんに罹患し、3人に1人ががんで亡くなっている現状から、がんは決して他人事ではないと強調。病気の発症は自分では決められないが、検診を受けるかどうかは自分の意思で決められると、がん検診の受診を呼び掛けた。
講演の後、髙金副院長の進行で、参加者から寄せられた質問に各先生が回答して閉会した。 函館五稜郭病院主催の「函館市民健康講座」は、函館市民や近郊住民に医療への理解と知識を深めてもらうことを目的に平成19年の第1回以来、同病院の診療内容等について各診療科の医師が講演を行っている。第4回以降は、同病院が「地域がん診療連携拠点病院」の指定を受けたことから、がんをテーマとした講演が行われている。

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