介護事業の将来に対応!本来のサービス以外の業務をDXで簡略化!

白ゆりグループ ㈱メディカルシャトー函館が展開するデジタルテクノロジー

㈱メディカルシャトー函館:函館市美原2丁目50-2 TEL.0138-34-3231 https://www.shirayuri.gr.jp/

『ライフプレステージ白ゆり』ブランドの高齢者介護複合施設を運営する白ゆりグループ(㈱メディカルシャトー・代表取締役佐藤文彦氏)が進めるDX (デジタルトランスフォーメーション: デジタルテクノロジーを使用して各種の要求を満たすプロセス)戦略と目指すものを㈱メディカルシャトー函館・函館介護本部佐藤邦広部長に聞いた。


「メディカルページ函館・道南版 2024年冬号」(令和6年11月20日発行)の冊子に掲載された記事です。

 

白ゆりグループのICT、DX化への取り組みを教えてください

■㈱メディカルシャトー   佐藤文彦社長

 当初導入は会計とレセコンソフトくらいでした。介護用ソフトも記録は手書きで、レセプト作業のみの使用でした。5年前に介護記録の在り方を刷新し、ケアコネクトジャパン様の「ケアカルテ」を導入して、介護記録をipadで入力するスタイルに変更しました。

 また、入居者様の睡眠の状況を把握できる「眠りscan(スキャン)」をほぼ同時期に導入しました。これはケアカルテ・ナースコールとの連動が可能で、ナースコールが鳴ったことを自動的に介護記録にしてくれて、介護記録に要していた時間を約1/7に削減できました。

 さらに膨大になった労務管理を見直し、給与明細や出退勤の打刻を各個人のスマートフォンにて確認・実行できる『HRMOS (ハーモス)勤怠』を導入したのが、約3年前です。ただ、介護施設では「シフト作成」の他に行政に「勤務形態一覧表」を提出する必要があります。 

 「予定」と「実績」二つの書類が必要で、作成に多くの時間を要しました。そこで、弊社のグループ会社であるサインキューブ社が開発した「シンクロシフト」を導入し、自動でシフト・勤務形態一覧表を作成することができ、介護施設の管理者たちの負担軽減になりました。

社員同士の情報共有の方法は

 現在、主に情報共有システムとして使用しているのが、「zoom(ズーム)」「slack(スラック)」「notion(ノーション)」です。すべてコロナ禍の時に導入しました。「zoom」は各拠点に行かずにオンラインでミーティングや会議ができます。

■slackなどPCで確認

 移動時間などを削減でき、職員同士が意見を交わせる場面が増えたと思います。「slack(スラック)」は、社内メールの変わりに使用しています。社内でのメールのやり取りは、やはりタイムラグが生じます。コロナの感染者やクラスターの発生など即応性を求められる連絡には不向きでした。「slack」はわかりやすく言うと「LINE(ライン)」のような使用感です。

 「LINE(ライン)」は、社員の多くがプライベートで使用しているため、仕事とプライベートを切り分けるという意味でも敢えてslackを導入しました。

 また、マニュアルなどはノートアプリの「notion」を導入しています。現在では社内規定や業務マニュアル、会議の議事録、さらにBCP(事業継続計画)などにも運用しています。

■ハナストを使用

 その他、今までExcelファイルで行っていた売上管理や実績報告などは属人化しやすいものであったため、「kintone(キントーン)」というソフトを導入し、データを入力するだけで、多くの工数(ある作業が完了するまでに必要な時間と人数)を低減することができました。

 さらに、今年の春からipad入力での介護記録と並行して、職員が話した言葉で記録する「ハナスト」を導入しました。「ハナスト」はケアカルテと同じくケアコネクトジャパン社が開発したものです。

 職員は骨伝導型のインカムを装着して、インカムにてケアの実施内容を話すと介護記録として文章化され、記録されるシステムです。つまり「話す」だけで介護記録として記載されるシステムです。特にモーニングケアやナイトケアなど忙しい時間には有効的です。もちろん、職員同士の連絡手段としてのインカム機能もありますから、とても便利です。

介護本来の業務をいろいろなソフトで簡略化していますね

 そうですね。当たり前のようしていた業務にITを導入することで多くの時間効率が図れていると実感します。現在、弊社のデイサービスでは利用者様の送迎ルートを記載している送迎表を作成していますが、意外と手間がかかる作業でした。

 そこで今年の春から、Panasonicが開発している「Drive Boss(ドライブボス)」を使用し、自動で利用者さんの登録情報からAIが最適なルートを導き出すシステムを導入しました。今まで1時間かけていた作業が現在では10分くらいで作成することができています。

 また、効率化を求められる介護業界全体の動きとはうらはらに、必要な書類や会議も増えていることから、このような会議等の議事録作成などもAIで作成できないかということで、試運転しています。まだトライアル中であるため、精度の検証は必要ですが、新たなチャレンジの真っ最中です。今後はIT導入=AI関連を使用することはさらに必要不可欠になると感じています。

■白ゆりグループのDX構成図

白ゆりグループがDXに取り組む目的は

 DX化は単に効率化のためだけではないと思います。介護スタッフが、この仕事に従事した理由は、「介護をして人の役に立ちたい、利用者様と一緒に過ごしたい」という気持ちだったと思います。しかし、勤めると書類作成業務があり、自身がステップアップするほど、必要な管理ツールも増え、その作業に時間や手間がかかる。残業が多くなり、スタッフの心身に大きな負荷がかかってしまう。これは組織にとって不利益です。

 利用者様と触れ合える時間が増え、高齢者の方の気持ちを思いやる目線をもって健康的に仕事をして欲しいという思いがあります。ケアの絶対量が増加するなか、スタッフが健康的に働ける環境が必要です。国の基準に合った職員数で業務を行う。そういう当たり前のことができるようにすることが、この業界でのDX化する上でのひとつの在り方だと思います。

 (取材日:2024年10月17日)