道南地域に暮らす住民の健やかな暮らしを支えて40年”縁の下の力持ち”的な公益施設を訪問

公益社団法人 函館市医師会 函館市医師会健診検査センター
函館市湯川町3丁目38番41号 TEL 0138-57-6571

clm_121010_001身近な個人クリニックから総合病院まで、600名を超すドクターが会員として所属する函館市医師会。同会では、地域医療支援病院として活動する函館市医師会病院をはじめ、夜間急病センターの運営や、看護専門学校による人材育成など、多彩な事業で地域の保健・医療・福祉に広く貢献しています。湯川町にある函館市医師会健診検査センターも、そんな同会の事業の柱の一つ。今回は、道南唯一の健診検査センターでもある同施設を訪ね、その取り組みや業務内容、今後の展望などについて話を伺いました。


「メディカルページ平成24年度改訂版」 (平成24年11月1日発行)の冊子に掲載された記事です

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■一般健診の受付と待合室 (施設2階)

函館市医師会検診検査センターとはどんな施設ですか?

函館市医師会健診検査センター(発足当時の名称は社団法人函館市医師会臨床検査センター)が設立されたのは昭和47年のこと。医師会員が共同で利用できる中央検査室として、会員への診療支援と地域住民の健康保持向上を図ることを目的に設立されました。業務内容は大きく二つに大別でき、検体検査や生体検査を行う「臨床検査部門」と、〝メタボ〟で知られる特定健康診査や日帰り人間ドッグ、住民健診など各種の健診を行う「健康診断部門」の二つの部門によって運営されています。

どんな経緯で作られたのですか?

医療機器の発達した現代とは異なり、発足当時の40年前はよほど大きな総合病院でないと検査室などない時代でした。個人の診療所や病院などでは検査をしたくてもできないというのが一般的で、また、粗悪なデータを出すような民間の検査施設などもあり、いつでも安心して検査ができる施設を求める声が会員の間で高まっていました。そうした声を受け、臨床検査の精度の向上と会員への診療支援、さらに地域住民の方が安心して健康診断を受けられるよう、健康管理の拠点としてこの施設が作られました。

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■移動検診バス
函館市医師会健診検査センターでは施設だけでなく、バスを連ねて施設外に出向いての健診も行っている。場所によっては、早朝4時に出発することも珍しくない。

業務範囲は函館市だけですか?

現在は函館市医師会健診検査センターという名称ですが、平成16年に現在の名称に変更するまでは、「南北海道保健センター」という名称でした。南北海道という名称にもあるように、函館市を含む渡島、檜山管内の道南地域全体を業務範囲とし、北斗市や七飯町など近隣市町の住民からも利用されています。

出張検診もしていると聞きましたが…

函館市医師会健診検査センターの特徴の一つに、レントゲン車などを利用した施設外での健診サービスがあります。同センターでは各種の検査機器を積んだ移動検診バスを保有しており、概ね50名以下の事業所などの企業健診や、市内外の各町会などを対象にした出張健診サービスを行っています。遠くは奥尻島までフェリーで渡り、毎年、一週間ほどかけて島内の町会を転々と廻りながら健診を行っており、総合保健センター(五稜郭町)で毎年行われている特定健診では、同センターのスタッフが検査機械を持って出向いて行っています。

もしかしたら気付かないうちにお世話になっているのでしょうか?

同センターでは昭和49年から函館市内小中学校の尿検査受託を開始していますので、40歳以下の方でしたら、多くの方がセンターでの検査を受けていることでしょう。また、尿検査に関しては近隣市町の学校からの委託も受けており、検体が日に3,000本を超えることもあります。検体はすぐに検査しなければなりませんので、「正確・迅速」のモットーのもと、信頼性の高い検査を実施しています。こうした長年の取り組みが評価されて、平成22年には北海道社会貢献賞を受けることとなりました。

施設で受けられる検査にはどのようなものがあるのですか?

肺がんや大腸がんをはじめ、結核、肝炎ウイルス、骨粗鬆症、HIV、エキノコックス症、などの検査を受けられます。平成20年からは、一般に〝メタボ健診〟で知られる特定健康診査の受託も開始しています。

”メタボ検診”の受診率はどのくらいですか?

平成20年4月1日からスタートした〝メタボ健診〟は、40~74歳で健康保険などの医療保険に加入している人に対して義務付けられた特定健診です。全国的に見ると、受診率は大都市ほど低くなる傾向があり、都道府県によってもバラつきがありますが、北海道は全国でも受診率が低い方に入ります。中でも函館市の受診率は25%と低く、とくに40歳代~50歳代の受診率が低くなる傾向が見られます。
函館市では国民健康保険の加入者は無料で健診を受けることができ、大腸がんや肺がんの検診も同時に受けることができます。基本項目以外にも検査対象の項目を少しでも多くしようと、有料の検診に関しては助成制度が設けられています。

各種の検診で得たデータの行方は?

函館市医師会健診検査センターは、検診で得たデータを解析する一方、データを集める基地のような役目も担っています。各医療機関から届く検診データをデータベースとして集約統括し、蓄積されたデータは健康診断事業報告書として発刊したり、ホームページなどで公開しています。今後は、蓄積されたデータをどう生かすかが課題として挙げられますが、必要に応じて解析を変えてみたり、データの的を絞って解析を深めていくなど、蓄積されたデータの活用方が検討されています。

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■検査室と検査機器
「検査」としての用途と、「健診」としての用途に応える、道南地域住民の健康管理の拠点的施設。道南地域唯一の公益施設として、地域の医療・保健に積極的に取り組んでいる。自動分析室では、肝機能や脂質など特定健康診査に関わる約40種の解析が行われている。

 

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函館市医師会の関連施設の中では“目立たぬ存在”的な施設でしたが、各種検査のデータを集約して診療を支援するなど、道南一帯の住民の健康管理の拠点として機能する重要な施設であることが取材を通じて分かりました

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