「治療用食品・介護用食品」─取材レポート/その4 新しい食文化を提案する食品総合商社(株)アキヤマ

治療用・介護用食品 利用者インタビュー(3)

株式会社アキヤマ 業務用食材・資材・機器専門商社
北斗市東前3-41 TEL 0138-77-7491

北斗市にお住まいのAさん(31歳)は、ご主人(31歳)がⅠgA腎症で入院した際に病院給食で出された低タンパク米を主食に切り替えました。ⅠgA腎症は慢性腎炎の一種で、むくみや高血圧のほか、病状が悪化すれば人工透析や腎移植が必要となる恐ろしい病気です。
病院の栄養士さんからのお勧めもあって、低タンパク米に切り替えてから、この3月で一年。ご主人の体調もよく、尿タンパクや血圧の数値も安定していると、その効果を話してくれました。

治療用食品(低タンパク米)を使われたのは、どのような理由からですか?

4年前に主人が検査で尿にタンパクが出て、いろいろな病院で調べてもらったんですが、病名が分からなかったんです。むくみが出たり、血圧が高くなったり、体調も悪くて、2年前にⅠgA腎症と診断されました。それで昨年1月と2月に五稜郭病院に入院してしまったんです。その時に病院給食で出されたのが低タンパク米でした。病院の栄養指導の先生からも、主食は低タンパク米に代えた方がよいという指導もあって、それで昨年3月から、家庭でも低タンパク米に切り替えたんです。

ご家族みなさんが低タンパク米を召し上がっているのですか?

いいえ主人だけ三度の食事の際のお米を低タンパク米にしました。私や子供は普通のお米です。別々に炊かなくてはならないので手間はかかるんですが、それまでは主人のお昼は外食が中心だったんですが、今は低タンパク米のお弁当にしています。

低タンパク米に切り替えてみていかがですか?
またほかに利用されている治療用食品はありますか?

体調もよいようですし、数値も安定しています。低タンパク米以外にも、調味料の味噌やマヨネーズ、麺類も低タンパクのものを使っています。味噌汁は家族みんなで減塩味噌を使ったものを飲んでいるんですが、お米は主人だけが低タンパク米なので別に炊いたり、調理の面で手数がかかるのと、1日にタンパクは30g、塩は5gという制限があるので、その計算は大変ですね。

(株)アキヤマが開催している低たんぱく食の調理講習会には参加されたことはありますか?

昨年6月と今年2月に参加しました。市販のものを使ってメニューを上手に増やすこが分かり、とても勉強になりました。アキヤマさんの店も品揃えが豊富で満足しています。ただ・・・・。

何かご要望がおありのようですね。

もともと主人は良く食べる人で、今も1kgの低タンパク米を3日で食べてしまうんです。大体1カ月に10袋食べますから1万4,000円。低タンパク米とは別に私や子供たちの食べる普通のお米も買うので食費は結構な出費になります。低タンパク米だけでなく、他の治療食品も、もう少し値段が安いと、もっと買いやすいんですが。

分かりました。その件は(株)アキヤマさんやメーカーさんに頑張ってもらいましょう。

よろしくお願いします。

 

(株)アキヤマの治療用食品・介護用食品に対するこれまでの動向や今後の展望について根本琢己課長にお伺いしました。

 

akiyamarepo04_1005_09(株)アキヤマでは、3年程前から、病院や施設を中心に「ゼリー化固形食」を作るためのゲル化剤の案内に力を入れています。
従来の介護現場では、高齢者など食べ物の飲み込みが難しい方の食事は、魚や野菜などをミキサーにかけてペースト状にした「ミキサー食」が主流でした。しかし、これは食べ物の原型が残らず、見た目もあまりよくありません。
ゼリー化固形食は、ゲル化剤(固形剤)を用いることによって、ミキサー食をゼリーのような固形にします。ゼリー化固形食では、魚は魚、野菜は野菜の型に流しいれて、ゼリー状に固めることで、元の食べ物の形を意識しやすくなっています。形を残すことで、食べる方は自分が何を食べているか、目で認識することができます。
しかし、ゼリー化固形食は、調理する人が食品をミキサーでペースト状にし、そこにゲル化剤を入れて、固める必要があります。ミキサーの洗浄には手間がかかり、おかずの数が多くなるほど、複数のミキサーが必要になってきます。場合によっては調理スタッフを増員する必要性も出てきます。
このような問題を解消するために「ミキサーのいらない介護食」も生まれました。これは、ミキサー食にゲル化剤が含まれた状態で包装されている製品です。開封後は、温めて型に流し入れるだけでよく、病院や施設側で好きに味付けできます。栄養的にも、高齢者の方に必要なタンパク質、カルシウム、亜鉛などが効率よく摂取できるようになっています。

病院だけでなく、ご自宅で食事をされる方への介護食も色々な種類が増えています。例えば、舌で潰すことができるまで柔らかくした、いなり寿司やおはぎなどがあります。調理方法は湯煎するだけなので、とても簡単です。実際に食べた方は、見た目も良く、飲み込みやすいため、安心して食べられるとおっしゃっていました。
他にも、噛む力が弱くなった方のために、歯茎で潰せるくらいの硬さの佃煮や煮豆、漬物などがあります。豆類は硬いものが多いですが、特殊な製法で豆の食感を残しつつ、柔らかくしています。豆類も佃煮も、味付けはしっかりしていて、普通の方もおいしく召し上がれます。
在宅療法で、高齢者の方だけ別の食事をしないといけないご家族のために、電子レンジで温めるだけで良い冷凍食品の主菜・副菜も出始めています。これらを組み合わせることで、毎日の献立が立てやすくなるでしょう。

少し変わったものでいうと「香味刺激ゼリー」というものがあります。これは、食べること自体を忘れてしまった方、食事をとった記憶がすぐになくなってしまう方、いわゆる認知症の患者さん向けの商品です。日本人になじみのある「梅干し」と「カレー」の味がするゼリーで、実際に梅干し味は梅肉ペースト、カレー味はカレールウから作られています。患者さんに、以前に食べたことのある味を思い出してもらうことで、「食べる」ことや「食欲」を思い出してもらおうという試みです。また、これらは、酸味や辛味により、唾液の分泌を促す効果もあります。高齢者の方は、唾液があまり分泌されず、口が渇いていることがよくあります。香味刺激ゼリーは、このようなドライマウスの症状を改善するためにも有効だと考えられています。「リハビリ食」「訓練食」といった新しい意味を持つ介護食で、病院や施設を中心に案内しています。

(株)アキヤマでは、腎臓病患者さん向けに、低たんぱく食事療法の講習会を年に2回ほど予定しています。弊社で実際に取り扱っている製品を上手く活用し、毎日の献立に役立ててもらおうという試みです。食事療法を必要とするご本人やご家族の方などにご参加いただいています。

akiyamarepo04_1005_10現在、弊社では、治療用食品として和食、洋食、お菓子・デザート類、調味量など300種類ほどの商品を取り扱っています。同じカレーでも、メーカーによって味が違うので、複数のメーカーの製品を用意し、お客様が自分のお口に合うものを選べるようにしています。直接ご来店し、1品からでもお試し頂けるのは大きな利点だと思います。また、頻繁に新製品を置くようにし、長く介護食を使われる方が飽きないようにしていくつもりです。最近は、みたらし団子など和風のおやつも出始めています。
介護食は、これからますます種類が増えていくと思います。弊社は、お店に直接お客様がいらっしゃるので、お客様の声が届きやすい状況にあります。今後もお客様の「これは使いやすかった」「こういった商品が欲しい」といった声を参考にしていければと思っております。