■「乳がんについて」


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北美原クリニック院長
乳腺センター長
 早 川 善 郎


「”乳がん検診は大切です!”とは言っても・・・」
 乳がんは女性では最もなりやすい”がん”であり、今後、15人に1人が、乳がんになると言われています。乳がんの検診は、自分自身でもある程度できる(触診など)うえに、マンモグラフィー(MMG)や超音波など、比較的容易に検査も行うことが出来ます。
 つまり、早期発見が可能な”がん”なのです。にもかかわらず、日本での検診受診率は欧米に比べ非常に少ないのが゛現状です。「症状がないのに乳房の検査は恥ずかしい」「もしも異常があったらどうしょう?!」「検診の決が来るまの時間が不安でしょうがない」「なかなか気軽に受けられる施設(場所)がない」というご意見は、よく耳にします。
 通常、病院では乳がんの検診部門と診療・治療部門は分かれていることが多いうえ、検査結果が手元に来るまでに、しばらく時間がかかることがあります。当院は女性を対象とし、医師以外のスタッフは女性だけのクリニックです。検診の結果は当日のうちにお話し、精密検査が必要な場合、その場で行うことを原則にしています。休日検診も実施しています。少しでも不安を減らし、いつでも気軽に乳房の検診・受診ができる環境つくりに努力しています。


「家族性乳がん・遺伝性乳がんについて」
 女優のアンジェリーナ・ジョリーが、乳がんになっていない健常な両側乳房を切除して乳房再建手術を行い、その後、両側卵巣の摘出手術を受け、驚かせました。これは近親者に多くの乳がんや卵巣がんの人がいたため、遺伝子検査を受けたところ、特定の遺伝子に異常がみつかり、今後、乳がんになる危険性が約80%、卵巣がんが約50%との結果を受けたものでした。
 乳がんの多くは、特に原因がなく偶然?になるものですが、家族性集積を示す、いわゆる”家族性乳がん”が、乳がん全体の約15%~20%あると言われ、その中でも遺伝子の異常(BRCA遺伝子など)によって、乳がんや卵巣がんが発症するといった”遺伝性乳がん・卵巣がん症候群”が、約5~7%あると言われています。遺伝子の異常があるか否かの検査は、保険適応がない(高額である)上にプライバシーの問題もあり、十分な遺伝子カウンセリングを受けてから、決めていただく必要があります。しかし、もし遺伝子異常があったとしても、現在の日本ではどこでも簡単に予防的手術を受けられる環境は、まだ整っていません。
 乳房は身体の表面にある臓器であり、比較的苦痛がなく、綿密な検査が可能です。自分の親や親戚に乳がんにかかった人がいる人は、家族歴のない人に比べ若いうちから定期的な乳房の検診を是非受けていただきたいと思います。


「家族性乳がんにならないようにするには」
 乳がんにならないようにするには何に注意したらいいのですか?とよく聞かれます。乳がんは女性特有のがんであり、他のがんとは少し違った特徴があります。その1つとして、女性ホルモン(エストロゲン)と非常に関係があると言われています。
 乳がんの危険因子の中で、女性ホルモンに関係のあるものとしては、①出産経験がない②早い初潮③授乳経験がない④ホルモン補充療法を受けている、などがあります。エストロゲンにさらされる期間が乳がんの発症に関係していると考えられています。
 また、その他の危険因子としては、⑤(閉経後の)肥満⑥乳がんの家族歴⑦乳がんの既往歴(反対側)⑧アルコール過剰摂取⑨良性乳腺疾患の既往などがあります。しかし、これらのほとんどは、自分の意思ではどうにもならないことばかりです。自分でコントロールできるのは、肥満の防止と過剰なアルコール摂取を控えることしかありません。
 先頃、日本人女性のデータでも肥満は閉経前後とも乳がんの危険因子となることが報告されました。特にBMI(肥満度を表す体格指標)が30以上になると危険度が倍増します。肥満や過剰なアルコールは、糖尿病や高い高脂血症、心疾患の危険因子にもなり得ます。”わかってはいるんだけど・・・”と思っている人も少なくないと思います。乳がんに絶対にならないという予防はありませんが、いくつかの危険因子がある人は1度、検査を受けてみてはどうでしょうか?

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