取材レポート 生活を楽しむ健康寿命は食事が延す在宅介護の食事を応援する栄養補助食品

管理栄養士 川村順子氏(オフィスJ-kawamura代表)

治療用食品や介護用食品を通して医療・介護分野をサポートする業務用食材の専門商社㈱アキヤマ。今回は同社が主催する調理教室の講師も務め、フリーランスの管理栄養士として活動する川村順子先生(オフィスJ-kawamura代表)に高齢者在宅介護の大きな助けとなる栄養補助食品についてのアドバイスをお願いしました。 
akiyamarepo16_07【川村順子先生のプロフィール】
平成27年3月、28年間勤務した函館五稜郭病院を退職。
フリーランスの管理栄養士としてオフィスJ-kawamura
(函館市大森町15番3号TEL0138-76-1263)を開設。
現在、クリニックとの契約による栄養指導やショートステイの栄養
管理に携わるほか、講演や特定保健指導、執筆活動にも専念。
《 公 職 》
●日本病態栄養学会(学術評議員)
病態栄養認定管理栄養士
がん病態栄養専門管理栄養士
日本糖尿病療養指導士
●日本静脈経腸栄養学会(学術評議員)
栄養サポートチーム(NST)専門療法士。

在宅でご家族から介護を受けている高齢者の方の栄養管理について教えてください。

高齢者の方は気持ちにムラが出てきたり、落ち込んだりした時にお食事が摂れなくなります。在宅での介護では、ご家族や周りの方が、そういう前兆を見極めることが大事だと思います。ショートステイでも経験しましたが、全然食べられない時もあれば、全量食べられる時もあるなど、気持ちと同じように食事にもムラがあるのも高齢者の方の特徴です。
高齢になると味覚の低下もみられ、嗜好も変わり、美味しく食べられなくなる方も非常に多いのです。味覚を感じるのは、舌の味蕾(みらい)ですが、高齢化によって味蕾の委縮が起きてきます。味蕾の新陳代謝を促すにはタンパク質や亜鉛の供給が大切です。

運動量の少ない高齢者でもエネルギーは必要でしょうか?

生活を楽しむことが健康寿命を延ばすことに関わってきます。まずは食事を楽しむということが最も大事だと私は思っています。食べなければならない、食べなさいといわれることが凄いストレスになって、食べられなくなることもあります。3食楽しみながら、きちんと食事をして、生活や趣味を楽しむおおもとになるのが食事、つまり栄養です。健康寿命を延ばすためには、それが一番大事だと思っています。
主食のご飯もお茶碗一膳のご飯を食べられていた方が、噛むことや飲み込むことが厳しくなって、ご飯をおかゆに替えると、量的には同じお茶碗一膳分でも、ご飯を普通に盛ると150グラムで240キロカロリーありますが、おかゆになると120キロカロリーになり、エネルギー量が半減します。

足りないエネルギーや栄養を簡単に摂る方法は?

年齢に関係なく、体重が減少した時には栄養が足りない状態です。疾患を疑う事も大切ですが、まずは食べられないことによる体重減少を見過ごさない。そして体重減少がみられた時には、エネルギー補給をすることが大切です。
足りない栄養分は何かを見極めることも必要ですが、副食も食べられていないのであれば、たんぱく質の補給も大事です。ご家族の方がお昼に出かけるので、パンを用意しているというような時でも、冷蔵庫に栄養剤が1本でもあれば、安心できると私は思います。経口で飲める栄養剤は、とても効率的な方法です。
通院していていらっしゃれば、医師が栄養不良と診断した時に、出していただける栄養剤もあります。これは保険適用で軽い自費負担で購入が可能ですが、薬品タイプは、種類も味も限られています。患者さんが、どうしても飲めないという時には、食品タイプのものもあります。全額ご自身のご負担にはなりますが、好みの味ですから飲めて、栄養が摂れるということが第一です。

栄養補助食品について教えてください。

■アキヤマで買い求め出来る栄養補助食品の一部

■アキヤマで買い求め出来る栄養補助食品の一部

一番大事なことは好みの味かどうかだと思います。食事は残したけど、栄養補助食品で補うので大丈夫という安心感もあります。
病院では食事が摂れなくなると、末梢輸液といって静脈から輸液(点滴)をしますが、末梢輸液は、多くても500㏄のパックで210キロカロリーのエネルギーしか摂れません。時間も高齢の方ですと2時間から3時間かかります。
私は210キロカロリーを目標にしましょうとスタッフには話しています。つまり輸液一本の栄養を食べる事で摂らせたいのです。カロリーは砂糖と同じで甘さは8分の1という粉飴やマクトンゼロパウダーという粉の油質。これをおかゆに混ぜて、食べていただくと点滴一本分の210キロカロリーを摂ることができます。

味で選んで無理なく利用できそうですね。

ただ食品タイプの栄養補助食品は金額的に高いと思われるかもしれません。でも、食材をいろいろ買い求めるコストよりも安いし、少量でも栄養の詰まったものが美味しく食べられます。メーカーさんが開発した新商品の成分をみてみると、これは凄いと思うものがたくさんあります。

■アキヤマでは治療用食品のカタログも用意

■アキヤマでは治療用食品のカタログも用意

食材のコストや作る人の手間暇も考えれば、栄養補助食品は価格面も含めてバランスがとれていると思います。でも、栄養補助食品がどこで買えるかをみなさんご存知ではないのですね。以前、在宅の栄養指導をした時、粉飴の本物を初めて目にしたというご家族の方がいらっしゃいました。欲しい時にどこで買えるかを伝えるツールが中々ないので管理栄養士の方も苦慮していると思います。
調剤薬局からも問い合わせがあって、栄養補助食品のカタログを持って行ったこともあります。調剤薬局に置いていただければ、お薬を取りに行った時に買っていただけます。かかりつけ薬局の役割のひとつに食べられない方や疾患のある方へのポイントアドバイスがあります。栄養補助食品は、これにつながる対応と思います。勉強会やセミナー等で、薬剤師さんに管理栄養士の知識を吸収してもらい、それを患者様に還元する。それをお伝えするのも、私たち管理栄養士の役割だと思っています。

小林周平常務
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当社では、患者様の声や病院や施設の栄養士さん、またお医者様からのご要望などを担当のセールスがお聞きして、そうしたお声を栄養補助食品の品揃えに反映させています。が大きいと思います。私自身もそうですが、社員一人一人が日々勉強して、超高齢化社会の中で、当社が医療機関や介護施設、さらにご自宅での介護にも、食品を通してお役に立っていくことが大切だと思っています。
根本琢巳営業部長
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当社では、栄養指導はできませんから、もし、在宅で商品をご希望のお客様がいらっしゃいましたら、栄養士さんの方から、アキヤマさんで買えますよとご紹介いただければと思います。また当社でご案内して病院給食で採用されたものは、店舗にも在庫を確保しております。、ご自宅での介護用に1個2個での販売もしております。今後も商品構成を充実させてまいります。
 

(取材日:平成28年5月18日)