目指すのはすべての人が地域で共に生きる社会実現 ソーシャル・インクルージョンを理念とする当事者支援事業

社会福祉法人 道南福祉ねっと
総合施設長 髙橋雄介 
一位理事 西本愛 
七飯町本町4丁目20番2号 TEL 0138-86-7118

障害当事者(以下当事者)や健常者、子どもなど誰もが地域の中で互いを認め合い、ともに生活していくという『ソーシャル・インクルージョン』を理念に当事者の地域生活保障運動を進めていた団体がありました。現在は社会福祉法人として法人化され、北斗市と七飯・森の両町で当事者支援事業を行っている道南福祉ねっと(本部:七飯町本町4丁目20番2号、成田孝四郎理事長)です。今回は同社会福祉法人の西本 愛理事長代理と髙橋雄介総合施設長に道南福祉ねっとが取り組む当事者支援事業についてお伺いしました。


「メディカルページ平成28年度版」(平成28年7月7日発行)の冊子に掲載された記事です。 

「利用者の人が悪いことをしたら、道南福祉ねっとの職員は怒ります。当事者と一緒に生活するというのは、特別なことではありません。こうした日常の関わり合いのなかでやっていけるということを地域の人たちに分かってもらえればと思っています」
理事長代理の西本愛さんは、誰もが地域の中で互いを認め合い、ともに生活していくという道南福祉ねっとが理念とする『ソーシャル・インクルージョン』は、決して特別なことではなく、極めて普通の生活から生み出されるものだということを、こう話します。
国が平成15年度に導入した支援費制度は、障害保健福祉施策の充実を図るのが目的でした。しかし、障害種別の分かりづらさやサービスの格差が地方公共団体ごとに大きいことなどから、3年後の平成18年度には障害者自立支援法が施行されます。さらに障害児は児童福祉法を根拠とする整理が行われ、難病も対象とするなどの改正を行い、平成25年4月に障害者総合支援法と改められ施行されました。
平成9年11月、道南福祉ねっとの源流となった『今、七飯町からはじめよう 福祉のまちをつくる会』が発足しましたが、当事者の地域生活を保障するための方途を求める話し合いは、さらに十年以上前から始められていました。民間の活動は、国に先駆けていたのです。

25施設で展開する道南福祉ねっとの事業

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■昨年行われたレクリエーション

平成12年4月の共働作業所『ToMoハウス』オープンを皮きりに自立した生活を営むためのグループホームなどの施設も増え、現在は七飯町と北斗市、森町に計24施設があり、157名が利用しています。事業を支える職員も90名を超えるまでになりました。
道南福祉ねっとの事業は、大きく分けて、相談・地域生活・就労の3つの支援事業と生活介護・共同生活援助の2事業と合わせて5つの事業を展開しています。

このうち相談支援事業には、1.計画2.地域3.障害児4.基本と4つの相談支援があります。
「計画相談支援は、新しく障害福祉サービスを受ける人のサービス等利用計画・障害児支援利用計画を相談支援センターが作成することです。地域相談支援は、長期入院や入所施設にずっといた方が、退院されて町中に出ていくためのサポート。出た後のアフターフォローをしていくのが地域相談支援です。
障害児相談支援は対象の人が18歳未満で、児童福祉法の絡みで障害児相談支援となります。また、基本相談支援というのは、心の悩みから年金の申請、通院の相談、DVや虐待など、生きていく上での悩みを相談されたとき、制度的な手続きとか、一般的なあらゆる相談をサポートするもので、いずれも相談支援センター・エヴリディ(七飯町本町)でお受けしています」 また、地域生活支援事業は、七飯町補助事業(地域活動支援センターつばさ)と森町委託事業(同ひめかわ)で、各センターに利用者が通い、夕方まで、食事や入浴、軽作業、散策や地域見学など、障害状況に配慮した活動をします。

就労継続支援A型とB型との違い

就労支援事業について髙橋総合施設長は、「ひとつは就労移行支援。もう一つは就労継続支援のA型とB型の3種類あります。就労移行支援は、一般就労につなげていくためのサポートや今後どのようなサポートが適しているか調整するサービスです。養護学校の卒業生や新しく障害福祉サービスを受ける人は、原則、就労移行支援を登録します。就労継続支援のA型とB型の違いは、A型は雇用型で最低賃金や利用者と雇用契約を結んで、作業所や委託先の場所で作業するサポートです。
B型は雇用契約ではなく利用契約で、昔でいう作業所です。みんなで作業して、そこで得た収入を分配して、うちでは工賃といういい方をしていますが、得た収益をみんなで分け合う形です」と話します。
道南福祉ねっとの施設では、ToMoハウスとWORKハウスが就労支援B型の施設で、NEWハウスは、就労移行支援と就労継続支援B型を複合した多機能支援センターです。
「B型の利点は、その人のペースで継続していけるということです。利用者の中には、一般就労をしていて、気持ちを崩してしまったという人もいます。環境を考えれば、B型というのは一番のサービスなのかなとも思います」(髙橋総合施設長)。

地域生活の拠点としてのグループホーム

生活介護事業は、障害福祉サービスの受給証で障害の重度が原則3以上の当事者(49歳以上は2でも)が、日中通って夕方帰る通所の施設(生活介護センターえーる)。
共同生活援助事業は、居住系サービスを行うグループホーム。共同生活援助と共同生活介護の2つのサービスが一元化され共同生活援助になりました。元々重度の人のサポートも含めた体制を取っていた道南福祉ねっとは、介護サービス包括型として登録、軽度から重度までの当事者が利用できます。
「グループホームには自立準備ホームを併設しています。これは法務省の緊急的住居確保・自立支援対策に基づいたものです。刑務所を出た方が、受け入れ先がないために生活保護が受けられないという時に決められた期間、入居します」と、西本理事長代理は、当事者だけでなく、出所者の支援事業にも携わっていることを話し、「地域の中には福祉や障害の認定を受けずに生活して、苦しんでいる人がたくさんいます。自立準備ホームに緊急的に受け入れ障害認定を受ける。そこからサポートが始まるというケースが多いんです」と自立準備ホームの現状について説明しています。
「普通にみえるけれども、実はすごく苦しんでいる。それが周りの人には分からないので、軋轢ができて生きにくくなってしまう。一人一人が隣りの人に関心をもてば、すべての人が安心して生活していけると思います」と西本理事長代理は、道南福祉ねっとが理念とする『ソーシャル・インクルージョン』の必要性を話しています。


社会福祉法人 道南福祉ねっと
七飯町本町4丁目20番2号 TEL 0138-86-7118