㈱アキヤマ第48回業務用食材・機器フェア2017開催

低糖質スイーツの紹介や病院給食業向けなどのセミナーも

株式会社アキヤマ 業務用食材・資材・機器専門商社
北斗市東前3-41 TEL 0138-77-7491
http://www.akiyama-fs.co.jp/ (オンラインショッピング)

業務用食材の専門商社㈱アキヤマが48回目となる「業務用食材・機器フェア」を開催した。平成29年10月2、3日の両日、函館流通ホールの会場では、『競合ライバル店に勝つ、差別化メニューの提案!!』をテーマに人手不足を解消する簡単調理で美味しいメニュー提案コーナーのほか、今回初めて函館洋菓子協会の協賛による低糖質スイーツなどの実演・試食コーナー、さらに外食産業や病院・学校給食の関係者に向けたセミナーも開催され、賑わった。


「メディカルページ函館・道南版2017年冬号」(平成29年12月1日発行)の冊子に掲載した記事です。

 

■小林久周社長

■治療・介護用食品のコーナー

■賑わったフェア会場

「函館洋菓子協会の小川会長が協会として低糖質スイーツを始められるということで、実演と試食のコーナーを今回出店してもらいました。糖分は抑えられているが美味しく、普通のスイーツと変わりません」 今回、初出店となった函館洋菓子協会協賛によるスイーツ実演・試食コーナーで紹介した低糖質スイーツについて、㈱アキヤマの小林久周社長はこう話す。
さらに小林社長は食に対するニーズが変化、フェアの内容もそれに応じて変わっており、今時はどのコーナーでも試食品を提供。実際に食べて価値を知ってもらうスタイルが主流となっていると語る。
「元気で長生きするにはバランスの取れた食生活が大切。でも、糖尿病や腎臓病など、糖分やたんぱく質を制限されている方に身体のためだから我慢して食べなさいというという時代ではなくなりました。味覚は覚えていますから、味は変えないで美味しく食べて身体によいというのが今の治療食です」と話す小林社長。美味しく食べたいという想いは治療食に限らず低糖質スイーツにも共通するニーズ。フェア会場での試食も、そうした要望に応えているものだ。
また、㈱アキヤマの小林周平常務は低糖質スイーツについて― 「今回のフェアのテーマは、“競合ライバル店に勝つ、差別化メニューの提案!!”ということで、低糖質スイーツに取り組んでみようというお店が一店でも増えてくれれば、目的のひとつは達成できたのかと思います」と話し、さらに洋菓子店が低糖質スイーツを手掛けることでスキルアップになり、フェアのテーマである“競合ライバル店に勝つ、差別化メニューの提案!!”につながればとの思いを語った。

MCT(中鎖脂肪酸油)をテーマに講演

■講師の河合良成さん

■病院給食事業者に向けてのセミナー

フェアの期間中、会場では製菓・製パン、外食、病院給食など各業種の関係者に向けたセミナーも開催された。この内、病院給食に携わる関係者には、日清オイリオグループ㈱ウェルネス食品営業部営業課の河合良成主事が、「MCT(中鎖脂肪酸油)の新たな可能性と活用について」をテーマに講演した。
油の主成分である脂肪酸は、分子の鎖の長さ(炭素数)で、短鎖、中鎖、長鎖に分けられる。一般的な植物油であるLCT(長鎖脂肪酸)の炭素数は約18個。これに比べてMCT(中鎖脂肪酸油)は約半分の炭素数で構成されている。さらに日清MCTオイルはMCTの中でも、炭素数が8個と10個の短いものだけでつくられている。
MCTの特長は、無色・無臭で親水性があり、あぶらっこくないこと。栄養も普通の油(LCT)の4倍で、消化、吸収性に優れ、エネルギーになりやすい。また、LCTがリンパ管から血管を通り全身へと消化吸収されるのに対して、MCTは、たんぱく質や炭水化物と同じように血管から肝臓・全身へと消化経路が異なる。
MCTは50年ほど前から病院では未熟児への栄養補給として使われていたほか、慢性腎臓病や消化器系疾患、難治性てんかんなどの病態に適用され、近年は認知症やがんとの関連性の研究も進められている。
こうしたMCTの特長について説明した後、河合氏はMCTを活用した臨床現場での効果として、脳卒中による嚥下障害患者の入院日数の短期間化や早期に完全経口での摂取が可能になったデータを紹介。また、脳はブドウ糖(グルコース)をエネルギー源としているが、MCTが多く産出する脂肪酸の分解物であるケトン体は、脳がブドウ糖の代替エネルギーとして利用。これによりアルツハイマー病の要因である脳の栄養不足が補われ、症状も改善する例が学会で発表されていること。また、がん細胞は糖質をエネルギーとしているが、 低糖質で高脂質食のケトン食療法により肺がん患者の生存日数が大幅に延びるなどの治療成績を紹介した。
最後に河合氏は、MCTは体脂肪として蓄積されにくく、消化吸収に優れた油脂。過剰に摂取しても副作用が少なく、エネルギー補給目的の栄養源としても利用が可能。栄養状態が良くない人にはアルブミン(栄養状態)の改善も期待できると講演をまとめた。

糖尿病患者のための「低糖質スイーツ」の普及に向けた取り組みがスタート

■低糖質スイーツのコーナーでPRする函館洋菓子協会の榊原理事

■小川一彦函館洋菓子協会々長

今回の「業務用食材・機器フェア」では、初めての試みとして「低糖質スイーツ」の試食ブースが設けられた。低糖質スイーツとは、糖分の摂取を控えなければならない糖尿病患者のために考え出されたお菓子のこと。砂糖の代わりに甘味料を使用するほか、小麦粉の代わりに生大豆を挽いた粉やアーモンドの粉末、小麦の胚芽や皮の部分などを使用して糖質を抑えているという特徴がある。今回は、海外メーカーが開発した低糖質スイーツ専用のミックス粉で作ったサブレやレアチーズケーキなど4品目が試食として出品された。
ブースに立って来場者に試食を進めていた函館洋菓子協会の榊原理事は、「世間で流行ってきていることもあり、低糖質スイーツに関心を持つ人が増えていると感じます」と手ごたえを感じていた様子。試食した製菓業者の担当者は、「糖尿病患者の食事や病院食にもデザートを付けたいという目的のお菓子だと考えると十分おいしいし、きちんと甘みも感じます」と感想を述べた。その反面、自社で低糖質スイーツを手掛けるかどうかについては「商売として考えた時に売り先をどうするかが課題で、ぜひやりたいと言うのはなかなか難しい」とも話した。
榊原理事も同様の考えを示し、「いい取り組みではあるが、コンスタントに量が売れるものではないため、店舗ごとに作ってもロスになってしまう可能性が大きい」と課題を指摘。「業界団体全体の取り組みとして作り、それを各店舗で売る方式が現実的。今はコンビニでも低糖質スイーツが売られる時代になってきているので、この函館地域でも業界として取り組んでいるとなれば、消費者の購買意欲も湧いてくるのではないかと思います」との見通しを示した。
試食用の低糖質スイーツを実際に製作した函館洋菓子協会の小川一彦会長によれば、今回は低糖質スイーツ用ミックスのメーカーが用意したレシピを忠実に再現したとのこと。砂糖を使わないことで通常の製菓工程と異なる部分が生じるため、最初は難しそうだと思っていたという。だが、いざ作ってみるとさほど難しい技術は必要ではなく、「お菓子作りの基本的な知識があれば誰でも作れるし、家庭の設備でも十分作れることがわかりました」と話す。もはや低糖質スイーツは特殊な知識や技術が必要なお菓子ではなく、グッと身近な存在になったと言える。
その一方で小川会長は「低糖質スイーツとして許される範囲で材料を変えたり加えたりすることで、さらにおいしいものが作れるはず。味にはまだ改善の余地があると思う」とさらなる進化への意欲を燃やす。また、メーカーが用意した低糖質スイーツのレシピは限られた種類しかないが、「研究次第でまだまだいろいろなお菓子を作れる可能性がある」と今後の発展性にも期待を込めた。

会場アンケートでも好評の低糖質スイーツ

■アンケートに答える来場者

フェア会場では「低糖質スイーツ」を試食した来場者にアンケートを行った。  ①低糖質スイーツを知っていましたか?②食べてみてどうですか?③周りの糖尿病患者さんに薦めますか? の3つの質問で、この内①については、「知っていた」36%、「知らなかった」64%と、認知度はいまひとつの回答だったが、実際に試食してみての感想を聞いた②の回答は「甘い・美味しい」89%、「甘くない・美味しくない」11%と、ほぼ9割の人が、「甘くて美味しい」と回答。家族や知り合いの糖尿病患者さんに薦めるか?という③の質問でも、「薦める」87%、「薦めない」13%と、これも回答者の内のほぼ9割が薦めるほど、納得した様子だった。

 

㈱アキヤマ 小林周平常務

低糖質スイーツは毎日コンスタントに売れるものではないので、個々の洋菓子店が独自に製造して店頭に常時並べるのが難しい商品です。ですが、病院や施設などでの給食に使用したいといった場合などは事前にアキヤマにご連絡いただければ、弊社が事務局を務める函館洋菓子協会の加盟店のなかからオーダーに応えてくれるお店をご紹介します。このようなお手伝いこそ私どもサプライヤーの使命ですし、この仕組みはこの地域に低糖質スイーツが普及する上での大きな可能性を担っていくと思います。

 


(取材日:平成29年10月2日)