家族のための財産管理『家族信託』①

“想い”に即した資産継承の一手法

一般社団法人 函館家族信託支援協会
常務理事 佐々木 光一
函館市昭和2丁目31番1号 税理士法人西谷会計事務所内 TEL 080-6072-4009

家族が受託者の役割を担い、専門家がバックアップして家族間で信託する『民事信託』がある。家族間の信託ということで、通称『家族信託』と呼ばれるものだ。この普及を目的に一般社団法人家族信託普及協会が3年前に設立され注目を集めるなかで、道南地区でも、一般社団法人函館家族信託支援協会(西谷裕幸理事長)が発足した。同協会常務理事でコーディネイターの資格を有する佐々木光一氏(㈱エスアイエス北海道代表)に『家族信託』について聞いた。


(メディカルページ函館・道南版 2017年夏号に掲載された記事です)内容は掲載時のまま表記しています。

■佐々木常務理事

平成27年の相続税及び贈与税の税制改正により、基礎控除額と法定相続人1人あたりの控除額が減少した。節税や不動産活用などの相続対策が注目される一方で、相続が身内の“争族”となってしまうケースが増加した。親が認知症や事故などで意識判断できない状態になると、相続問題はさらに大きくなる。親が元気なうちに子どもや孫などが、その財産をしっかり把握しておくことが重要となるわけだが、その手法として注目されるのが『家族信託』だ。

認知症のリスク対応にも

「老後の財産管理、承継するための手法のひとつです」と話すのは、函館家族信託支援協会常務理事の佐々木光一氏。
最近特に問題になっているのが認知症などの病気や事故により、資産を持っている人が意識判断できなくなった時に財産管理をどうするかということだ。
たとえば母親が認知症になり、施設で世話をしてもらおうと考え、母親名義の定期預金を解約して入居費用に充てようとしても、実の子供でも定期預金の解約はできないこともある。あるいは母親が所有している不動産を売却して、費用に充てようとしても、母親本人が認知症で意識判断がなければ売却はできないこともある。結果として、子供が自分のお金を入居費用に充てるケースもある。
「認知症など意思能力に衰えが認められる場合には成年後見制度がありますが、家庭裁判所への申立手続きを行う手間や時間、費用を要します。また、すでに認知症となった本人は後見人を選ぶこともできませんし、親族が希望する者が必ず後見人に選ばれるとも限りません。さらに、後見人や後見監督人への報酬が本人の財産から定期的に支出されることになります」という佐々木氏は、「もちろん成年後見制度を選ばれてもいいし、生前贈与や遺言で対応するものいい、あるいは何もしないという判断も当然あります。ただ、財産管理の手法のひとつとして『家族信託』があることだけはぜひ知っておいて欲しい」と話す。

『家族信託』の仕組み

■『家族信託』の一例

では、『家族信託』とは、どのような仕組みなのか。「ごく簡単にいえば、親が自分の財産を管理して欲しいと子供に頼めるという制度です。親子の間で信託契約を結びますが、一般的には公正証書で契約します」(佐々木氏)
別図のような父親が息子と信託契約する『家族信託』を例にしてみる。この場合、父親は預ける人(委託者)で、その財産管理を預けられる息子が受託者となり、この二人の間に信託契約がなされる。現金や土地・不動産等の信託財産は受託者である息子が管理・処分できる。処分等により得られた利益の受益者は父親でもいいし、あるいは他の家族を指定する事もできる。
弁護士や司法書士などの専門家を信託監督人とすることも可能で、この場合、受託者は信託監督人への報告が必要となる。信託監督人は受託者を監督するほか、受託者の管理・処分についての同意、あるいは受託者を解任することもできる。しかし、信託監督人は必ず必要というものではない。
「『家族信託』の契約を組む場合は相続人に告知し、了解を取り付けます。さまざまなご要望がありますから、委託する方に判断能力がなくなった時ではもう遅いのです」と佐々木氏は話す。委託者の要望や相続人あるいは受託者の考えなど、家族の想いを聞きだし、それぞれの家庭にふさわしい『家族信託』を設計するのが、佐々木氏のようなコーディネイターの役割だ。
「委託する人がどう考えているのか、息子さん娘さんは、どう思っているのか。それに対して、ご兄弟はどういう想いなのかをまずヒヤリングします。デリケートなことですから段階を持って進めていきます」と佐々木氏は、コーディネイトの進め方について説明する。さらに、弁護士や税理士、司法書士などの専門家による意見も反映させる。

法定相続に縛られない資産継承

遺言の場合、本人死亡後の財産の継承者(1次相続)の指定に止まるが、『家族信託』では「継承者が死亡した場合は、誰それ」というように、2次相続以降の継承者も委託者が指定することができる。
また、管理・処分の権限を受託者に集約しているので、共有者全員の同意と協力が必要な共有不動産の換価処分問題の解決にも役立つ。元気なうちは本人の指示による財産管理を行い、本人に判断能力がなくなった時は、本人の意向に沿った財産管理が行えるという事から、事業継承の手法としても有効だ。
「委託する人の想いをどうやって承継していくかというのは、相続も事業継承も一緒です。契約というと固くなりますが、要するに伝えておくということ。『家族信託』をきっかけに話し合い、整理しておくことが重要なのです」
佐々木氏は、『家族信託』でもっとも大切な点をこのように話している。
なお、『家族信託』についての相談や契約の料金等の問合せは、(一社)函館家族信託支援協会℡080-6072-4009へ。

(取材日:平成29年6月14日)


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